アランパーカー、

R.I.P.アラン・パーカー

ロック&ポップスなど音楽の世界でイギリスから北米アメリカ大陸を目指すことをビートルズの頃から“ブリティッシュ・インヴェイジョン”(英国の侵略)と呼んだものでした。

映画界もしかりで、今や世界的に巨匠の名を欲しいままにしている『エイリアン』『ブレードランナー』のリドリー・スコット監督をはじめ、ヴァンゲリスの音楽と美しい映像で日本でも大ブームを巻き起こした『炎のランナー』のヒュー・ハドソン監督、楽曲センスのずば抜けた秀逸さと男女の恋愛の機微にこだわり続けた『フラッシュダンス』『ナイン・ハーフ』のエイドリアン・ライン監督、そして、主に音楽界への傾倒作品が多いが、あらゆるジャンルを網羅して演出してきた『ミッドナイト・エクスプレス』『フェーム』のアラン・パーカー監督らがこぞってハリウッド進出を果たした。

当時、TV広告の世界で腕を磨いた若きイギリス人監督に共通するものは、撮影、編集が凝っていて、音楽の使い方が非常にスタイリッシュ。

その中の一人、アラン・パーカー監督が2020年7月31日に亡くなった。享年76歳。亡くなるのはまだ早すぎる印象だが、長年に渡り闘病生活を送っていたそうだ。

コマンダーの大英帝国勲章、ナイトの爵位を授かっている。英国のディレクターズ・ギルドの設立に関わり、ブリティッシュ・フィルム・カウンシルの会長、英国映画協会の会長も歴任。

これほどイギリスの映画界に尽くしてきた映画人だったが、17年前、ケイト・ウィンスレット、ケビン・スペイシー主演のサスペンス映画『ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』(2003年)を最後に早々と60歳で劇場用商業映画作品を監督することをやめ、最晩年は絵画を描いて充実した時を過ごしていたようだ。

コピーライター業からキャリアをスタートしたアラン・パーカーは、日本でも古くからよく親しまれた作品『小さな恋のメロディ』の脚本で映画界に飛び込んだ。

その後、ジョディ・フォスターの情婦タルーラ役が印象深い『ダウンタウン物語』(と同年に公開された『タクシードライバー』のアイリス役の2本で英国アカデミー賞助演女優賞をジョディ・フォスターが受賞)で監督デビューを果たし、その後、様々なジャンルの名作を作ってきた。

アラン・パーカーといえば、『ピンクフロイド・ザ・ウォール』とマドンナがエバ・ペロンを演じたミュージカルの映画版『エビータ』の2作品で音楽に造詣が深い映画監督という決定的なイメージがついた。

『エビータ』でマドンナを演出中のアラン・パーカー

アカデミー賞監督賞には、麻薬密輸の罪でトルコの刑務所に4年間投獄され、苦労の末、刑期が終わる頃に更に30年も延ばされたために脱獄する話『ミッドナイト・エクスプレス』(1978年)と公民権活動家殺害事件を元にした社会派作品『ミシシッピー・バーニング』(1988年)の2本でノミネートされたが、監督賞受賞に至ることはなかった。

『ミシシッピー・バーニング』撮影時のアラン・パーカー

追悼の気持ちも込めて、現代のイギリス人映画監督の潮流の一つを作り上げたクリエイターであったアラン・パーカー監督作品をあらためて観てみるよい機会ではないでしょうか。

以下、その独創的なスタイリッシュさで自分の映画史に衝撃を与え続けてくれたマイ・ベスト3・シネマズ・オブ・アラン・パーカーを挙げておきます。

1:『エンゼル・ハート』(1987年)- スリラー/ホラー
出演:ミッキー・ローク、ロバート・デ・ニーロ

『エンゼル・ハート』でミッキー・ロークを演出中のアラン・パーカー
『エンゼル・ハート』オリジナル4K版 予告編

2:『バーディ』(1984年)- ヒューマン・ドラマ
   出演:ニコラス・ケイジ、マシュー・モディ―ン

『バーディ』予告編

3:『ミッドナイト・エクスプレス』(1978年)‐サスペンス/ドラマ
   出演:ブラッド・デイビス、ランディ・クエイド、ジョン・ハート
   アカデミー賞脚色賞受賞:オリバー・ストーン
   アカデミー賞作曲賞受賞:ジョルジオ・モロダー

『ミッドナイト・エクスプレス』撮影時のアラン・パーカー(画面右)
『ミッドナイト・エクプレス』予告編

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