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ドキュメンタリー映画、百姓、わらう。、柴田昌平監督

ドキュメンタリー『百姓、わらう。』――「絶滅危惧種」が浮かび上がらせる数字、2026年という符合

9月26日、ドキュメンタリー映画『百姓、わらう。』がポレポレ東中野よりロードショー公開される。『百姓の百の声』『千年の一滴 だし しょうゆ』の柴田昌平監督が、4年にわたって全国の若手農家を追った作品だ。

この映画が封切られる2026年、日本の農業にはひとつの統計上の節目が訪れている。農林水産省の発表によれば、個人で農業を主な仕事とする「基幹的農業従事者」数は前年比4.8%減の98万6,600人となり、比較可能な統計が残る1985年以降、初めて100万人を割った。平均年齢は67.7歳。30代以下は全体のわずか5%にとどまる。

映画の公開日と、この”初めて100万人を割った年”が重なったのは、もちろんただの偶然である。だが記事として紹介するにあたり、この符合はそのまま置いておくだけで十分に機能する数字だと思う。


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「絶滅危惧種」を自称する人たち

『百姓、わらう。』が追うのは、日本の農業従事者のうち49歳以下の割合が人口比でわずか0.1%という、統計上ほとんど誤差のような存在になった若手農家たちだ。作中で彼らは自らを「絶滅危惧種」と呼び、それを笑い飛ばしながら生きている。土中の微生物の力を引き出して週休1.5日を実現した有機農家。1億円の借金を抱えながら大規模酪農から放牧へと舵を切り、牛の数を「適正規模」まで減らすことで家族の笑顔を取り戻した酪農家夫婦。柴田監督が捉えるのは、深刻な統計の当事者でありながら、その深刻さに呑まれていない人々の姿だ。

これは彼ら自身が選んだ自己認識であって、こちらが上から貼るレッテルではない。だからこそ、この記事でもその言葉をそのまま借りることにする。

「絶滅危惧種」を字義通り扱ってみると

ここからは完全に遊びの領域であることを断っておく。環境省のレッドリストでは、種の存続状況を個体数の減少率や生息数の規模によって「絶滅危惧IA類」「IB類」「II類」といった区分に分けている。判定基準の一つに、一定期間内の個体数減少率がある。

直近5年(2020年→2025年)の減少率は25.1%(136万3千人→102万1千人)で、比較可能な統計が残る1985年以降では最大の下落幅だという。肥料・農機具価格の高騰や近年の猛暑が、高齢層を中心とした離農を後押ししているとされる。

この25.1%という数字を単純に2倍して10年換算すると、ちょうど50%減少というラインに達する。奇しくもこれは、環境省のレッドリストで「絶滅危惧II類」——10年間で個体数が50%以上減少した場合に該当しうる区分——の基準値とほぼ重なる水準だ。もちろん5年の数字を機械的に2倍しただけの乱暴な試算であり、統計の濫用に近い牽強付会である。人間の職業人口の増減に生物の個体数減少と同じものさしを当てること自体がそもそもナンセンスなのだが、映画の中で当事者たち自身が半分冗談で使っている「絶滅危惧種」という言葉が、数字の上でもあながち誇張ではないという事実は、記事の中で一度くらい真顔で確認しておく価値があると思う。

大事な数字をもうひとつだけ置いておく

食料自給率(カロリーベース)は長年30%台で推移している。これも特に論を展開せず、ここに置くだけに留める。深刻さを語るための数字ではなく、読者が前段の数字と勝手に結びつけるための素材として置く、という距離感を保ちたい。

それでも、わらう

『百姓、わらう。』というタイトルが示す通り、この映画の主眼は危機を訴えることではない。マニュアルの通用しない自然を相手に、若い農家たちが自らの工夫でタフに生き抜いていく姿——その逞しさと笑いこそが主題だ。統計だけを見れば重い話になる題材を、当事者たちが自分の言葉と生き方で軽やかに扱い直している。その軽やかさに、こちらの筆致も合わせたい。

9月26日、東京・ポレポレ東中野より公開。以降、全国で順次公開予定。


『百姓、わらう。』(2026年・日本・2時間13分)
監督:柴田昌平
配給:プロダクション・エイシア
公開日:2026年9月26日

映画『百姓、わらう。』公式サイト

日本の人口のわずか0.1%、「絶滅危惧種」である百姓たちを訪ねる旅。柴田昌平監督最新作。


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