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無聾(むせい)、東京フィルメックス、台湾、コー・チェンニエン、トゥ-チュアン・リュ、バフィ・チェン、クゥアン・ティン・リュー

センセーショナルな題材を完全映画化!台湾映画『無聾(むせい)』上映後、監督とのリモートQ&A全文掲載


『無聾(むせい)』(2020年・台湾・1時間44分)
監督:
コー・チェンニエン
出演:
トゥ-チュアン・リュ、バフィ・チェン、クゥアン・ティン・リュー、クェイ-メイ・ヤン、タイ・ボー

ストーリー
聾唖学校へ転校してきた少年が目撃した心を寄せ始めていた少女への虐待に端を発し、学校に蔓延る問題の闇の深さを少年の目を通して描いてゆく。


日本の皆さん、こんばんは。監督のコー・チェンニエンです。
今日は映画を通してみなさんと交流することができてとても嬉しく思います。
みなさんの感想を聞いたりこの映画を好きになっていただけたらと思います。

『無聾(むせい)』上映後リモートQ&A:市山フィルメックス・ディレクター(画面左)/ コー・チェンニエン監督(画面右)

市山フィルメックス・ディレクター
最初に僕の方からひとつ質問をしまして、その後、場内からの質問を紹介したいと思います。この作品は実際に台湾で起こった事件に基づいて作られていると聞きましたが、何故この事件を映画化しようと思われたのか、そのきっかけのところをお聞きしたいと思います。

コー・チェンニエン監督
私は以前、短編映画を撮っていたんですけれども、その短編映画のテーマは常に権利の不平等について扱っていました。そして数年前、台湾で聾唖者学校における性暴力の事件が起きたんですね。
そしてその事件が起きた時に台湾の人たちはよく韓国映画の『トガニ』の台湾版ですとか、この世の地獄だとか表現していました。
ただ私にとってはその事件が何故起きたのか、ということにとても興味を持っていました。
起きた後も被害者は学校に残っていますし、加害者と一緒に生活をしているということをとても疑問に思っていました。
なのでこの事件の背後の問題ですとか、その問題に対して何かアプローチできる可能性はないかと考えていました。
それが映画を作るきっかけです。

市山フィルメックス・ディレクター
ちょうどそれに続く質問なんですが、実際の事件を扱うということで難しい点があったと思います。この映画を作るにあたって特に気をつけた点とか力を入れた点があればお話しください。

コー・チェンニエン監督
やはり真実の事件が背景になっているので、いかに加害者もしくは被害者の子どものプライバシーを保護するかということについてとても注意しました。
子どもたちはやはり無垢な子どももいますし、とてもそこは注意を払うべきだと思いました。
なので私はそのリサーチの最中もしくは撮影の最中、加害者および被害者の誰とも会いませんでした。
で、この事件に関する色々なストーリーですとか事件の記事をたくさん読みました。
それに基づいて脚本を作っていきました。なので、わざと裏で操作をしていないという風にすることに関してもとても気をつけました。
この映画に関していいますと見た目は聾唖学校で起きている話なんですけども、私が思うには人がいるところであればどこでもこういった事件は起こりうるのではないかと思います。
この映画を観て皆さんに思考していただきたいですし、ただただ批判するということはしてほしくないです。

市山フィルメックス・ディレクター
はい、ありがとうございます。それであのかなり多くの方から同じ質問がきていまして、子どもたちのキャスティングが素晴らしいという意見が来ております。
そのキャスティングはどのようにされたのか、また出ている子役の方達は聾唖者なのか聴者なのかというような質問が出ておりますがいかがでしょうか。

『無聾(むせい)』より

コー・チェンニエン監督
メインの役者に関しては聴者、耳が聞こえている皆さんです。であの、あまり演技経験がない新人を選びました。というのは私はその有名な役者に演じてもらうというよりかは観客の皆さんがよく知らない人に演じてもらったほうが、実際の事件を背景にしているので感情移入がしやすいかなと思いました。
またその役者さんたちには演技のレッスンを長い時間かけました。だいたい3ヶ月ぐらいレッスンの時間をつけました。その期間の間に役者としての気持ちの作り方だったり、役にどう向き合うかということも学んでもらいました。
その長い期間の間スタッフと私と役者の間で信頼関係を築きました。
やはり監督と役者の間に信頼関係であったり頼りあうという関係や感情はとても必要だと思います。
で、あと場合によってはエキストラで出演していただく役者にも手話や演技のレッスンをつけました。

市山フィルメックス・ディレクター
はい、ありがとうございました。
で、また別の質問でペドロ・アルモドバル監督の『バッド・エデュケーション』を想像した方がいらっしゃいまして、この作品は参考にされましたかという質問が出ております。

コー・チェンニエン監督
この映画はその真実の事件をもとに作っているので、たくさんの事件の資料ですとか、ストーリーをリサーチしてみました。
なので元々そのストーリー性が強い事件をもとに映画を作ったんですね。
私は元々青春をテーマにしていたり青春に加えて少し残酷な青春ですとか人間経験を描く作品が好きです。
なので今質問に上がった『バッド・エデュケーション』もとても好きな監督の作品のひとつであります。
そして、私の好きな作品に関していいますとヒューマンドラマが好きですし、深いところでベタなものよりは人間の心の奥底を描いていたり白と黒とつけられないグレーゾーンを描いていたりあぶり出したりするのが好きです。

市山フィルメックス・ディレクター
はい、ありがとうございます。
次、またキャスティングの質問なんですが、韓国の俳優のキム・ヒョンビンさん。これ、中国語でどう読むのかわからないんですが、起用した経緯について伺いたいです。という質問が出ています。

『無聾(むせい)』より

コー・チェンニエン監督
元々、キム・ヒョンビンさんに当て書きとかをしたわけではないんですね。
私が脚本を書いている時から、ユングァンという役はかなり難しいだろうと思っていました。
でも本当に台湾でたくさんの役者のオーディションをしましたが、やはり役に難度があるので20歳以上の役者が来ることが多かったんです。
ですが、20歳以上の人がユングァンを演じてるとなると他の役者と見た目の年齢が合わないと思いました。
それで、まあそしたらその聾唖者なのでセリフが必要ないということなのでキャストの幅をもっと広げてアジア圏、アジアの顔であればいいということに考えを変えました。
私は元々韓国のドラマや日本のドラマが好きなので役者を色々みていたところ、ちょうどそのキム・ヒョンビンくんがいいんじゃないかということになりました。
で、韓国の知り合いの制作会社に問い合わせを依頼したところ、彼のスケジュールも空いたので検討してもらって受けてもらえることになりました。
最初はユングァンの役は手話がそんなに多くないですし、中国語のセリフも必要ないので簡単というかいけるんじゃないかと思っていたんですけど、実際に現場に入ってみると思っていたよりもかなり難しいということがわかりました。
そもそも、通訳をつけて中国語と韓国語で日常の通訳ですとか撮影中の通訳をしてもらう上に、手話でも中国語と韓国語が必要なんですね。
なので通常の通訳の仕事も倍ぐらい増えました。
でも、彼と一緒に仕事をしたことはとても宝物のような経験だと思います。
そして彼にとってもかなりいい経験になったのではないかと思います。
彼が韓国から言葉が通じない台湾に来たということは、まるでその聴者がいきなり耳を塞がれて、聾唖者の世界に投げ入れられるというような体験でもあると思うので、これも撮影中は思いがけずいい化学反応になったと思います。

市山フィルメックス・ディレクター
はい、次の質問に移ります。
制作費が結構難しいのではないかという気がするのですが、制作費を集めるのに苦労されたということはあるでしょうか?
今回の題材に関してはスポンサーはどのような反応だったでしょうか。

コー・チェンニエン監督
実はこの映画は元々、台湾の公共放送が制作をするという作品だったんですね。
であの、社会的な事件をテーマにしているので、とても支持してもらいました。
一番最初に関していいますと映画を作るという気持ちというかそういう規模ではなかったんですね。
台本を書いていったり企画を進めていく段階で、いろんな方に応援していただいて支援をしていただいて、この作品は映画にして広げたほうがいいよというアドバイスなどをいただきました。
なので、そこから、じゃ元々はテレビ映画というか公共テレビの企画だったんけれども商業映画に規模を拡大しようという風に変わっていきました。
台湾では実際の事件を映画にした作品というのは少ないんですね。
なので、スポンサーの皆さんからはとても意義があることだといって応援してもらいました。
私が思うにもっと台湾の実際に起きた事件を映画にして観てもらうことは大事だと思っています。
この映画の制作費というか規模に関しては中位のバジェットの作品で、商業エンターテイメント映画の規模ではないという位のものだと思っています。

市山フィルメックス・ディレクター
時間が迫って来ましたので最後の質問になります。
この映画のラストシーンは最初からこの形になっていたのでしょうか。それとも、いくつか別の形を考えてからこの形になったのでしょうか?という質問が来ております。

コー・チェンニエン監督
実はみなさんがご覧になったラストというのは元々台本に書いてあった最初のラストではないんですね。
元々最初のラストで一旦映画を撮り終わって編集をしていたんですけれども編集中にもっといいラストを思いついたんですね。
なので、みなさんに観て頂いている最後のシーンというのは撮影がクランクアップして半年後にまたみんなを集めて撮り直したものです。
今のラストにしている方が私の元々の表現したいことがよく現されていると思っています。
事件は終わったようで終わっていない、実はまだ続いているということが最後のラストで表現されています。
またその太陽の光の下で昼間の間にも暴力はまだまだ続いている。暴力の連鎖は終わらないということも表現できていて、観客の皆さんに考える余地を与えていると思っています。

市山フィルメックス・ディレクター
たくさん質問が来ているんですけれども、時間がすぎてしまいましたのでこれで終了させていただきますが、この作品は台湾の金馬賞、新人監督賞や新人俳優賞とかもノミネートされていますので、何か必ず受賞すると思いますが、受賞されることをお祈りしております。
最後にコー・チェンニエン監督に皆さん拍手をお送りください。


第21回東京フィルメックスにて
2020年10月30日及び11月2日上映‼

第21回東京フィルメックス TOKYO FILMeX 2020

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