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オアシスはいつ「IP」になったのか——『Don’t Look Back in Anger』が隠す4つの設計図

9月5日、第83回ヴェネチア国際映画祭で、『オアシス ドント・ルック・バック・イン・アンガー』がワールドプレミアを迎えた。リアム・ギャラガーとノエル・ギャラガーは手を取り合い、会場は8分間のスタンディングオベーションに包まれたと各メディアは一斉に報じた。20年以上ぶりとなる二人の共同インタビューを収めた本作は、2025年の世界ツアー「Oasis Live ’25」の舞台裏に密着し、9月11日には日本でも劇場公開される。

美しい話である。ただし、美しすぎる話には設計図がある。


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①スタンディングオベーションという”演出可能な数字”

まず引っかかるのは、ヴェネチア国際映画祭で通常、行われる記者会見のキャンセルである。バルコニーには「Oasis Live 25 Buenos Aires」の横断幕が掲げられ、「Oasis! Oasis!」の合唱が起きた——これは映画祭のプレミアというより、スタジアム公演の縮図に近い。

熱狂そのものを疑う必要はない。だが、映画祭のプレミアという場において「何分スタンディングオベーションが続いたか」は、もはや作品評価の指標ではなく、メディアや関係者が数値化して拡散する広報素材と化して久しい。会見という、質問という不確定要素にさらされる場を回避し、拍手という制御可能な熱量だけを世界に配信する——この構造自体が、本作の本質を先取りしている。

②監督コンビの正体——再結成という商品を感動的に語る専門家

本作の監督は、ダイアン・サザーン(Dylan Southern)とウィル・ラヴレース(Will Lovelace)。この二人は、2010年に公開されたブラーの再結成ドキュメンタリー『No Distance Left to Run』を手がけたコンビでもある。

つまり、ブリットポップ最大の宿敵同士——オアシスとブラー——それぞれのバンド内の「公式な和解の物語」を、同一の語り部が両方請け負っていることになる。これは偶然というより、彼らが「バンドの感情」ではなく「再結成という商品をいかに感動的に語るか」の専門家として、業界内でポジションを確立していることの証左だろう。兄弟の確執と和解は、彼らにとって初めて描く題材ではない。手慣れた型に、オアシスという新しい素材を流し込んだにすぎない可能性がある。

③”Writer”=脚本というクレジットの異物感——スティーヴン・ナイトという旬すぎる存在

さらに目を引くのが、本作に脚本としてスティーヴン・ナイトがクレジットされている点だ。ドキュメンタリーに脚本家が必要だということは、素材(20年ぶりの共同インタビューやリハーサル映像)はあっても、感動の”配置”と”順序”はあらかじめ設計されているということを意味する。

そして今もっとも「イギリスが生んだアイコン」を料理できる脚本家がナイトであることが、この人選をただの偶然にしない。今年3月には『ピーキー・ブラインダーズ 不滅の男』が劇場公開後Netflixで配信され、続く新シリーズ2シーズンの製作も既に発表済み。加えて2025年8月には、ドゥニ・ヴィルヌーヴ版新作ボンドの脚本担当としても発表されている。ピーキー・ブラインダーズ(暴力と結束の一族)、ジェームズ・ボンド(英国最大のスパイ)、そしてオアシス(ブラーと並びキング・オブ・ブリットポップ)——ナイトは今、英国的な男性性の神話を専門的に設計し続ける作家になっている。その彼が、ドキュメンタリーという「起きたことの記録」であるはずの形式に招かれたという事実こそが、本作が「記録」ではなく「物語」として最初から構築されていたことを何より雄弁に語っている。

④着地点——兄弟が気づいた「自分たちはIPである」という事実

①〜③を並べると、一つの仮説が浮かび上がる。ギャラガー兄弟は、感情的に和解したのではなく、自分たち自身が「オアシス」という共同資産——IP——であることに、ようやく気づいたのではないか。

本作は劇場公開を経て、Disney+で国際配信、米国ではHulu/Disney+で配信される。劇場公開はあくまで入口であり、本丸はストリーミングというアーカイブ化にある。これはビヨンセやテイラー・スウィフトのツアー映画が確立した「凱旋ツアーのコンテンツ化」というジャンルの、ブリットポップ版と言っていい。感情の物語を装いながら、その実態はカタログとツアーの収益を最大化するための、精緻に設計された企業アセットの映像化なのである。

長年の確執は、兄弟の感情としては本物だったのだろう。しかし今回の「和解」は、感情の問題である以上に、資産としての自分たちにどう向き合うかという経営判断だったのではないか——同じ監督コンビがブラーで証明済みの型、旬の脚本家による物語設計、そして制御されたメディア露出。これらすべてが、その仮説を裏付けている。


『オアシス ドント・ルック・バック・イン・アンガー』(2026年・イギリス・2時間3分)
監督:ディラン・サザーン、ウィル・ラブレース
出演:リアム・ギャラガー、ノエル・ギャラガー
配給:ディズニー
公開日:2026年9月11日
ヴェネチア国際映画祭 Venice Open :2026年9月5日(ワールドプレミア)
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Reels:

オアシス:スーパーソニック(字幕版)

94年のデビューからわずか3年でロック界の頂点に到達した”オアシス”アルバム7作品すべてがUKチャート1位、全世界でCDトータルセールス5,000万枚以上を記録!結成から96年のネブワース・ライヴまでの<成功に至るまでの壮大な旅の日々>その真実が今、語られるー(C)2016 Burnage Films Limited. All Rights Reserved.[洋画コレクション]


Oasis – Live at Wembley Arena 2008

ロンドンのウェンブリー・アリーナで撮影されたこのコンサート映像は、すべてのファンに最初から最後まで壮大なライブ体験をお届けします。『シャンペン・スーパーノバ』、『ドント・ルックバック・イン・アンガー』などのオアシスのヒット曲の懐かしのバージョンを収録。


リアム・ギャラガー:アズ・イット・ワズ(字幕版)

音楽ファンならば知らぬ者はいない稀代のフロントマン、リアム・ギャラガー。伝説的なロックバンドオアシスの成功でスターダムにのしあがる反面、破天荒でスキャンダラスな行動でメディアから度々バッシングを受け、さらに兄弟との確執が表面化し、バンドは解散状態に。そこから新たに結成したバンドも解散となってしまう。失意の中、自らの力だけで音楽の世界を生き抜くことを決意したリアムは自身の音楽人生を賭け、ソロデ…


Reload:

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