
物理学の夢を悪夢に変えた孤独な天才科学者の悲劇『オッペンハイマー』
広島、長崎に落とされた原子爆弾を開発したことによって、「原爆の父」と呼ばれる理論物理学者ロバート・オッペンハイマーの数奇な生涯。
政治に翻弄され、国家に欺かれた天才科学者の原爆プロジェクトへ傾けた並々ならぬ情熱。
やがて、戦争を終わらせるための夢の兵器が悪夢となり、後悔に苛まされるその後の人生までを描く!
科学とは? 平和とは? 核兵器は悪であり、物理学は悪ではないのか?
鬼才クリストファー・ノーラン監督が衝撃的問いかけを放つ恐るべきヒストリック・スリラー。

Story:
アメリカ、ロス・アラモス研究所の初代所長としてマンハッタン計画のリーダーを任された理論物理学者のロバート・オッペンハイマー(キリアン・マーフィー)は、日本の広島、長崎に落とされた原子爆弾を生み出した。
以来、オッペンハイマーは「原爆の父」と呼ばれる。
裕福な家庭に生まれたが、天才が故の心身の繊細さから心のバランスを崩すようになるオッペンハイマーであったが物理学に生きがいを見つけ、研究に精進してゆく。
政治に翻弄されながらも戦争を一瞬で無意味なものにできるという夢のような原爆プロジェクトの開発に成功するが、それは日本の広島、長崎へと投下され、その結果は、夢の結実ではなく、人類史上最悪の悪夢しか生み出さなかった。
後悔の念に苛まれ、「科学者は罪を知った」と葛藤するオッペンハイマーであったが、世界の欲望はさらに加速しようとしていた。
理論物理学者エドワード・テラー(ベニー・サフディ)による水爆が開発されようとしていたのだ・・・。
国家に欺かれ、自らの愚業から失意の日々を過ごす一人の天才科学者の悲劇を辿ってゆく。
Behind The Inside:
クリストファー・ノーランにとって、2度目の第二次世界大戦に関わる作品
第二次世界大戦ドイツ占領下であった北西ヨーロッパへの連合軍の侵攻作戦を描いた映画『ダンケルク』(2017年)以来、6年の時を経て、再び第二次世界大戦の時間軸に起きた物語を描くことになったクリストファー・ノーラン監督。
今回、何故、原爆を生んだ父と呼ばれるロバート・オッペンハイマーの評伝に基づく歴史スリラーを描くことになったのか?
そのモチベーションは定かではないが、前作『TENET テネット』(2020年)の中にすでに”ロバート・オッペンハイマー”というキーワードが出てくる。
プリヤ(ディンプル・カパディア)と名もなき男(ジョン・デヴィッド・ワシントン)の会話の中で”ロバート・オッペンハイマー”というワードが出てくるのだ。
今となっては前作を製作中からオッペンハイマーを意識していたか、軽く予告していたともとれる。
プロデューサーからは、映画化の基となった評伝「オッペンハイマー 「原爆の父」と呼ばれた男の栄光と悲劇 」(上・下巻)を渡され、読み進めながら興味を持っていたようで、『TENET テネット』製作時の打ち上げパーティの際、ロバート・パティンソンがノーランに向けた言葉が、数々の名言を残したオッペンハイマーのスピーチの一節だったことも次回作への決断への後押しとなった模様。
あの時間を逆行するという奇天烈なアイデアを真面目に映像化した前代未聞のSFスパイアクション映画『TENET テネット』の製作中からオッペンハイマーに興味が湧いてくるというところがノーランらしいと感じる。
何しろ本作『オッペンハイマー』では、相対性理論の発見で知られるアルベルト・アインシュタイン(トム・コンティ)も登場するのだ。
第二次世界大戦の時間軸に起きた物語を2本作り、やはりここは三部作として、3本目の第二次世界大戦に関わる新作の構想を期待したいところである。
『オッペンハイマー/Oppenheimer(原題)』(2023年・イギリス・アメリカ・3時間)
監督:
クリストファー・ノーラン
出演:
キリアン・マーフィー、エミリー・ブラント、マット・デイモン、ロバート・ダウニー・Jr.、フローレンス・ピュー、ジョシュ・ハートネット、ゲイリー・オールドマン、ケネス・ブラナー、ラミ・マレック、ジャック・クエイド、グスタフ・スカルスガルド、オリヴィア・サールビー、ケイシー・アフレック、デヴィッド・ダストマルチャン、デヴィッド・クラムホルツ、オールデン・エアエンライク、デイン・デハーン、アレックス・ウルフ、ベニー・サフディ 他
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