小石、P.S.ヴィノートラージ、Q&A全文掲載、第22回東京フィルメックス・コンペティション部門正式出品作インド映画、Pebbles

『小石』P.S.ヴィノートラージ監督とのリモートQ&A全文掲載

第22回東京フィルメックス・コンペティション部門正式出品作・インド映画『小石』上映後、P.S.ヴィノートラージ監督とヴィグネーシュ・シヴァン・プロデューサーとのリモートQ&A全文掲載。


Story:

酒浸りで気が短く暴力的な父親が。学校にいた寡黙な息子を強引に巻き込み、自分が追い払った妻を取り戻そうと、バスに乗り、妻のいる実家へと向かう。

しかし、妻が家に戻っていることを知り、父親は再び村に戻ろうとするが、息子はバスには乗らず走って逃げてしまうのだった・・・。

帰る手段を無くした親子は、灼熱の不毛地帯を村に向かって歩き始める。

気が短く暴力的な父親(カルーザダイヤーン)とその寡黙な息子(チェラパンディ)、バスに乗り損ねた二人は、灼熱の中、広大な荒野を家に向かって歩き始めるが……。


南インド、タミル・ナードゥ州マドゥライ出身の俊英P.S.ヴィノートラージの長編デビュー作。ロッテルダム国際映画祭でタイガー・アウォードを受賞。


P.S.ヴィノートラージ監督

P.S.ヴィノートラージ監督:
皆さま、貴重なお時間を使って、観に来ていただきあり感謝いたします、

コロナ禍の現在、こうして映画を観に来ていただけることは私たち映画人にとっては大きな励みになっています。

質問をお待ちしています。

神谷プログラム・ディレクター(以降、神谷PD):
早速、観客のみなさんから質問が届いておりますので、質疑応答を始めさせていただきます。

とても小さなプロットの中に大きな問題が圧縮され、人物たちのさまざまな問題が透けて見えるました。

キャラクターは現地の人物をモデル
に描いたものなのでしょうか?それとも架空の人物なのでしょうか?

『小石/Pebbles(原題)』 より

P.S.ヴィノートラージ監督:
今回のキャラクターですが、やはり実際にいる人物をベースに作り上げました。

そもそもこの作品は自分自身の経験を基にして作ったものなんです。

子供の頃から一緒に過ごしてきた方々、見てきた人たちを作品に取り込んでいます。

このタミルという地域に限定したものではあるのですが、普遍的な物語で誰もが共感できるのではないのかと思っています。

神谷PD:
キャストに関しての質問が来ています。 本作は現地で見つけた人たちなのでしょうか?
どのようにしてキャストを見つけられましたか?

P.S.ヴィノートラージ監督:
父親を演じたカルーザダイヤーンは映画初出演ですが演技経験があり、詩人であり、物書きです。劇団にも所属しています。

脚本初期の段階からカルーザダイヤーンさんに絶対出て欲しいと考えていました。

父親の怒りも表現されていて、狙い通りの素晴らしい演技でした。

大変だったのは、息子の方で、なかなか見つけることができませんした。

というのも彼は複雑な役どころだったのでなかなか合う人が見つからなかったのです。

この役を演じているチェラパンディくんは、実際の家庭がこの映画の家族よりも状況が悪い家庭だったので、この少年が置かれている境遇を直ぐに理解してくれたのが演技をスムーズにしてくれました。

一番の大きな挑戦はカメラを怖れずに役者が演技できるのか?という点だったのですが、これには時間をかけましたし、大変なところでした。

地元の人々にも出演していただき、作品にリアリティを与えれくれました。

神谷PD:
プロデューサーとして、女優のナヤンタラさんとフィルムメーカーのヴィグネシュ・シヴァンさんがクレジットされていますが、どのような経緯で作られた映画なのでしょうか?

P.S.ヴィノートラージ監督:
友人たちからの出資を受けて作り始めました。

50%ほど撮れた時により幅広い方々からの出資を取り付けるためにラフ編集の映像を持って見せて回ることにしました。

そこで映画作家のラムさんと出会い、仮の予告を見せたところ、もっと見たいということになり、ラフ編集素材を見せたところ、これは応援すべき作品だということになり、タミール映画界の人たちと繋いでいただきました。

皆さん、この作品の狙いを理解していただき、助けたいと言っていただきました。
そんな皆さんの御支援もあり、無事、完成にこぎつくことができました。

完成して、まず映画祭に出してみようと思い、劇場公開まで一年かかったとしても映画祭で作品の真価を測ってみることにしました。

そうこうしている内にコロナ禍となり、ロッテルダム映画祭でかけてもらえることとなり、結果、タイガー・アウォードを受賞しました。

国際的な映画祭でのお墨付きもいただき、この映画はタミールの方々にとっても新しいタイプの映画なんですね。

ですので、タミールを理解するという意味でもよいプロモーションとなりましたし、ご協力いただいたタミールの人々には感謝しております。

神谷PD:
カメラワークがユニークだと思います。広大な大地を工夫しながら捕らえていたと感じました。
撮影において、どのようなことを意識しましたか?

P.S.ヴィノートラージ監督:
脚本を書いている時点でこの作品の主人公は3人だと考えていました。父と息子、そして、広大な大地が3人目です。

人間は育った大地がその人に影響を与えるという持論がありますので、大地をどのように撮るのかはとても重要でした。大地が大きな役割を果たすということを最初から理解していました。

今回は2人のとても私と仲の良いカメラマンたちが参加してくれました。

彼らは監督の意図をよく理解してくれていたので、撮影は上手く行きました。

8か月ほど様々なところを毎朝10時になるとロケハンして周り、カメラマンらと共に撮影場所を決めて行きました。

また私は自然が撮影してもよいと許可を与えてくれるまでは撮影してはならぬと考えていて、ある日、自然が撮影許可を出してくれた気がしたので撮影を始めたのです。

今回、自分もカメラマンたちも工夫してよい画を撮る努力をしたのと自然もまた自由に撮影をさせてくれたということなのだと思いますし、感謝したいです。

観客には大地の干ばつの感じや灼熱の荒れ地や雨季の湿気といったイメージを感じてもらうことを意識して撮影しました。

父親もそうした大地にいることで怒りの感情も湧いてくると思うのです。

そうした大地の熱を観客に感じてもらいたいと感じていました。

父と息子の旅を観客もまた同じように旅をする、そうした感覚を感じて欲しいと思いましたし、今回の撮影では大自然が目的通りの表現をしてくれたと考えています。

神谷PD:
次は最後の質問になってしまいますが、できれば監督自身の言葉でお答えいただきたいと思います。

映画の中で子供が小石を口に含みますが、おまじないですか?

小石を集めるのは父への怒りの象徴なのでしょうか?

小石に込めたことをお話いただければと思います。

P.S.ヴィノートラージ監督:
子供にとっては、どんな問題も小石の大きさ程度のことという喩の意味もあります。

最後にいくつか小石が集まっている画があるのですが、これは彼らのこうした出来事も日常の一コマでしかないのだということを表しています。

過去にも起きたのかもしれないし、また未来にも起きうることなのだということなんです。そういう気持ちを込めて複数の小石を見せています。

こうしてどこかへ出かける時、口の中が乾かないように小石を口に含むことで唾液をだして守るという習慣があります。

小さな小石が大自然の中の大きな岩といったものに通じるものがあり、そういったメタファーのような意味も込めて小石のイメージを多用しているのです。


Pebbles – trailer | IFFR 2021

A poverty-stricken father and son wander a southern Indian landscape where anger and frustration burn hotter than the sun.Read more here: https://iffr.com/en…

『小石/Pebbles(原題)』オリジナル予告編

Awards:

  • ロッテルダム国際映画祭:タイガーアウォ―ド・P.S.ヴィノートラージ監督

『小石/Pebbles(原題)』 (2021年・インド・1時間15分)
監督:
P.S.ヴィノートラージ
出演:
チェラパンディ、カルーザダイヤーン

2021年10月30日-11月7日 第22回東京フィルメックス・コンペティション部門正式出品作


第22回東京フィルメックス TOKYO FILMeX 2021

10/30『偶然と想像』Q&A 有楽町朝日ホール 中島 歩(俳優) 濱口 竜介(監督) 神谷 直希(東京フィルメックス プログラム・ディレクター) 日本 / 2021 / 121分 監督:濱口竜介 ( HAMAGUCHI Ryusuke ) 配給:Incline LLP 配給協力:コピアポア・フィルム Japan / 2021 / 121min Director:HAMAGUCHI Ryusuke *** ご覧の動画のフルバージョンは、ONLINE FILMeXで視聴可能です。 ただしONLINE FILMeX のユーザー登録が必要です。 東京フィルメックスでは、コロナ禍の昨年、映画館でのフィジカル上映と並行して会期後にオンライン上映を行いました。 今年も、11/7(日)〜11/23(火)まで上映作品の一部を配信します。 ONLINE FILMeX https://www.online-filmex.jp/


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