初めて宇宙を飛んだのは、俺たちの祖先だ。宇宙飛行犬ライカと彼女の子孫の犬たちの視線で綴るドキュメンタリー『犬は歌わない』
東西冷戦の時代。米ソの熾烈を極める宇宙開発競争の犠牲となったのは、おとなしい性格の雌犬「ライカ」だった
Story:
東西冷戦真っ只中の1950年代。
米ソの対立は激しく、ソビエト連邦は宇宙開発に向けて様々な実験を行っていた。
その中の一つがスペース・ドッグ計画。
人間の宇宙飛行が可能かどうかを検証するために数十回に渡り、多数の犬達を宇宙空間へと送り出していたのだ。
多くの犬達の中でも世界初の宇宙犬として有名な「ライカ」をモチーフに、宇宙開発、エゴ、理不尽な暴力など、犬を取り巻く人間社会をソ連の宇宙開発計画のアーカイブと地上の犬目線で撮影された映像によって描き出す新感覚ドキュメンタリー。
1957年11月、スプートニク計画の第1弾、スプートニク1号による世界初の無人人工衛星打ち上げ成功のわずか1ヶ月後、生物を乗せた人工衛星の打ち上げ実験が行われた。
その生物を乗せた人工衛星としては世界初の「スプートニク2号」に乗せられたのが、ライカだった。
世界初の“宇宙飛行犬”として地球を飛び立ったライカは、かつてモスクワの街角を縄張りにする野良犬だった。
ライカは地球生まれの生物として初の軌道飛行を達成したが、生きて戻ることはなかった。
当時、スプートニク2号は大気圏再突入が不可能な設計だったため、当初からライカは生きて戻れないことがわかっており、彼女は打ち上げから10日後に薬入りの餌を与えられて安楽死させられた、とされていた。
だが、20世紀末ごろからライカはキャビンの欠陥による過熱で亡くなったとする説などが出ており、死因は諸説あるが打ち上げ後のストレスと高熱が最も有力とされている。
ライカとスプートニクに関しては数多の学術的検証がなされ、またこの伝説的な宇宙犬をモチーフとした物語が世界各国で生み出されることとなった。
時は過ぎ、モスクワの犬たちは今日も苛酷な現実を生き抜いていた。
そして街にはライカは霊として地球に戻り、彼女の子孫たちと共に街角をさまよっているという都市伝説が生まれていた・・・。
Behind The Inside:
スプートニク2号のために訓練された10匹以上の犬の中から選ばれたライカ
スプートニク2号のキャビンは狭く、排泄姿勢の問題からオスではなくメスの犬が選ばれた。
また、その狭いキャビンに慣れさせるため、犬たちは20日間かけて徐々に小さな檻に移されていった。
その中でもライカは小型犬で体重は約5キロと小柄。飼育室でも他の犬たちと争ったりせず、おとなしい性格だったという。
Awards:
- ロカルノ国際映画祭:ヤング審査員特別賞・フィルムメーカーズ・オブ・ザ・プレゼント部門ISPEC特別賞(エルザ・クレムザー、レビン・ペーター)
- ウィーン国際映画祭:長編映画賞(エルザ・クレムザー、レビン・ペーター)
『犬は歌わない』(2019年・オーストリア・ドイツ・1時間31分)
監督:
エルザ・クレムザー、レビン・ペーター
出演:
アレクセイ・セレブリャコフ(ナレーション)
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