胸に突き刺さる父と娘のひと夏の思い出『aftersun アフターサン』
近年のイギリス映画最大の才能発見!と言われている女性監督シャーロット・ウェルズの自伝的作品。
初監督作にしてマスターピースを作ったと多くの批評家から絶賛されているストーリーは、ひと夏の父と娘のたわいもない思い出話。
流れるような映像の中に落ちている真実のかけらが繋ぎ合わさってゆく今までにない新世代の映像作品。
Story:
トルコ南西部の小さなビーチリゾート、オルデニズ。
11歳の娘ソフィー(フランキー・コリオ)は、普段は離れて暮らしている父カルム(ポール・メスカル)とひと夏のバケーションに訪れている。
ソフィーは、父とプールや観光を楽しみながらもっぱらミニDVカメラで親子の休日を記録し続けている。
カルムはソフィーが一緒に暮らす母とは友好的に離婚したが、不安定な収入から気苦労を重ね、鬱症状が現れていた。
自分の病状をソフィーにひた隠しにするカルムは、気持ちをしっかり保つため太極拳をやったり、自己啓発本を読んでいる。
よく物事を観察するタイプのソフィーであったが、父の病状のサインには気づけずにいた。
ソフィーが撮ったミニDV映像と実際に起きた出来事が交互に切り結ばれながら、映っていたこと、実際に思っていたこと、言えなかったこと、気づけなかったこと、たわいもないさまざまな事象がとめどなく錯綜しながら、父と娘の旅の思い出は真実の形を現してゆく。
Behind The Inside:
本番まで周到に演出プランを準備した監督シャーロット・ウェルズ
脚本には、ポール・メスカル演じる父カルムが鬱症状に一人で悩むシーンは意図的に書かれていない。
そうすることで娘ソフィーを演じるフランキー・コリオが、役柄のソフィーそのままの気持ちで演じられると監督のシャーロット・ウェルズは考えたためである。
撮影に入る前、ポールとフランキーは2週間ほどビーチリゾートで一緒に過ごして、役柄の父と娘の関係性を身にまとう準備をしたという。
映画の完成後もポールとフランキーは、連絡を取り合っているそうで、今も仲良しなのだそうだ。
Under The Film:
批評家が大絶賛した今までになかった映画のスタイル
映像に映っていることと心の内に抱える言葉にならない問題、相反する事柄をミニDV撮影による記録映像、記憶、実際にあったことを切り結びながら非常に曖昧で困難な映像表現を体現した新人監督シャーロット・ウェルズに対して賛辞が止まらない。
ザ・ニューヨーク・タイムズは、”過去に縛られてきた映像言語の鍵を開け放ち、映画術を再発明した驚嘆すべき作品”とまで評している。
Awards:
- 第95回アカデミー賞・ノミネート:主演男優賞・ポール・メスカル
- 第75回カンヌ国際映画祭・批評家週間:フレンチ・トーチ賞(独創的な映像作品に授与)・
- シャーロット・ウェルズ
- ナショナル・ボード・オブ・レビュー:監督賞・シャーロット・ウェルズ
- ニューヨーク映画批評家協会賞:最優秀初監督賞・シャーロット・ウェルズ
- ボストン映画批評家協会賞:編集賞・ブレア・マックレンドン、新人監督賞・シャーロット・ウェルズ
- シカゴ映画批評家協会賞:新人監督賞・シャーロット・ウェルズ
- 全米監督協会賞:最優秀新人監督賞・シャーロット・ウェルズ
『aftersun アフターサン/Aftersun』(2022年・イギリス・アメリカ・1時間42分)
監督:
シャーロット・ウェルズ
出演:
ポール・メスカル、フランキー・コリオ、セリア・ロールソン・ホール、サリー・メッシャム 他
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