伝説的作家の半生を描く
「ライ麦畑でつかまえて（原題：The Catcher in the Rye）」1951年の刊行以来、世界累計発行部数は6,500万部以上。30カ国語に翻訳され、現在も読み継がれている20世紀を代表する青春小説。
その作者で伝説的作家のJ・D・サリンジャーの謎に満ちた半生を追うことによって、創作の原点に迫る。
恋と挫折、恩師との出逢い、兵役とそれによるPTSD（心的外傷後ストレス障害）。
ニコラス・ホルト演じるサリンジャーは、育ちの良さの上に若者らしい傲慢さと作家としての素質を感じさせる繊細さを併せ持ち、伝説の作家の横顔を窺わせる。
悩み多き若者の代弁者
サリンジャーの分身として生まれた「ライ麦畑でつかまえて」の主人公ホールデン・コールフィールドは独特の言葉づかいと優しさ繊細さ、少年らしいまっすぐな、世の中の矛盾を嫌うキャラクターで若者の絶大な指示を得続けている。
だが、出版されるまではホールデンの魅力を理解しない人々が多数を占め、サリンジャーは幾たびも苦境に立つこととなる。
その中でも彼を応援し続けるのは母親と、ケヴィン・スペイシー扮する恩師のウィット・バーネット。早くからサリンジャーの才能を見抜いていたバーネットは、衝突しつつもサリンジャーを見守り続ける。
未だ色褪せることのない魅力を放ち続ける名作は、サリンジャーの苦悩と周囲の無理解、少数の理解者のなかで生まれ、磨かれたのだ。
サリンジャー自身を色濃く投影しつつも、読者の共感を強く呼び起こす普遍性を持ち得たからこそ、名作は生まれたのだろう。
名作誕生の秘話に迫る本作の原作は、サリンジャーの死後初めて出版された伝記「サリンジャー生涯91年の真実」ケネス・スラウェンスキー著。本国アメリカでベストセラーとなり、2012年度ヒューマニティーズ・ブック賞を受賞している。
作品の地名度に反して謎の多かったサリンジャーの新事実を明らかにしたとして評価されている原作を元に描かれた本作は、サリンジャーファンはもちろん、「ライ麦畑でつかまえて」未読の方も楽しめる内容となっている。
伝説的作家、J・D・サリンジャーの真実に迫る物語をどうぞご覧ください。
『ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー /Rebel in the Rye』（2017年・アメリカ・109分）
監督：ダニー・ストロング
出演：ニコラス・ホルト、ケヴィン・スペイシー、ゾーイ・ドゥイッチ、ホープ・デイヴィス、サラ・ポールソン
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