今年よかった映画3選、2020年日本国内公開作品、WAVES / ウェイブス、トレイ・エドワード・シュルツ、ケルビン・ハリソン・Jr.、ルーカス・ヘッジズ、テイラー・ラッセル、アレクサ・デミー、スターリング・K・ブラウン、レネー・エリス・ゴールズベリー 、ジョン・F・ドノヴァンの死と生、グザビエ・ドラン、キット・ハリントン、ナタリー・ポートマン、スーザン・サランドン、ジェイコブ・トレンブレイ、キャシー・ベイツ、タンディ・ニュートン、ベン・シュネッツァー、シカゴ7裁判、アーロン・ソーキン、エディ・レッドメイン、サシャ・バロン・コーエン、マーク・ライランス、ジョセフ・ゴードン=レビット、マイケル・キートン、フランク・ランジェラ、アレックス・シャープ、ジェレミー・ストロング、ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世

今年よかった映画3選

2020年日本国内公開作品の中で撮影に眼を見張るものがあった作品、監督の演出が素晴らしかった作品、総合的にバランスのとれた素晴らしい作品の3賞をセレクトしました。

今年はコロナ禍で春を境に多くの作品の上映が途絶え、夏以降へズレてしまいました。冬から春の始めにかけて良作があり、あとは夏以降にこの12月までダンゴ状態で上映ラッシュが続きました。

ポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』(2020年1月10日公開)で始まった2020年、若くしてデビューした当時から黒澤明のDNAを持つ作家が韓国に現れたなどと云われたほど、そのストーリーテラーとしてのあふれんばかりの才覚は注目され続けてきました。

英会話に長けたポン・ジュノ監督は早くにハリウッドへ渡り成功。
『パラサイト~』は韓国へ戻ったのちに満を持して作った作品であり、カンヌで大賞を獲った時点で作品の運命が決まりました。

アカデミー賞での華々しい受賞は今も記憶に残るもので、アジア人としては、アン・リー監督とポン・ジュノ監督だけがアカデミー賞監督賞受賞者です。ジョン・フォード監督、ウィリアム・ワイラー監督ら錚々たる映画監督の輪に入ったということが何よりも凄いこと!日本の黒澤明監督ですら、ノミネートをされたのみなのです。

来年以降も映画、テレビドラマの監督作、製作に関わる作品で興味深い作品が続くタイカ・ワイティティ監督の『ジョジョ・ラビット』(2020年1月17日公開)は、ナチス・ドイツの辛い時代を愉快さで軽々と振り切って描き、忘れがたい作品となりました。

中国のビー・ガン監督の『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』(2020年2月28日公開)は、シネフィルにはたまらない作品でアートハウス系の名作映画を観ていればいるほど眼に刺さってくるその共感覚性は、タランティーノ監督が出てきた時の興奮にちょっと似たものがありました。ビー・ガン監督がこれからどう変化してゆくのか?とても気になります。

近年、アカデミー賞にも引っかかるようになってきている気鋭の映画制作集団A24製作のエンタメとアートが融合したかのような作品群には心を奪われることが少なくなかったです。神風が吹いたスマッシュ・ヒット作『ミッドサマー』(2020年3月13日公開)、俳優でもある監督ジョナ・ヒルによる『mid90s ミッドナインティーズ 』(2020年9月4日公開)、『WAVES / ウェイブス』(2020年4月10日公開)『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』(2020年8月7日公開)といった作品が話題を呼びました。

その複雑な時間操作演出から難解と感じた観客がクリストファー・ノーラン・ワンダーランドを理解しようと劇場へ駆け付け、超長編にもかかわらずリピート観覧者が続出したスパイアクション大作『TENET テネット』(2020年9月18日公開)。

アメリカでも映画関係者が劇場再開への狼煙と捉えようとしたりとフィルムで撮影して映画館でかけることにこだわるノーラン監督ならではの現象がありました。

ネットフリックスの映画製作も本数を増やしつつあり、量だけでなくクオリティの高さはもう誰も疑う余地がありません。来年のアカデミー賞に絡んでくる作品を出してきていますし、その凄まじい勢いの生産性を止めることなど不可能だと感じます。

2021年の映画界、映画館で観る楽しみが完全復活できるのか?
はたまた更にオンライン・シネマが隆盛を極める時代へと突入していくのか?
そして、コロナ禍以降、描かれる映画のストーリーは変わって行くのか?


撮影に眼を見張るものがあった作品『WAVES / ウェイブス』

最新のガジェット・ツールや撮影テクノロジーといったことではなく、現代という時代に沿った映像への新しい考え方を提示した点で本作ほど潔く斬新なものはなかったように感じます。

本編中、多用された360度回転する撮影や自然光の明暗のギャップ、レンズ汚れ等のフレアをあえて確信犯的に取り込む撮影手法、極めつけはスクリーンサイズが超ワイドからほぼ真四角に徐々に変わっていき、再びワイドへと戻っていくなど主人公たちの気持ちをスクリーンサイズで見せていくという大胆なことをさらりとやってのけています。

トレイ・エドワード・シュルツという名前は、絶対に覚えておいた方がよい。

『WAVES / ウェイブス』(2019年・アメリカ・2時間15分)
監督:トレイ・エドワード・シュルツ
出演:ケルビン・ハリソン・Jr.、ルーカス・ヘッジズ、テイラー・ラッセル、アレクサ・デミー、スターリング・K・ブラウン、レネー・エリス・ゴールズベリー 他

映画『WAVES/ウェイブス』予告編|7月10日(金)公開

公式HP :http://phantom-film.com/waves-movie/公式Twitter :https://twitter.com/WAVES_jp7月10日(金)より TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー「一生に一度の傑作!」―Varietyトロント国際映画祭史上 最大の歓声!ハリウッド・…

『WAVES / ウェイブス』予告編


監督の演出力を感じた作品:『ジョン・F・ドノヴァンの死と生

グザヴィエ・ドラン作品としては、有名スターが多数出演し商業路線を色濃く感じさせる作品。

だが、いざ観るとドランの集大成的な内容となっていて、名子役・ジェイコブ・トレンブレイ演じる少年の世界をしっかり作り、これだけのスターを巧く使いこなし、ハリウッドメジャーで勝負できる演出力を見せつけてくれる。

台詞が刺さる、伝えたいことは言ってるし、表現したいことやれることは全部やっている。他愛もない退屈な説明シーンなどの演出もカットの積み上げもこなれている。ニュアンスある撮影もいつも通り素晴らしく、編集も自分でこなすからか、編集センスが巧み。

自身を主人公二人の人物に投影させるという自主映画製作的なこともいつも通りやっている。

もしかしたらジョン・F・ドノヴァンをドラン自身で演じたかったのかもしれないが、これだけの大作となると監督に集中するために叶わなかったのかもしれない。

『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』(2018年・カナダ・イギリス・2時間3分)
監督:グザヴィエ・ドラン
出演:キット・ハリントン、ナタリー・ポートマン、スーザン・サランドン、ジェイコブ・トレンブレイ、キャシー・ベイツ、タンディ・ニュートン、ベン・シュネッツァー 他

3/13(金)公開!『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』予告

公式HP:http://www.phantom-film.com/donovan/公式Twitter:https://twitter.com/jfdonovan_jp3月13日(金)新宿ピカデリーほか 全国ロードショー『Mommy/マミー』『たかが世界の終わり』グザヴィエ・ドラン監督最新作映画『ジョン・F・ドノヴ…

『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』予告編


総合的にバランスのとれた素晴らしい作品『シカゴ7裁判』

法廷ものでこんなに緊迫しながら、ラストまで観続けたのは初めてかもしれない。しかもウィットに富んだ台詞が散りばめられていて、所々でクスクスと笑える。

本作は元々、スティーブン・スピルバーグ監督がメガホンをとる予定で進められており、脚本はアーロン・ソーキンが粛々と書き続けていた。
ヒース・レジャーが出演予定だったが突然他界し、(つまりかなり前から製作の準備が進められてきていた。)

俳優組合のストライキも重なり、一時は役者のギャラを下げて有名どころで製作しない方向もあったが、スピルバーグがやむなく降板し、その頃から監督業も始めていたアーロン・ソーキンが自ら監督することになる。

結果、類まれな見事な法廷ドラマとなっている。現在のようなBLM問題ともリンクするストーリー内容となっていて、役者たちの名演のぶつかり合いを2時間10分間の間、見入ってしまった。

実在の出来事を脚本化し映画にしたら、今やアーロン・ソーキン監督の右に出る者はいないと思う。

アーロン・ソーキンが書くリアルで説得力ある台詞の力と過去の出来事を映画的に再構成するそのビジョンはなかなか誰にでもできることではない。

もし、スピルバーグが予定通りメガホンをとっていたら、もっと思わせぶりで無駄にスタイリッシュだったのではないだろうか?

『シカゴ7裁判』(2020年・アメリカ・2時間10分)
監督:アーロン・ソーキン
出演:エディ・レッドメイン、サシャ・バロン・コーエン、マーク・ライランス、ジョセフ・ゴードン=レビット、マイケル・キートン、フランク・ランジェラ、アレックス・シャープ、ジェレミー・ストロング、ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世 他

『シカゴ7裁判』予告編 – Netflix

1968年、世界が見守るなか、民主主義のために信念を賭けて戦った者たちがいた。#シカゴ7裁判 の予告編解禁!脚本・監督はアカデミー賞に輝いたアーロン・ソーキン。あらすじ:1968年の民主党全国大会。当初は平和的に実施されるはずだった抗議デモは、警察・州兵との間で激しい衝突へと発展。デモの主催者であるアビー・ホフマ…

『シカゴ7裁判』予告編

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