第22回東京フィルメックス、見上げた空に何が見える?、アレクサンドレ・コべリゼ、時の解剖学、ジャッカワーン・ニンタムロン、偶然と想像、濱口竜介、

映画の未来を繋ぐ第22回東京フィルメックスが無事閉幕!

22回目を迎えた今年のフィルメックスは、同時期開催の東京国際映画祭が六本木開催から有楽町、日比谷、銀座エリアへと移動し、徒歩で二つの映画祭をシームレスに移動できる相互乗り入れが実現!新たな映画発見のため映画鑑賞を愉しむ人々、そして、取材する側にとってもより利便性の高い映画祭となった。

英語で受賞の喜びを伝えたTalents Tokyo Awardを受賞した木村あさぎ監督

今年開催を振り返って

二つの映画祭が同時期開催となることでの弊害は、両映画祭の全てを網羅して鑑賞するのは上映スケジュールが決められているため、かなり難しく、ただ同じエリア開催となったことですき間時間の10分間で各上映会場を移動して、東京国際とフィルメックスを綱渡りして映画を日に3本鑑賞することは可能であった。

同時期開催に異を唱えるコメントをSNSで目にしたが、結果としては、まずまずだったのではないのだろうか。

とはいえ二つの映画祭のコンペ作品全作品を期間中に鑑賞することは、ほぼ不可能である。

カンヌにとっての監督・批評家週間やベルリンにとってのフォーラム部門のようにフィルメックスが若干のサイズ・ダウンを果たせば、共存しやすくなるのかもしれない。

だたそんなことにもなればフィルメックス命の方々にはとても残念なことではある。数年間は、この状態で様子見ということなのかもしれない。

後は補完機能として、有楽町・日比谷へ出向かなくても有料のオンライン配信で観ることが叶わなかった作品を拾い上げるという方法。フィルメックスは、すでにこれには着手している。

筆者は、見逃した昨年度作品をオンライン配信でカバーした。

本年度もフィルメックス・オンライン配信で観る予定の作品が数本ある。
会期中に朝日ホールで観ていてもまた観直してみたい作品、そして、今後いつ観ることが叶うのか、見当もつかない作品は後悔しないためにもこの機会に是非、観るべきなのだ。

新型コロナウィルス関連の対応策として、フィルメックスは元々、合理的でミニマムな運営のためか、コロナ禍でも上手く対応できていたように感じた。

初めてのコロナ禍での開催であった昨年よりもIDパスによるプレス用の鑑賞予約システムと一般鑑賞券のオンライン購入もQ&Aの対応もプラットフォームそのものがより使い易いシステムに変更となり、実にスムーズであった。これはナイスだなと感じた。

対する東京国際映画祭でプレス関係者が映画を鑑賞をしようとすると人気ラーメン店に行列するが如くで依然、コロナ禍であるにも関わらず、作品によっては開場の30分前から現地で並ばねばならなかった。

このフィジカルな時間のロスが非常に惜しかった。

席は自由席なので、入場した途端、誰かが走りだすと皆、釣られて走り出して席を取る人もいて、フィルメックスはあんなにストレスフリーなのにと朝からモヤモヤした気にもなった。

東京国際映画祭のプログラム・ディレクターとなった市山尚三氏からバトンタッチし、初めてのプログラム・ディレクターとなった神谷直希氏は、大健闘されたと思う。若い頭脳を得て、少ない人数ながら懸命に仕事をされていたスタッフの方々のお力もあり、今年も新たな映画の才能との出会いや待望の新作をいち早く観ることができた第22回東京フィルメックスは、無事、閉幕を迎えることができた。

すでに来年の第23回開催が待ち遠しい。


第22回東京フィルメックス・受賞結果

『 見上げた空に何が見える?/What Do We See When We Look at the Sky? 』 より

【最優秀作品賞】
『見上げた空に何が見える?What Do We See When We Look at the Sky?(原題)』
監督:アレクサンドレ・コべリゼ

授賞理由
この、クタイシという街についての美しいポートレイトにおいて、カメラは人々や動物たち、木々や雨どいなど存在するすべてのものに平等な視線を注ぐ。一方的な暴力装置にもなりうる映画=カメラを使いながら、本作品では被写体とフェアな関係を結ぶことに成功し、イメージは映画と世界との対話へと開かれてゆく。魔術のように突拍子もないフィクションは単に嘘の世界を信じさせるためにではなく、現代において断ち切られた世界への信頼を再び回復させるために機能するだろう。『見上げた空に何が見える?』と問うこのユニークな挑戦は、映画の未来に一筋の光を見せてくれる。


この素晴らしい賞をいただきまして、本当にありがとうございました。この映画は私にとって、孤独で長い道のりでした。現在のこのような状況ですが、いつか日本へ行きたいと思います。最後に私のこの孤独な旅がこのような賞をいただいたことでハッピーエンドとなって終わったのではないかと感じています。今夜集まっていただいた皆さん、審査員の皆さん、全ての皆さんに感謝しております。

アレクサンドレ・コべリゼ監督、受賞喜びのコメント・ビデオより

『時の解剖学/Anatomy of Time(原題)』 より

【最優秀作品賞】
『時の解剖学/Anatomy of Time(原題)』
監督:ジャッカワーン・ニンタムロン

授賞理由
『時の解剖学』は、登場人物の過去と現在、さまざまな時間の層が、魅力的に挑戦的な方法で絡み合わされ、時が止まったかのようなシークエンスに突然残酷で暴力的な歴史の要素が織り合わされ、流麗な映画空間を創り出し、それが現在と過去の境界線をこえる。老人の肉体のイメージと歴史によって刻まれた痕跡を通して、私たちは具体的なたしかな手触りで時間を体験し、その精神性も感じとる。登場人物たちの動機や背景は必ずしも十分に説明されず謎のまま残される。ときには不思議な印象を与え、観客に自由に解釈する余地をあたえてくれる。わたしたちは現実と非現実が共存するところにいざなわれ、物語のかけらをつなぎ合わせてそれぞれの観点から捉え直すよう促される。アンビバレントな要素、自然、登場人物たちや状況もまたこの映画の魅力である。


オンライン・ビデオで受賞の喜びを語るジャッカワーン・ニンタムロン監督

この度は素敵な賞をいただいてありがとうございます。この受賞は俳優の方々、スタッフのみなさんの力のおかげだと思います。彼らの努力によって、このような素晴らしい上映の機会を得られたと思っています。これをきっかけにして、私の作品がより多くの人々の元へ届くことを祈っています。ありがとうございます。

ジャッカワーン・ニンタムロン監督からの受賞喜びのコメント・ビデオより

第22回東京フィルメックス コンペティション審査員:
諏訪敦彦 ( SUWA Nobuhiro / 日本 / 映画監督 )
ウルリケ・クラウトハイム ( Ulrike KRAUTHEIM / ドイツ / ゲーテ・インスティトゥート東京 文化部 コーディネーター )
オリヴィエ・デルプ ( Olivier DELPOUX / フランス / アンスティチュ・フランセ日本 映像・音楽部門統括マネージャー )
小田香 ( ODA Kaori / 日本 / 映画監督・アーティスト )


『偶然と想像/Wheel of Fortune and Fantasy(英題)』より

【観客賞】
『偶然と想像/Wheel of Fortune and Fantasy(英題)』
監督:濱口竜介

この度、東京フィルメックスで『偶然と想像』が観客賞をいただいたということで心より嬉しく思います。フィルメックスは、2008年に『パッション』という作品で初めて参加しました。それから13年が経ち、自分がこのような大きな温かい気持ちになれるような賞をいただき、とても嬉しく思っています。『偶然と想像』の出演者の中に『パッション』の出演者が3人もいることがこの受賞の喜びをさらに大きくしてくれています。改めまして素晴らしい姿をカメラ前に見せてくれたキャストたち、演技をするための環境を作ってくれたスタッフたちとプロデューサー、そして、それを日本で初めて受けとめてくれた観客の皆さまに感謝します。会場から大きな笑い声が響く度、幸せな気持ちになりました。本当にありがとうございました。

『偶然と想像』濱口竜介監督からの受賞喜びのコメント

『 見上げた空に何が見える?/What Do We See When We Look at the Sky? 』 より

【学生審査員賞】
『見上げた空に何が見える?What Do We See When We Look at the Sky?(原題)』
監督:アレクサンドレ・コべリゼ

授賞理由
カメラに映るすべてのものが、私たちに何かを語りかけてくるように感じ、圧倒されました。足元だけで映される男女の出会いや、サッカーに夢中なクタイシの人々、街で生きている犬たちなどが、愛に溢れた視点で描かれ、とても美しく感じました。私たちが何気なく生活している日常の愛おしさに気付かされました。描かれていることも、描き方も、本当にとても素敵でした。


学生審査員:
堀内友貴(HORIUCHI Yuki / 東放学園映画専門学校)、福岡佐和子(FUKUOKA Sawako / 日本大学芸術学部)、栁川碧斗(YANAGAWA Aoto / 慶應義塾大学)



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