暗黒時代のチリの植民地から命がけで逃げ出してきた女性を描いたストップ・モーション・アニメの狂乱すべき傑作『オオカミの家』
ピノチェト独裁政権下のチリ。
旧ナチス・ドイツの流れを汲むカルトなドイツ系移民のコロニーから脱出してきた女性マリアと彼女を追う謎の狼。
Story:
子供に対する性的虐待でドイツを追われた旧ナチスのキリスト教の指導者を中心に作られた、狂信的なドイツ系移民のコロニーであるコロニア・ディグニタ。
1960年代の創設当初から、施設内で小児虐待、強制労働、拷問が行われていたという。
ピノチェト独裁政権下となる1970年代以降は、政府の保護下に入り、反軍事政権側の者たちの強制収容所として、やりたい放題の地獄と化す。
本作のドイツ人女性の主人公マリア(アメーリア・カッシャイ)は2匹の豚を逃がしたことを咎められ、そのことでコロニア・ディグニタから決死の覚悟で逃亡する。後を追うのは謎の狼。
Behind The Inside:
現代アートとして世界各国を巡回展示しながらの作品制作
ストップ・モーション・アニメーションで作られた本作は5年の歳月をかけて撮影・製作された。
本作の製作スタイルの最もユニークな点は、アムステルダム、ハンブルグ、サンチャゴ、ブエノスアイレス、メキシコシティといった都市にある美術館、アートギャラリーへと点々と撮影場所を移動し、人間大のセットを作り、そこでストップ・モーション・アニメーションを実際に撮影しているところを展示内容としたということ。
製作過程を生で観ることが一種のパフォーマンス・アートであるという映画として考えると非常にエポック・メイキングなことをこの二人の監督は行ってきた。
恐怖の地、コロニア・ディグニタはすでに映画化されている
コロニア・ディグニタがいかに恐ろしい場所かは、エマ・ワトソン、ダニエル・ブリュール主演の囚われた恋人を救出するためにコロニア・ディグニタへヒロインが単身潜入する、手に汗握るサスペンス・スリラー『コロニア』(2015年)で詳細に描かれている。
Awards:
- アヌシー国際アニメーション映画祭:最優秀作品賞
- ボストン国際映画批評家協会賞:長編アニメーション賞
- ニューメキシコ映画批評家賞:ベスト・アニメーション賞
- ポートランド国際映画祭:長編商業アニメーション賞
『オオカミの家/The Wolf House(原題)』(2018年・チリ・ドイツ・1時間15分)
監督:
ホアキン・コシーナ、クリストバル・レオン
出演:
アマリア・カッサイ、ライナー・クラウゼ
© 2018 Diluvio & Globo Rojo Films
2023年8月19日 シアター・イメージフォーラム、他 全国順次公開‼
オオカミの家
むかしむかし、あるところにマリアという美しい娘と、二匹の子ブタがいましたーー。アリ・アスターが絶賛した、世にも恐ろしいチリ発のストップモーション・アニメーション。『オオカミの家』
VOIDセレクト‼ ストップモーション・アニメの世界おすすめ
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【更新】2023年7月19日