
1万5千ドルの自主制作映画『アウトウォーターズ 裂けた砂漠』撮影中、撮影クルーは薄気味悪い怪奇現象に遭遇していた!
ロビー・バンフィッチは、脚本・監督・撮影・編集・主演を一人でこなし、わずか1万5千ドルの自主制作でファウンド・フッテージ史に新たな到達点を刻んだ。
舞台は2017年、カリフォルニア・モハーベ砂漠。ミュージックビデオを撮るために訪れた4人の男女は、二度と帰ってこなかった。
そして、撮影中、説明のつかない奇妙な現象に撮影クルー自身が遭遇していた——夜の砂漠で消えては現れる車のヘッドライト、そして掘られた穴の前に置かれていた、錆びたナイフと斧の入った車椅子、だが、彼らはその場から逃げるわけにはいかなかった。

Story:
モハーベ砂漠で発見された3枚のメモリーカード。そこに記録されていたのは、2017年に消息を絶った4人の若者の旅だった。
ロビー(ロビー・バンフィッチ)は、ロサンゼルスを拠点に活動する駆け出しの映像作家。兄スコット(スコット・シャメル)、幼馴染のアンジェラ(アンジェラ・バソリス)、そして音楽仲間のミシェル(ミシェル・メイ)と共に、ミシェルのミュージックビデオを撮影するためモハーベ砂漠へ向かう。
最初の夜は穏やかだった。だが夜が更けるにつれ、説明のつかない轟音、動物たちの異常な鳴き声、そして地中から響く高周波の音が彼らを包み込んでいく。次の夜、事態は決壊する。3枚のメモリーカードに残されていたのは、現実の輪郭が崩れ落ちていく過程そのものだった。
Behind The Inside:
演技ではなく「実体験」——ほぼ台本無しのキャンプ
監督・脚本・撮影・編集・主演を兼任するロビー・バンフィッチが本作を完成させた予算は、わずか1万5千ドル。出演者は全員、彼の友人と家族だ。劇中でロビーの母親を演じるのは、バンフィッチの実母レスリー・アン・バンフィッチであり、息子が突然帰宅した際の驚いた表情は、台本によるものではなく地の反応だったという。
台本は存在しなかった。バンフィッチは現場で「これからこういうシーンをやる」とだけ伝え、その場の空気の中で演者たちに芝居を委ねた。クルーもほとんど存在しない。本作のロケーションであるモハーベ砂漠への撮影行は、一度のロングトリップではなく、「正確には20回くらい」(バンフィッチ本人の弁)の遠征の積み重ねだった——口実さえあれば、砂漠へのロードトリップを繰り返していたのだ。
音響制作には2年の歳月と、砂漠で録り集めた数千点の環境音が投じられた。そして劇中に一瞬映るガラガラヘビの実写映像を手に入れるまでには、3年を要したという。フェイクブラッドの使用量は20ガロン。低予算ながら、徹底した現場主義が貫かれている。
フィクションと実体験の境界が溶ける——撮影中に体験した怪奇現象
ここからが本題だ。
バンフィッチはインタビューで、撮影中に「映画とは無関係に」本当にぞっとした体験を語っている。
ある夜、キャンプをしていると、遠くにヘッドライトが現れた。近づいてくる。そして、ふっと消える。また現れて、近づいてきて、消える。このヘッドライトの出現と消失が、何もない荒野のど真ん中で、1時間にわたって繰り返された。バンフィッチ自身、これを『ウルフクリーク/猟奇殺人谷』(2005年)の車のシーンに喩えている——目撃者は彼らだけで、説明は全くつかなかった。
さらに不気味なのは、撮影中、彼らは砂漠の中で、掘られた穴のすぐ前に、錆びたナイフと斧が置かれた車椅子が一台、ぽつんと放置されているのを発見した。バンフィッチはこの光景を実際に撮影したが、「あまりにもベタすぎて、誰も信じてくれない」と判断し、本編には使わなかったという。そんな体験をしていても彼らは、その場所に留まって撮影を続けた。
劇中で描かれる「轟音」「光」「地中からの音」のモチーフの一部は、撮影前後にロサンゼルスで実際に発生した地震の体験からも着想されている。バンフィッチは自宅で撮影した地震の映像を、序盤の伏線として実際に作品内に組み込んでいる。フィクションと実体験の境界が、この映画においては虚実ないまぜに溶け合っている。
監督が明言を拒んだ「正体」——だからこそ、観客は自分の闇を持ち込む
劇中で示される異常現象の正体について、バンフィッチは取材で一貫して明言を避けている。地震が解放した何らかの存在なのか、近隣の政府管理区域に関連する実験なのか、あるいは何らかの異星生命体なのか——彼は「その答えは観客に委ねたい」とし、唯一はっきりさせているのは、「自分の中では、すべての異常現象が一つの“脅威”の存在から逆算して設計されている」という点だけだ。
SF映画『イベント・ホライゾン』(1997年)の船内記録映像からインスピレーションを得たというバンフィッチは、「説明できないものへの恐怖」こそが本作の核心だと語っている。
Under The Film:
ファウンド・フッテージの“その先”——ブレア・ウィッチ・プロジェクトからの30年
『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(1999年)が確立した「手持ちカメラ+未確認の脅威」という文法から、ファウンド・フッテージ・ホラーは四半世紀以上の歴史を積んできた。だが『裂けた砂漠』が試みているのは、その文法の単なる継承ではない。
前半50分は、ほぼ何も起こらない。これは、ジャンルの“間延び”ではなく意図的な戦略だ。観客に4人の関係性を呼吸させ、彼らへの愛着を育てた上で、後半はその安心感を粉砕する——『裂けた砂漠』はその切り替えの落差を、極限まで引き延ばした構成で成立している。Bloody Disgustingの批評家は、この映画を「ファウンド・フッテージの様式をより過激な何かへ変質させた」と評し、Rue Morgueは「暗示の力に強く反応する観客にこそ効く映画」だと書いた。
何が起きているかを説明しないという選択は、突き放しではない。観客自身の想像力こそが、この映画の最も恐ろしい素材になる——その意味で、撮影中にクルー自身が遭遇した「説明できない車のヘッドライト」や「車椅子と斧」のエピソードは、この映画の制作哲学そのものを物語っている。フィクションの中の“説明不能”は、現場で実際に起きた“説明不能”の延長線上にあったのだ。
『The Outwaters/アウトウォーターズ 裂けた砂漠』(2022年・アメリカ・110分)
監督・脚本・撮影・編集:ロビー・バンフィッチ
出演:ロビー・バンフィッチ、アンジェラ・バソリス、スコット・シャメル、ミシェル・メイ、レスリー・アン・バンフィッチ
製作:ロバート・アブラモフ、ロビー・バンフィッチ、ボー・J・ジェノー
配給:エクストリームフィルム
2026年6月26日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷、シネマート新宿ほか全国ロードショー
© 2022 Outwater Road X, LLC.
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