不遇な生活にある日現れた奇跡
アメリカ、1960年代初頭。イライザは孤児で言語障害があり、政府の機密機関で清掃員として働いている。身寄りのない彼女は一人暮らしで、親しくしているのは隣人で画家のジャイルズと同僚のゼルダだけ。
毎日、夜になるときっちりと身支度を整えバスで職場に向かい、清掃の仕事をこなし朝になると家に帰る繰り返し。
そんな穏やかだが寂しく単調な生活を送るイライザはある日、職場に運び込まれた不思議な生き物を垣間見てしまう。その日から、彼女の日々は動き始める。
声を持たない彼女と、異形の彼の出逢い
魚と人間の姿を併せ持つ不思議な“彼”には知性があり、イライザの手話や身振り手振りを理解し、ふたりは次第に心を通わせてゆく。共通の言葉を持たないふたりは言葉を超えたふれあいでお互いを理解していくのだ。
だが、時代は冷戦真っ只中。それぞれ“彼”の特殊能力を我が物にせんとするアメリカとソ連の思惑が絡み合い、“彼”を中心に政争の渦に飲み込まれてゆく。
マイノリティの恋
ゲイであることを隠しているジャイルズ、アフリカ系アメリカ人のゼルダ。
この魅惑的な恋物語の中では、いわゆる社会的マイノリティの彼らが懸命に生きる姿も同時に描かれる。そして、ヒロインのイライザも社会的マイノリティであり、不思議な“彼”に至ってはある意味マイノリティ中のマイノリティである。
本作は王道のラブストーリーだが、そのヒロインと王子様は王道ではない。
ヒロインのイライザはいわゆる美人でもなく、とびきり若いわけでもない。
王子様である“彼”は人間ですらなく、異形のものである。
だが、彼らの恋する姿のなんと魅力的なことか。
きちんとしているが地味だったイライザが見せる女の顔、喜びに満ちた眼差し、激情を露わにした表情。
最初は不気味に見えた“彼”の美しく透き通った瞳、高貴にすら見える横顔、水中での優雅な動き。
ストーリーが進むにつれて、決して王道の美男美女ではないふたりが魅力的に見えてくる。
本作は、王道のお伽話であり、恋物語であり、同時にそれに対するとてもロマンティックなアンチテーゼなのだ。
異形のお伽話を真実にした演技とクリーチャー
この一見風変わりな恋物語を魅惑的にしたのは、何と言っても俳優陣の演技の素晴らしさ。
ヒロインを演じるサリー・ホーキンスは「ハッピー・ゴー・ラッキー」でベルリン国際映画祭 銀熊賞、ゴールデングローブ賞 主演女優賞およびニューヨーク映画批評家協会賞 主演女優賞を受賞している演技派女優。
そして脚本・製作・監督を手がけるギレルモ・デル・トロはダークファンタジー「パンズ・ラビリンス」でアカデミー撮影賞、美術賞、メイクアップ賞を受賞し、SFアクション「パシフィック・リム」ではハリウッド映画祭 視覚効果賞を受賞するなど、彼が生み出すクリーチャーの特筆すべき素晴らしさには定評がある。
Awards：
- 第90回アカデミー賞 作品賞 / 監督賞 / 作曲賞 / 美術賞
- 第75回ゴールデングローブ賞 監督賞 / 作曲賞
- 第74回ヴェネチア国際映画祭賞 金獅子賞
『シェイプ・オブ・ウォーター』（2017年・アメリカ・2時間3分）
監督：ギレルモ・デル・トロ
出演：サリー・ホーキンス、マイケル・シャノン、リチャード・ジェンキンス、ダグ・ジョーンズ、マイケル・スタールバーグ、オクタヴィア・スペンサー、デヴィッド・ヒューレット、ニック・サーシー、スチュワート・アーノット、ローレン・リー・スミス
© Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.
現在、以下のサイトで『シェイプ・オブ・ウォーター』はご覧になれます。
© Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.
シェイプ・オブ・ウォーターはこちらからご覧になれます
初回入会から30日間無料お試し！ 
