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contagion、コンテイジョン、スティーブン・ソダ―バーグ

予知夢は9年後に正夢となって人類に襲いかかってきた!「コンテイジョン」

contagion、コンテイジョン

大震災の年に鳴らされた人類への警鐘

コウモリ由来のコロナウィルスが引き起こした世界規模のパンデミックによる人類への厄災についての映画『コンテイジョン』は2011年9月全米公開、日本国内公開は11月。

当時は東日本大震災の年でもあり、多くの被災者を出した大地震と原発の放射能漏洩のことで頭の中が一杯の日々。正直、新たなディザスター映画の登場という認識くらいでしかなかった。

触る程度の接触や目に見えない飛沫では感染したのかを気づくことはまず不可能

「今のところ、手と口と鼻がある者は全員ね」

感染症の脅威を表す言葉として、今ほどこのセリフが実感できる時はなかったのではないだろうか。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界中に蔓延しその脅威に日夜さらされている今、上記のセリフは誰でも感染する可能性があることを示す言葉として胸に響く。

冒頭のシーンでは静かに、淡々と人の手やドアノブ、書類ファイルなど触れた物がクローズアップされる。そして、その触れた物の行き先。
目に見えないウイルスをつい探してしまうシーンだ。

最悪の場合、死に至るウイルスはどこに潜んでいるかわからず、誰もがどこで感染するかわからない。そして一度感染すると、感染‐死‐の恐怖とは別の厄介ごとも発生する。感染経路の特定だ。

感染確認前の行動は詳細に、徹底的に洗い出され、白日の元に晒される。
それがどんなに個人的な行動であっても、世間や、果ては家族にさえも隠したいような事柄であっても。そのことが、感染した本人や周囲の人々、家族や身近な人々をさらなる不幸へと導く可能性もあるのだ。

感染の危険を最小限に食い止めようと奔走する医療関係者、製薬会社の陰謀論を唱える記者、金のニオイを嗅ぎ付けてすり寄るヘッジファンド社員。

ストーリーが進むにつれ、それぞれの信念に沿った行動が絡み合い、ウイルスに対する効果的な対処方法がないまま世界は感染の恐怖に飲み込まれてゆく。

その中で描かれるのは、個人としての善意は必ずしも世間にとってプラスばかりではないということ、人を想う気持ちがさらなるパニックの引き金になりかねないということ。

「俺にも大事な家族はいますよ。誰にだって」

誰にも大事な人がいる。家族や友人、恋人、そして自分自身。
追いつめられた時ほど、社会的な地位や立場など関係なく人は自分にとって最も大切なものだけを守ろうとする。

誰もがわかっていることだけれど、それをあらためて胸の奥に突き刺す力がこの映画にはある。

リアリティをもって詳細に描かれる感染病の恐怖やパニック、また生まれながらにしてこの強毒ウィルスへの免疫を持つ者の存在も示される。様々な人間模様の中、炙り出される人の脆さ、そして強さ。

単なるディザスター映画ではない、世界中が死の恐怖に直面するという極限状態の下、人間の愚かさ、逞しさを描き出した作品となっています。

ソダ―バーグ作品群の中では珍しく世界的な大災害を描いた異色の社会派作品

監督は長編映画デビュー作『セックスと嘘とビデオテープ』でカンヌ国際映画祭パルム・ドール賞を史上最年少(26才)で受賞という快挙を成し遂げ、2000年に『トラフィック』でアカデミー監督賞受賞に輝いたスティーブン・ソダーバーグ。

その後も60年代の名画をリブートしてヒットさせた『オーシャンズ11』に端を発した『オーシャンズ』シリーズでハリウッド映画界での不動の地位を築きます。

一度は、画家になりたいと監督引退宣言をしたソダ―バーグでしたが、ちょうど本作『コンテイジョン』の公開と時期と同じくして引退宣言を撤回し、以降、精力的に映画作りを続けています。

世界中の大都市でロケが行われた異色の社会派作品『コンテイジョン』を監督することで再び映画作りに突き動かされる大きな心境の変化があったのかもしれません。

すでに本作をご覧の方、そしてまだ観たことがない方、世界的な大災害コロナ禍にある今だからこそ、映画の力が気づきを与えてくれる、そんな一本をあらためて観てみませんか?


コンテイジョン(2011年・アメリカ・106分)
監督: スティーブン・ソダーバーグ  
出演: マット・デイモン、ジュード・ロウ、ローレンス・フィッシュバーン、
   マリオン・コティヤール、ケイト・ウィンスレット、
   ジェニファー・イーリー、エリオット・グールド
© 2011 Warner Bros. Entertainment, Inc.

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