それでも、人生は続いていく『ハリーとトント』

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少々偏屈さを感じさせるがどこか飄々とした雰囲気のハリーは、意外と人好きのする老紳士でいつも愛猫のトントを連れている。
馴染みの食料品店での買い物にも、公園での友人とのおしゃべりにも、赤いリードをつけた相棒トントは同行する。

元教師のハリーは詩や往年の名曲、哲学者の名言などをつぶやいては誰の言葉かトントに当てさせる遊びをしているが、それをトントが本当に言い当てているかのように見えるのが微笑ましい。

「相棒」トントはハリーの友人や家族との会話も常に傍らで聞いていて、最愛の妻を亡くした彼の一番の理解者でもあるのだ。

だから亡き妻との思い出の詰まったアパートメントが取り壊しとなり、否が応でも新天地を求めて旅立つことになったハリーに寄り添うのはもちろんトントだ。
老いた体で彷徨うハリーの旅路をユーモラスに彩るのはトントの愛嬌とやんちゃっぷり、そして賢さ。
そしてハリー自身の真面目だが飄々としたキャラクターと、諦念に達しながらも人生を楽しむことを忘れず、それでいて周囲に自分を押し付けることなく生きる姿はハッとさせられるものがある。

友人や家族との別れ、それぞれ形は違うけれど愛情を交えたやり取り。

旅先で出逢う人達とも、ハリーは臆することなくマイペースに交流し、新たな関係を築いていく。

老紳士と猫の旅路を描いた本作全編に漂う無常観、諦念観。
悲哀を感じさせつつも、暗くなりすぎずじんわりと心に沁みるロードムービー  。

きっと10年後、20年後に観た時には今とはまた違ったことを感じるのだろう。

道中でハリーがトントに語りかける言葉がとても印象的だった。
「(若い頃は)もっと時間やお金があればと思ってた。本当は十分だったんだ」

いつか私もハリーと同年代になった時に 
「本当は十分だったんだ」
そう言えるように人生を生きていきたいと思う。


Awards:

  • 米・アカデミー賞・主演男優賞受賞(アート・カーニー)
  • 米・ゴールデングローブ賞・コメディ/ミュージカル部門主演男優賞(アート・カーニー)

『ハリーとトント』(1974年・アメリカ・115分)
監督:ポール・マザースキー
出演:アート・カーニー、エレン・バースティン、
   ジェラルディン・フィッツジェラルド、
   ラリー・ハグマン、チーフ・ダン・ジョージ


20世紀スタジオ・公式サイト
http://www.foxjapan.com/harry-and-tonto


『ハリーとトント』は、U-NEXTでご覧になれます。

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