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ナイトボーン 夜哭、母性+グロテスク、北欧ホラー、ハンナ・ベルイホルム、セイディ・ハーラ、ルパート・グリント

『ナイトボーン 夜哭』― 「母性+グロテスク」の深化、そして北欧ホラーの系譜

『ハッチング―孵化―』でサンダンス映画祭に鮮烈なデビューを飾ったフィンランドの監督ハンナ・ベルイホルムが、待望の長編第2作を引っ提げて帰ってきた。それが8月28日公開の『ナイトボーン 夜哭』(原題:Yön lapsi)だ。ベルリン国際映画祭のコンペティション部門でワールドプレミアを果たした本作は、前作から一貫する「母性とグロテスクの結合」というテーマを、より直接的な形で押し進めた作品になっている。本稿では、その作家性の深化と、本作が背負う北欧ホラーの系譜という二つの軸から作品を読み解きたい。


© 2025 Elokuvayh/ö Komee4a Oy, Filmai LT, Bluelight, Getaway

Story:

サガ(セイディ・ハーラ)と英国人の夫ジョン(ルパート・グリント)は、サガが幼少期を過ごしたフィンランドの森深くにある古い家へと移り住む。二人が待ち望んでいた子どもがついに誕生するが、周囲がどれだけ「何も問題ない」と言い聞かせても、サガだけはわが子に対する違和感を拭えない。夫婦の関係に亀裂が入り始める中、サガは赤ん坊にまつわる不穏な真実に気づいていく。

監督・脚本はハンナ・ベルイホルム、共同脚本にイリヤ・ラウツィ。撮影はピエタリ・ペルトラ、音楽はエイッカ・トッピネン(アポカリプティカ)。フィンランド・リトアニア・フランス・英国の合作で、製作にはA24が名を連ねている。


Behind The Inside:

母性とグロテスクの結合という作家性の深化

前作『ハッチング―孵化―』は、思春期の少女と、彼女が孵化させてしまった”もう一人の自分”のような怪物を通じて、母娘関係の抑圧と少女自身の身体的変容を描いた作品だった。ベルイホルムはベルリン映画祭で、今作でも親であることに伴う複雑な感情と、母性にまつわるタブーに向き合いたかったと語っている。

『ナイトボーン 夜哭』が扱うのは、その延長線上にある「出産後」の恐怖だ。理想の子どもを望んでいたはずの母親が、生まれてきたわが子に対して抱く違和感――これは俗に「産後うつ」や育児不安として片付けられがちな感情を、そのままモンスター映画の文法に変換する試みと言える。ベルイホルムはこのわが子への違和感を安易に説明しすぎない演出を選んでおり、赤ん坊の姿自体も長らく画面には映さないままにすることで、観客の想像力に負荷をかける構成になっている。前作が少女の身体の変容を描いたのに対し、今作は母親の”眼差し”そのものを揺さぶる方向に舵を切っており、二作を通じてベルイホルムが「女性の身体と社会的役割の間で生まれる恐怖」を一貫して追い続けていることがわかる。

北欧ホラーと『ローズマリーの赤ちゃん』の系譜

本作を語る上で欠かせないのが、ロマン・ポランスキー『ローズマリーの赤ちゃん』(1968年)との比較だ。海外レビューでも、周囲全員から「気のせいだ」と言われ続ける主人公の孤立、そして画面外の空間の使い方において、本作が明確に同作を参照していると指摘されている。誰も信じてくれない中で一人だけ真実に気づいていく母親、という基本構造はまさに『ローズマリーの赤ちゃん』の系譜に連なるものだ。

一方で、本作はフィンランドの森という土着的な舞台設定や、キリスト教的なモチーフ(義父が聖職者という設定)とスカンジナビアの民間伝承的なイメージを組み合わせている点で、単なる翻案にとどまらない北欧ホラーとしての固有性も持っている。近年のフォークホラーの潮流(『ミッドサマー』以降、北欧の自然や共同体の異物性を描く作品群)とも接続しうる一本であり、A24が製作に関わっている点からも、同スタジオが得意とする”アート性の高いジャンル映画”の系譜に連なる作品として位置づけられそうだ。

観る前に知っておきたいポイント

  • 赤ん坊の姿は劇中なかなか明かされない。海外の速報レビューでは「顔を最後まで隠す演出」が賛否両論を呼んでいる点も含めて楽しみたい。
  • 前作『ハッチング―孵化―』を未見でも問題なく楽しめる独立した物語だが、ベルイホルムの作家性の連続性を意識すると読み方が深まる。
  • 『ハリー・ポッター』のロン役で知られるルパート・グリントが、近年ジャンル映画への出演を重ねている流れの一本としても注目したい。

ファンタジア国際映画祭W受賞!『ナイトボーン ー夜哭ー』本予告|8月28日(金)公開

北米最大級ジャンル映画祭、第30回ファンタジア国際映画祭 最優秀作品賞&最優秀演技賞(セイディ・ハーラ) W受賞! その産声は、祝福ではなく”災い”。 北欧・フィンランドが産んだ異才・ハンナ・ベルイホルム監督(『ハッチング -孵化-』)最新作。 …


Under The Film:

北欧テイストで固有の手触りを残す

『ナイトボーン 夜哭』は、『ローズマリーの赤ちゃん』という古典の骨格を借りながら、ベルイホルムが前作から追い続ける「母性とグロテスクの結合」というテーマをさらに一歩深めた作品だ。誰も信じてくれない恐怖という普遍的な型に、北欧の自然と土着的なイメージを重ねることで、単なるオマージュではない固有の手触りを獲得している。ホラー映画としての緊張感と、育児という誰もが直面しうる不安のリアリティが同居する点にこそ、本作を今観る意味がある。


『ナイトボーン 夜哭』(2026年・フィンランド・フランス・イギリス・リトアニア・1時間32分)
監督:ハンナ・ベルイホルム
出演:セイディ・ハーラ、ルパート・グリント、パメラ・トラ、ピルッコ・サイシオ、レベッカ・レイシー、ジョン・トムソン
配給:ギャガ
公開日:2026年8月28日
© 2025 Elokuvayh/ö Komee4a Oy, Filmai LT, Bluelight, Getaway

映画『ナイトボーン -夜哭-』公式サイト

私は”なに”を産んでしまったのか。 その産声は、祝福ではなく”災い”。『ハッチング -孵化-』監督が産み落とす戦慄の北欧チャイルド・スリラー – ナイトボーン -夜哭- 8.28 Fri 公開


Reels:

ハッチング-孵化-(字幕版)

北欧フィンランド。12歳の少女ティンヤは、完璧で幸せな自身の家族の動画を世界へ発信することに夢中な母親を喜ばすためにすべてを我慢し自分を抑え、体操の大会優勝を目指す日々を送っていた。ある夜、ティンヤは森で奇妙な卵を見つける。家族に秘密にしながら、その卵を自分のベッドで温めるティンヤ。やがて卵は大きくなりはじめ、遂には孵化する。卵から生まれた’それ’は、幸福な家族の仮面を剥ぎ取っていく…。…


Reload:

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