戦時中も苦難を耐え抜き、ワインを造り続けたレバノンのワイン醸造家達。その不屈の精神から生まれた幸福と生き方論とは?『食べて、祈って、恋をして』著者エリザベス・ギルバートや、ジャンシス・ロビンソン、マイケル・ブロードベントなどワイン界の著名人達も交えてレバノンワインの魅力を語るドキュメンタリー
Story:
『WINE AND WAR, THE UNTOLD STORY OF WINE IN THE MIDDLE EAST』という原題が示すとおり、紛争地域のイメージが強い中東の小さな国、レバノンのワイン造りに関するドキュメンタリー。
レバノンは古くから地中海交易の中心のひとつであり、レバノンワインの起源は5千年前とも一説には7千年前ともされる、世界最古のワイン産地の一つでもある。
本作には、「レバノンワインの父」と評され、世界的に高い評価を受けているシャトー・ミュザールの2代目セルジュ・ホシャール他、戦時中もワインを造り続けてきた不屈のワインメーカーたちが登場する。
彼らは、従業員の安全の確保、ロジスティクスとオペレーションの混乱、ワイン産業に対するイスラム教徒の非寛容、パンデミックによる国境閉鎖とロックダウン、潜在的なイスラエルへの恐怖など、あまたの困難に直面している。
しかし、内戦中はわずか5つしかなかったワイナリーがいまや50を超え、長きに渡って苦難に翻弄されつつも生き抜いてきたレバノン人の起業家魂、勇気、決意、そしてワインが人々にとって善となる力をもっていることを信じ、まさに命がけでワインを造り続けている人々がいることを本作は教えてくれる。
虐殺が起こった故郷で村の再起のためにワイナリーを続ける夫婦や、平和をもたらすために内戦中にワイン造りを始めた修道院の神父など、絶望的な状況でもワインを造り続けてきた11のワイナリーのワイン醸造家たちが、ワインを通して人生哲学や幸福に生きる秘訣について語る。
セルジュ・ホシャールが「ワインは最強の薬で最大の奇跡」と語るように、本作を観た後は、きっとレバノンに対するイメージが変わっているだろう。
Behind The Inside:
きっかけはマイケル・カラム著「Wines of Lebanon」
2013年、マーク・ジョンストンとマーク・ライアンはマイケル・カラム著「Wines of Lebanon」に触発され、語り継がれるワインメーカー達と共に中東の小さな国レバノンのイメージを変えようと試みたところから、本作は始まった。
また、制作者達は映画の公開による全ての収益は、2020年にレバノンの首都ベイルートで起きたベイルート港爆発事故で大きな打撃を受けたセント ジョージズ病院で、保険のない子供たちに必要な医療を提供している慈善団体CAP-HOに寄付するとしている。
『戦地で生まれた奇跡のレバノンワイン/WINE and WAR』(2020年・アメリカ・1時間35分)
監督:
マーク・ジョンストン、マーク・ライアン
出演:
セルジュ・ホシャール、マイケル・ブロードベント、ジャンシス・ロビンソン、エリザベス・ギルバート、ミシェル・ドゥ・ブストロス、サンドロ・サーデ、カリム・サーデ、ジェームズ・パルジェ、ジョージ・サラ、ジャン=ピエール・サラ、ナジ・ブトロス、ジル・ブトロス、ロナルド・ホシャール、ガストン・ホシャール、ファウージ・イッサ、サミー・ゴスン、ラムジー・ゴスン、マイケル・カラム 他
Reels:
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