一人の女性の人生の転機を劇的に描くスリラー『アイリーン』
ヒッチコックが映画化したダフネ・デュ モーリアの不朽の名作『レベッカ』に、俊英オテッサ ・モシュフェグがインスパイアされて書きあげた小説『アイリーンはもういない』を完全映画化。
自分の中の黒い感情を抑え、静かに生活しようと努める孤独な一人の女性アイリーン。
彼女が魅力的な女性レベッカと出逢うことで始まる、それまでの鬱屈した人生の終わりと、新たな人生の始まりまでの1週間を劇的に描くサスペンス・スリラー。
Story:
1960年代、ボストン。
刑務所で働く物静かな事務員アイリーン・ダンロップ(トーマシン・マッケンジー)は母を亡くし、酒乱の父ジム・ダンロップ(シェー・ウィガム)との生活がひどく窮屈で、父を心底憎んでいた。
日々の営みを繰り返すだけの単調な生活であったが、ある日、刑務所に有能で美しい心理学者レベッカ(アン・ハサウェイ)が赴任してきたことがアイリーンの地味な人生への劇的なカンフル剤となり、強烈な人生の転機を迎えることになる。
Behind The Inside:
サスペンス・スリラーの新女王トーマシン・マッケンジー
原作となったのは長編デビュー作『アイリーンはもういない』を書いた新時代を象徴する俊英小説家オテッサ・モシュフェグ。
『アイリーンはもういない』でオテッサは優れた新人小説家に贈られるPEN/ヘミングウェイ賞を受賞し、更にブッカー賞、全米批評家協会賞、英国推理作家協会ジョン・クリーシー・ダガー賞の最終候補にノミネートされている。
2018年にオテッサが発表した小説「My Year of Rest and Relaxation」は2001年同時多発テロを時代背景に裕福な家庭に育った一人の美しい女性が突然仕事を辞め、冬眠と称してニューヨークの自宅に引き篭もりひたすら眠り続ける姿を描き、冬眠の引き金となった可能性のある過去のいくつかの出来事を考察してゆくという、同年の話題の書となっている。
映画化はフローレンス・ピュー主演『レディ・マクベス』が高評価で名を馳せたウィリアム・オルドロイド監督がメガホンをとり、タイトル・ロールとなった主演のアイリーン役には、『オールド』(2021年)、『ラストナイト・イン・ソーホー』(2021年)とサスペンスフルな映画に出演が続く人形のように清純な姿の内に秘めた情念を感じさせる演技力をもつトーマシン・マッケンジー。
アイリーンを魅了する心理学者レベッカ役にはアン・ハサウェイがヘアをブロンドに染め艶やかに熱演している。
原作者オテッサ・モシュフェグは、ダフネ・デュモーリア作「レベッカ」にインスパイアされ、執筆したとしており、アンが演じたレベッカもそこから来ていると思われる。
そうした経緯から何かとアルフレッド・ヒッチコックの不朽の名作『レベッカ』と比較されるのは避けることのできない宿命である。
予告編で使われているロールシャッハ風の画面処理など、様々なパーツがスリリングであり、その極上の心理サスペンス風味にとてもそそられる仕上がりとなっている。
『アイリーン/Eileen』(2023年・アメリカ・イギリス・韓国・1時間37分)
監督:
ウィリアム・オルドロイド
出演:
トーマシン・マッケンジー、アン・ハサウェイ、シェー・ウィガム、サム・ニボラ、シオバン・ファロン、トニー・パタノ、ウィリアム・ヒル 他
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