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ダウン症の黒人少年を初めて正面から見据えた心温まる父子物語——注目すべき監督2025にもリストアップされたデヴィッド・フォーチュン監督デビュー作『カラーブック』

妻を事故で亡くした父は、11歳の息子と初めての野球観戦に向かう。だが、アトランタ市内を電車で移動する一日は、行く先々で些細なトラブルに見舞われ、なかなか辿り着けない。

AT&T主催トライベッカ映画祭との共同開催の映画企画コンペアントールド・ストーリー」で優勝し、賞金1億5千万円を獲得したデヴィッド・フォーチュンは、長編デビューを5ヶ月で完成させた。

モノクロームの映像は、悲しみの中にある家族の輪郭を静かに描き出す。

トライベッカ映画祭から巣立った心温まる感動作は、30の映画賞で話題となった。


©︎ 2026 Netflix. All Rights Reserved.

Story:

ジョージア州アトランタ。妻タミー(ブランディー・エヴァンス)を事故で亡くしたラッキー(ウィル・カトレット)は、ダウン症のある11歳の息子メイソン(ジェレマイア・ダニエルズ)と二人、これからの暮らしを学び直していく。何かを取り戻すように、ラッキーはメイソンを初めてのプロ野球観戦に連れていくことを決める。しかし、その一日は、車の故障、電車の乗り遅れ、思いがけない出会いがが続く。


Behind The Inside:

「二人を引き離す敵役」がいない——悲しみそのものを乗り越える相手にしている

このジャンルにつきものの「親子の交流を阻む人物」——前妻の新しいパートナー、面会交流を渋る親族、あるいは制度を体現するキャラクター——は、本作には登場しない。予告だけを見ると、その手の対立構造をどこかで期待してしまう。だが、ラッキーとメイソンの一日を阻むのは、車の故障や電車の乗り遅れといった偶発的な出来事と、ラッキー自身が抱える喪失感の重さだけだ。

道中で出会う友人や近所の人々は、二人を引き離す側ではなく、支える側に回る。敵役を置かず、悲しみそのものを「乗り越える相手」として二人の一日の中に編み込んでいく——この設計が、本作を単なる父子のロードムービーから一段引き上げている。


全国オーディションが映した現実——少年メイソン役への応募者は6名だけだった

メイソン役のキャスティングにあたり、フォーチュン監督は「黒人でダウン症のある少年」を条件に全米規模のオーディションを実施した。監督自身、50人から100人規模の応募を見込んでいたという。だが実際に集まったのは、わずか6名。監督はこの結果を、黒人コミュニティの中でダウン症のある子を持つ親たちが、自分の子どもを表現の世界に重ねて想像する機会自体が乏しかったことの表れだと振り返っている。

最終的に選ばれたのは、コロラド州オーロラに暮らすジェレマイア・ダニエルズ。Zoom面談での笑顔が現場を和ませ、ウィル・カトレットとの対面リハーサルでは、わずか数十分で「すでに父子であるかのような」空気が生まれたという。本作が彼の映画デビュー作になる。


タイトルの由来は、メイソンが手放さない一冊の塗り絵

『Color Book』という題名は、抽象的な比喩ではない。メイソンが物語の中で常に持ち歩く、クレヨンと一冊の塗り絵帳そのものを指している。冒頭、母タミーが息子とビーズを通す場面に始まり、父との生活でもクレヨンと塗り絵は彼の自己表現の手段として繰り返し登場する。地下鉄で偶然出会った父の友人が「俺を描いてくれ」とせがむ場面など、彼の塗り絵帳は周囲とのコミュニケーションの窓口としても機能している。


ストライキ下、5ヶ月で長編を撮り切る——賞金1億5千万円が生んだ長編デビュー作

本作の出発点は、2023年のトライベッカ映画祭で開催されたAT&T主催の映画企画のピッチコンペ「Untold Stories」。新人の映像作家を支援するこの競合コンペでフォーチュン監督が1位となり、製作資金100万ドル(約1億5千万円)と1年間のサポートを獲得した。審査員は俳優のマイケル・ミシェル、デレク・ルーク、モー・マクレイ。

だが製作開始直後、全米脚本家組合(WGA)・俳優組合(SAG-AFTRA)のストライキが本格化し、撮影開始は翌1月末までずれ込んだ。トライベッカでの上映を翌6月に控えるなか、撮影から編集、仕上げまでの作品完成工程をわずか5ヶ月で仕上げるという綱渡りの製作になったという。

なお本作は、Netflixが資金提供する「Film Independent Amplifier Fellowship」でフォーチュン監督が開発・ワークショップを行っていた企画でもある。さらに遡れば、原型は彼が同じくNetflixの「Content Creator’s Program」で2022年に手がけたモノクロ短編『Us』。一本の短編が、長編デビュー作へと育っていった経緯がある。


当事者が当事者を演じる——NAACPイメージ賞史上初のノミネート

ジェレマイア・ダニエルズは実際にダウン症を持つ俳優だ。本作での演技は2024年デンバー国際映画祭でアメリカン・インディペンデント賞の獲得に貢献し、2025年の全米黒人地位向上協会(NAACP)が主催するNAACPイメージ賞では「最優秀新人賞」にノミネートされた。これは、ダウン症のある俳優として同賞史上初めてのノミネートだという。

トライベッカでの上映後には、コメディアンのメリッサ・マッカーシーが彼に駆け寄り、演技を称えるひと幕もあったと地元メディアが報じている。ダニエルズの両親は、黒人のダウン症児がメディアでほとんど可視化されていない現実に長く違和感を抱いていたといい、本作への出演は、その風景を変える一歩になったと語っている。


モノクロという選択——撮影監督ニコラウス・スメラーが捉えた「時代を超えた質感」

撮影を担当したニコラウス・スメラーは、墨のような濃淡と柔らかいグレーの階調で本作を撮り上げた。フォーチュン監督自身、モノクロは「人気のある選択ではない」と自覚しながらも、AT&Tとトライベッカがそのビジョンを最後まで支えてくれたと振り返っている。批評では、この選択が「この父子の物語が、過去50年のどの時代に起きていてもおかしくない」という時間を超えた質感を生んでいると評されている。音楽はダブニー・モリスによる静かなスコアに加え、ロイ・エアーズ「Everybody Loves the Sunshine」のニードルドロップが本作をリードするスパイスとして効いている。


Color Book | Official Trailer | Netflix

A newly widowed father’s quest to take his son to his first baseball game becomes a daylong journey of strength and resilience in this moving drama. Coming to Netflix on June 19th. Watch on Netflix: https://www.netflix.com/title/82784681 About Netflix: Netflix is one of the world’s leading entertainment services offering TV series, films, games and live programming across a wide variety of genres and languages.


Under The Film:

トライベッカから30の映画賞へ——Variety誌が選ぶ「注目すべき監督」

2024年6月、トライベッカ映画祭のViewpoints部門でワールドプレミアを迎えた本作は、その後デンバー国際映画祭(アメリカン・インディペンデント賞)、ボルダー国際映画祭(観客賞)、シカゴ国際映画祭(観客賞)など、累計30の映画賞を獲得しながら全米の映画祭を巡った。2025年4月には、アトランタ映画祭のオープニング作品として、ロケ地である故郷へ凱旋している。

Variety誌は批評家のリサ・ケネディが「人の心に強く残る」とフォーチュン監督を評する批評を掲載し、本作をCritics’ Pickに選出。フォーチュン監督自身も、タイカ・ワイティティやクロエ・ジャオ、ルカ・グァダニーノらが過去に名を連ねたVarietyが選ぶ「注目すべき監督2025」にもリストアップされている。


配信日6月19日に込められた大きな意味

Netflixでの配信開始日は6月19日。これはジューンティーンス(奴隷解放記念日)であり、なおかつ2026年の父の日(6月21日)の直前の金曜日にもあたる。ラッキーとメイソンの父子の物語を祝福し、まだ見ぬ世界へと温かく送り出す。


Color Book | Official Trailer | Netflix

A newly widowed father’s quest to take his son to his first baseball game becomes a daylong journey of strength and resilience in this moving drama. Coming to Netflix June 19.


『カラーブック』(2024年・アメリカ・1時間55分)
監督・脚本:デヴィッド・フォーチュン
製作:キア・アレクサンドリア・クリングマン、クリステン・ウノ、オータム・ベイリー=フォード
製作総指揮:トゥー・ルイス、ナチュリ・ノートン、タイラー・エドガートン、コースティアーン・バンダイバー
撮影:ニコラウス・スメラー
音楽:ダブニー・モリス
出演:ウィル・カトレット、ジェレマイア・アレクサンダー・ダニエルズ、ブランディー・エヴァンス、テリ・J・ヴォーン ほか
Netflix配信開始:2026年6月19日
©︎ 2026 Netflix. All Rights Reserved.


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