• HOME
  • Articles
  • CINEMANAUT
  • 『見上げた空に何が見える?』アレクサンドレ・コベリゼ監督とのリモートQ&A全文掲載
見上げた空に何が見える?、アレクサンドレ・コベリゼ、リモートQ&A全文掲載、第22回東京フィルメックス・コンペティション部門最優秀作品賞&学生審査員賞ダブル受賞‼ 、ギオルギ・ボチョリシュヴィリ、アニ・カルセラゼ、オリコ・バルバカゼ、ギオルギ・アンブロラゼ、ヴァフタン・ファンチュリゼ、What Do We See When We Look at the Sky?

『見上げた空に何が見える?』アレクサンドレ・コベリゼ監督とのリモートQ&A全文掲載

第22回東京フィルメックス・コンペティション部門最優秀作品賞&学生審査員賞ダブル受賞!

ジョージア映画『見上げた空に何が見える?』上映後、アレクサンドレ・コベリゼ監督とのQ&A全文掲載。


Story:

クタイシの街の通りで偶然に出会い、一目で恋に落ちたリザとギオルギは翌日に会う約束をして、互いの名前を聞かずに別れる。

しかし翌朝、不思議な力によって2人の外見は完全に別人になっていた。彼らが得意としていた技能も知識も失われてしまう。

互いに会いたいという気持ちを抱いたまま、途方に暮れるが、なすすべもなくそれぞれの暮らしを繋げてゆくのだった。

サッカーのワールドカップがはじまり、試合に夢中になる人々、映画の撮影隊も街へやってきて、撮影を始める。

そして、クタイシの日常はいつものように流れてゆくのだった・・・。

はたして、2人は互いの本当の姿に気付き、再び出会うことはできるのか?


ジョージアの俊英アレクサンドレ・コベリゼの遊び心溢れる長編第2作。ベルリン映画祭コンペティション部門で上映された。


『見上げた空に何が見える?』より

『見上げた空に何が見える?』Q&A

神谷プログラム・ディレクター(以降、神谷PD):
では、Q&Aを始めさせていただきたいと思います。まず初めに監督から一言挨拶をしていただきたいと思います。

アレクサンドレ・コベリゼ監督(以降、コベリゼ監督):
まず、上映していただいたフィルメックスには本当に感謝しております。今、とても喜んでおります。
また本作を観るためにお越しくださった観客の皆さま、そしてQ&Aにも参加してくださったことを喜んでおります。
皆さんの質問に上手く答えられるとよいのですが。

神谷PD:
それでは質問させていただきます。
とても自由な作風で作られたと思うのですが、この企画をどのようにして実現させたのでしょうか?どういった経緯で本作が作られたのか教えていただけないでしょうか?

コベリゼ監督 :
この作品は、映画学校の卒業制作になります。ちょうどベルリンの映画学校へ通っていたのですが、そこで3本から4本の作品に対して助成金が与えられたのです。その内の1本になり、その助成金を使って撮影されました。

通常の映画作りとは、その点が違います。作る上で安心感が得られました。
そして、ジョージアのフィルム・センターでも助成金を申請して、そちらからも製作費に充当しました。

限られた予算で作る学生映画ではあったのですが、関わっていただく方々へは少額ながらギャランティをお出しすることができました。

神谷PD:
ありがとうございます。では次の質問に行きます。
サッカー、子供、犬、アイスクリームといったモチーフが映画の中で大きな役割を果たしているように見えるのですが、どういった思いで映しているのでしょうか?

コベリゼ監督 :
それぞれの演技に対して、思いというものはあるのですけど、たとえば本作中の演技はシンプルなものにしています。

あまりエモーショナルなそういった気持ちを喚起するようなドラマチックなものではない。
ですのでドラマチックな演出のためのツールなどは今回敢えて使用していません

観客にエモーショナルに感じてもらう一つの方法として、実際に映画の作り手である自分が好きなもの、自分の心が動かされるようなものを映画の中に取り入れています。

そうすることで自分の思いが伝わると思うのです。

今、挙げていただいたアイテムは大好きなものだし、サッカーも大好きなのです。

受け取りようによっては、こうした描写は嫌いな方もいるかもしれませんし、またユーモアを感じたり、関心を持っている方には受け入れられたりする対象なのでないかなと考えています。

神谷PD:
はい、ありがとうございます。それでは次の質問に参ります。
最後にカップルたちに上映する映画が映画館になっている理由は何でしょうか?というのもカフェに設置されたスクリーンの前でカップルが撮影された時、きっとスクリーンで観た時に互いの正体に気付くだろうと思いました。

コベリゼ監督 :
まず、この呪いというものをどういう風に終わらせるのか?ということを考えなければいけませんでした。

この呪いというものは、魔法=マジックのようなもので、主人公たちは、ある日、別人になってしまいます。でも最後にお互いの本当の姿に気付いて欲しかったのです。そのままで終わらせたくなかった。

では、どうしたら互いに気づくことができるのか?呪いを解くことができるのか?真剣に考えました。でも答えはあまり沢山出て来なかったんですよね。検索しても答えは見つからないし、友達に訊いても分かるわけもありません。私たちの世界で起きることはないものですから。

ということで魔法には魔法で対抗しようということになり、自分の周りにある少なくとも自分にとっては魔法の一つ、”映画”を使ってみようと考えました。

映画を作る時、その技術的な舞台裏は十分に理解していますので魔法はありません。でも映画を観て、泣かされたり、考えさせられたりと自分にそうして届く映画というものはとてもマジカルだと考えます。

ですので、自分にとっての魔法のようなもの映画を巧く使ってこの呪いを解こうと思いついたのです。

神谷PD:
はい、ありがとうございます。それでは次の質問に行きます。
舞台となるクタイシは、監督の故郷なのでしょうか?トビリシの話も少し語られていますが、クタイシとはどんな街なのでしょうか?

コベリゼ監督 :
まず自分の出身地ですが、トビリシになります。クタイシは、ジョージアで3番目に大きい都市ですが、街のサイズはそれほど大きくはありません。地理的な位置も国の真ん中あたりにあり、地理的にも政治的にも文化的にもジョージアのヘソのような要衝と云えます。旧ソ連崩壊以降、徐々にまた街の魅力を取り戻してきています。

文筆家、詩人、音楽家といった創作系の人間がこの街出身であることが多いです。90年代の音楽シーンを見ても、ヒップホップ、メタル、エレクトロニックと様々なジャンルのミュージシャンがクタイシから飛び出してきました。

個人的にも私の曽祖父がこの街でワイン作りをやっていました。1921年に共産党がやってきた時、自分らの土地は没収され、残された土地にサッカーのスタジアムを作ったそうです。

神谷PD:
はい、ありがとうございます。それでは次の質問に行きます。
主人公たちの足元を映したショットが使われていますが、そのことについて教えてください。

コベリゼ監督 :
異なる理由でそうしたカットを使用しています。
冒頭の2人が偶然ぶつかって出会う、そして恋に落ちるシーンは、あのシーンを自分が演出するのは難しいと思ったのです。実際に男女が出会って、お互いの表情を覚えていなかったりするものなのかもしれず、だったら、2人の足元だけを映すことで表現できないかと考えたのです。

あと付け加えるならば、出逢いをじっくりと互いの顔を見せるという演出よりも足元だけであとは観客に想像してもらうという表現方法にしました。

神谷PD:
ありがとうございます。次の質問に行きます。
2人の姿が変わる時に観客に眼を閉じるように指示がありましたが、2人の姿を変える邪悪な眼とは、観客の眼のことではないのかな?と思ったのですが、具体的に想定したものはあるのでしょうか?

コベリゼ監督 :
脚本を書いている時も幾度となく何なのかは変わっていったんです。形をもったものは何か違うなと思い、最終的には、人物とかそういったものでもなく視覚的なものを持たないただの名前だけの存在とすることで普遍性のあるものになったんじゃないかなと思います。

神谷PD:
ありがとうございます。 残念ながら時間が来てしまいました。
これが最後の質問となります。
撮影に関する質問です。
光や風などクタイシが自然に捉えられていたのが印象的でした。撮影で何か意識されたことはありますか?

コベリゼ監督 :
今回で2回目の作品となりますが、前回は、スマホで撮影したので、今回が初めてのカメラを使って撮影された長編作品となります。

撮影には色々と気を遣ったところがあったのですが、自分が慣れていないということもあり、テストをしたり、勉強をするということをしています。自分もカメラマンもプロデューサーも皆、クタイシ出身ではないので気を付けながら撮影を進めていきました。

絵コンテを作り撮影したのですが、日々、映画を観たりする中で刺激を受け、そこでまた絵コンテを変更し、撮影していました。

神谷PD:
はい、ありがとうございます。残念ながら時間が来てしまいましたので、ここでQ&Aを終了させていただきたいと思いますが、最後に監督から何か一言ありますか?

コベリゼ監督 :
本作は長い映画ですので、改めて皆さん、来てくださってありがとうございます。フィルム・メーカーにとって、観客の方々に映画を観ていただけることが大きな贈り物であるので、そういった意味でも皆さん、今日はありがとうございました。


『見上げた空に何が見える?/What Do We See When We Look at the Sky?(原題)』 オリジナル予告編

『見上げた空に何が見える?/What Do We See When We Look at the Sky?(原題)』(2021年・ドイツ、ジョージア・2時間30分)
監督:
アレクサンドレ・コベリゼ
出演:
ギオルギ・ボチョリシュヴィリ、アニ・カルセラゼ、オリコ・バルバカゼ、ギオルギ・アンブロラゼ、ヴァフタン・ファンチュリゼ

第22回東京フィルメックス・コンペティション部門
最優秀作品賞受賞
学生審査員賞受賞


VOID RECOMMENDS