全てにおいて、確信犯。カリスマストリート・アーティスト、バンクシー
2020年5月7日、バンクシーの新作がイギリス南部のサウサンプトン総合病院に登場したというニュースが世界中を駆け巡った。
1平方メートルのキャンバスにはデニム姿の少年が国民保険サービス(NHS)の看護師をヒーローに見立てた人形で遊ぶ姿が描かれており、その傍らにはアメリカンコミックのヒーローと思しき人形が無造作にカゴに投げ捨てられている。
この絵にはバンクシーからのメッセージも添えられており「あなた方のご尽力に感謝します。白黒ではありますが、この作品で少しでも現場が明るくなることを願っています」と、感謝を伝える言葉が記されていた。
この作品は今秋まで同病院に飾られ、その後はオークションにかけられ売上金はNHSのための資金として活用される予定だという。
このバンクシーの新作については様々な意見が飛び交っており「医療従事者への敬意」か、それとも「メディアや大衆への皮肉」ではないかなど、波紋を広げている。
Who is Banksy?
1990年代からイギリスを拠点に活動する匿名のストリートグラフィティアーティスト。
作風は風刺とダークユーモアに満ちており、それを巧みなステンシル技法で表現する。
匿名で活動しているため、バンクシーの身元については世間の関心の的となっており、諸説あるがどれも確定されてはいない。
また、活動内容はストリートグラフィティアーティスト以外にも政治活動家、映画監督など多岐に渡る。
世界各地で彼の作品を扱ったとする展覧会が開催されているが、そのほとんどはバンクシー のオフィシャルHPで本人によって“フェイク”と断罪されている。
日本でも横浜で3月15日から「バンクシー展 天才か反逆者か」が開催されており盛況を博していたが、今回のCOVID-19の影響を受け3月31日から休館している。ちなみに、こちらの横浜展は主催者自らによってバンクシー の関与は否定されている。
また、映画についてはバンクシー本人が監督を務めたものや、覆面ではあるが本人が出演しているものがある。
バンクシーを知りたいなら、この2本のドキュメンタリー
イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ
ひたすらビデオを撮り続けることが趣味の古着店店主ティエリーは、親類の若者がグラフィティアートを街中で描いているところを撮影するうちにグラフィティの魅力に取り憑かれ、様々なアーティストの製作中の姿を撮影するようになる。
そうこうするうちにグラフィティアート界の超大物、バンクシーに会いたいと願うようになり、幸運にも本物のバンクシーと会うことになるのだが・・・。
アートとは何か、本当の価値とは何か、人は何によって動くのか。
バンクシーの超辛口なスパイスが効いた真に“リアル”なドキュメンタリー。
Awards:
- アメリカ・ワシントンD.C.映画批評家協会賞 ドキュメンタリー映画賞
- アメリカ・インディペンデント・スピリット賞 ドキュメンタリー映画賞
- アメリカ・シカゴ映画批評家協会賞 ドキュメンタリー映画賞 他
イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ(2010年・イギリス・アメリカ・87分)
監督:バンクシー
出演:ティエリー・グエッタ(akaミスター・ブレインウォッシュ)、スペース・インベーダー、
シェパード・フェアリー、ミスター・アンドレ、ゼウス、バンクシー
バンクシー・ダズ・ニューヨーク
それは、バンクシーがニューヨークを支配した31日間の物語。
2013年10月1日、バンクシーは突如ニューヨークを舞台に“個展”をスタートした。毎日1作品、場所は明かされず彼のインスタグラムにその日の作品がUPされるだけ。人々はそれだけを頼りにこの魅力的な宝探しに狂奔し、あるいは苦々しく切り捨て、あるいは金儲けをしようと企む。。
崇拝者もアンチもハイエナも全ての行動を見透かしたようなバンクシーの展示は単なるグラフィティに止まらず、それに関わった(それとは知らずに)人達の行動さえも含めた“作品”であり“アート”だ。
随所にユーモアを織り交ぜつつも“皮肉屋”バンクシーの切れ味鋭い風刺をとことん味わえる1本。
バンクシー・ダズ・ニューヨーク(2014年・アメリカ・81分)
監督:クリス・モーカーベル
全てが確信犯としか思えない、バンクシーの凄みが詰まった2作品をぜひご覧ください。