第78回ヴェネチア国際映画祭・コンペティション部門受賞結果
第78回を迎えたイタリア、ヴェネチアで開催された世界最古の映画祭であるヴェネチア国際映画祭。
『パラサイト』で韓国映画界で世界で最も成功した監督となったポン・ジュノを審査委員長に迎え、昨年の金獅子賞受賞作『ノマドランド』の中国人監督、クロエ・ジャオら数名の審査委員によって審査され、現地時間11日夜、コロナ禍の今、万全の管理体制のもと陽性者を一人も出さずに無事閉幕し、各部門の受賞結果が発表された。
コンペティション部門の受賞結果は以下の通り。
コンペティション部門・VENEZIA 78
金獅子賞:最優秀作品賞
『あのこと/Happening(原題)』
『あのこと』は、レバノン出身のフランス人でジャーナリストから映画監督へ転身したオードレイ・ディヴァンが描く1960年代に遡るフランス国内での避妊禁止の時代の若き女性アン(アナマリア・ヴァルトロメイ)の苦難の日々。
映画『シンプルな情熱』(2020年)の原作者、アニー・エルノーの実体験を元にしている。
監督のオードレイ・ディヴァンはフランス映画界の男女の不平等を無くすために活動する団体に所属。
今回、ジェンダーの問題を扱う作品に注目が集まったが、冷遇されたフランス人女性の時代に焦点を当てた本作が見事、金獅子を射止めた。
ポン・ジュノ監督、クロエ・ジャオ監督といった現代女性のリアルな姿を描くことに秀でた審査委員らの眼に止まったのも当然の結果だったのかもしれない。
More To Read:
『あのこと/Happening(原題)』(2021年・フランス・1時間40分)
監督:オードレイ・ディヴァン
出演:アナマリア・ヴァルトロメイ、ケイシー・モッテ・クライン、ルアナ・バイラミ 他
© 2021 RECTANGLE PRODUCTIONS – FRANCE 3 CINEMA – WILD BUNCH – SRAB FILM
銀獅子賞:審査委員大賞
『Hand of God -神の手が触れた日-』
パオロ・ソレンティーノ監督の故郷、イタリア、ナポリを舞台に少年ファビエットの愛と喪失を描いた極めてパーソナルなほろ苦い青春の日々。
パオロ・ソレンティーノにとって、サッカー界の巨人ディエゴ・マラドーナは特別な存在らしく、本作のタイトルである“神の手”は、1984年にマラドーナが対イングランド戦で決めた伝説的な名シーン、有名な”神の手“ゴールから取られている。
More To Read:
『Hand of God -神の手が触れた日-』(2021年・イタリア・2時間9分)
監督:
パオロ・ソレンティーノ
出演:
フィリッポ・スコッティ、トニ・セルヴィッロ、マーロン・ジュベア、ルイザ・ラニエリ、レナート・カルペンティエリ、マッシミリアーノ・ガッロ 他
© 2021 Netflix Studios, LLC
銀獅子賞:監督賞
ジェーン・カンピオン 『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
『ピアノ・レッスン』(1993年)の名匠ジェーン・カンピオン監督が兄弟の相克と男性至上主義や同性愛の問題も孕ませ昇華させた繊細さと骨太さが入り混じったリアルな人間ドラマ 。
フィル( ベネディクト・カンバーバッチ )とジョージ( ジェシー・プレモンス )の兄弟で営むアメリカ、モンタナの牧場を舞台に弟ジョージが兄フィルに隠れて結婚したことから兄による猛烈な弟の妻への仕打ちが始まる。
フィルは妻の連れ子であるピーター(コディ・スミット=マクフィー)を使い、弟の夫婦関係を崩壊させようとするが、徐々にフィルはピーターに心惹かれてゆく・・・。
男尊女卑の時代に同性愛を絡ませた愛憎渦巻く異色の西部の時代の物語。
監督のジェーン・カンピオンは、1999年の『ホーリー・スモーク』以来のヴェネチア映画祭とあって、金獅子賞受賞を期待されたが、監督賞に留まった。
More To Read:
『パワー・オブ・ザ・ドッグ』 (2021年・イギリス・オーストラリア・アメリカ・カナダ・ニュージーランド・2時間5分)
監督:
ジェーン・カンピオン
出演:
ベネディクト・カンバーバッチ、キルスティン・ダンスト、ジェシー・プレモンス、コディ・スミット=マクフィー、トーマシン・マッケンジー、キース・キャラダイン 他
© 2021 Netflix Studios, LLC
主演女優賞:
ペネロペ・クルス 『パラレル・マザーズ/Parallel Mothers(原題)』
看板女優ペネロペ・クルスを迎えたペドロ・アルモドバル監督最新作は、妊娠をきっかけに世代を超えた女性同士の友情を描いた感動作!
病院で出逢った妊婦のジャニス(ペネロペ・クルス)と同じく妊婦のアナ(ミレナ・スミット)の2人の女性のその後の関係性を描いてゆく。
ペネロペ・クルスにとって、初のヴェネチア国際映画祭での栄えある受賞となった。
映画の恩師でもあるペドロ・アルモドバル作品での主演女優賞受賞は感無量だったに違いない。
More To Read:
『パラレル・マザーズ/Parallel Mothers(原題)』(2021年・スペイン・2時間)
監督:
ペドロ・アルモドバル
出演:
ペネロペ・クルス、ロッシ・デ・パルマ、アイタナ・サンチェス=ギヨン、ミレナ・スミット、イスラエル・エレハルデ 他
© 2021 Sony Pictures All rights reserved
主演男優賞:
ジョン・アルシヤ 『オン・ザ・ジョブ:ザ・ミッシング8/On The Job: The Missing 8(原題)』
脚本家、山本美智子によるフィリピン発、クライム・スリラー『オン・ザ・ジョブ』(2013年)の続編。
同僚の謎の失踪を調査することになる腐敗したジャーナリスト、シソイ・セールス( ジョン・アルシヤ )のストーリーを縦軸に暗殺のため一時的に刑務所から出されたされる囚人ローマン・ルビロ( デニース・トリロ )の悲劇的な物語が交錯する。
『オン・ザ・ジョブ:ザ・ミッシング8/ON THE JOB: THE MISSING 8(原題)』(2021年・フィリピン・3時間28分)
監督:
エリック・マッティ
出演:
アンドレア・ブリランテス、デニース・トリロ、ジョン・アルシヤ、クリストファー・デ・レオン 他
脚本賞:
マギー・ギレンホール 『ザ・ロスト・ドーター/The Lost Daughter(原題)』
エレナ・フェッランテの原作小説を女優のマギー・ギレンホールが翻案し、初監督した作品。
イタリアの海辺の街で休暇を過ごしているバツイチの大学教授レダ(オリヴィア・コールマン)。
そこで知り合うニナ(ダコタ・ジョンソン)と愛娘。
交流する内にレダは自らの辛い過去を反芻し、別れた夫や子供たちへの様々な感情の入り混じった思いを募らせてゆくのだった。
『ザ・ロスト・ドーター/The Lost Daughter(原題)』 (2021年・アメリカ・ギリシャ・2時間1分)
監督:
マギー・ギレンホール
出演:
オリヴィア・コールマン、ダコタ・ジョンソン、ピーター・サースガード、ジェシー・バックレイ、ポール・メスカル、オリヴァー・ジャクソン=コーエン、エド・ハリス 他
© 2021 Netflix Studios, LLC
審査員特別賞:
『イル・ブーコ/Il buco(原題)』
1961年の8月のこと、北イタリアの洞穴の全ては探検しつくされ、イタリア、ピエモンテ州の洞穴探検の若者グループは、まだ誰も入ったことのない未開の南イタリア洞穴探検に果敢に挑む。
カラブリア州の険しい山深くにある深さ700メートルにも及ぶヨーロッパの最も深い洞穴は大自然の美しさに彩られた驚異の旅路を紡いでゆく。
『イル・ブーコ/Il buco(原題)』(2021年・フランス・イタリア・ドイツ・1時間33分)
監督:
ミケランジェロ・フランマルティーノ
出演:
パオロ・コッシ、ジャコポ・エリア、デニス・トロバン、二コラ・ランザ 他
マルチェロ・マストロヤンニ賞:新人俳優賞
フィリッポ・スコッティ 『Hand of God -神の手が触れた日-』
若き才能溢れる俳優へ贈られるマルチェロ・マストロヤン二賞は、監督パオロ・ソレンティーノの青年期の思い出をない交ぜにして描いたストーリーで審査委員大賞受賞に続き、主人公を好演したフィリッポ・スコッティが受賞した。
VOIDセレクト: ヴェネチア国際映画祭・金獅子賞に輝いた不朽の名作おすすめ
More To Read:
【更新】2023年1月9日