自分を再発見するメロウでディープな旅路『ソウルに帰る』
2022年アカデミー賞国際長編映画賞カンボジア代表選出作品。
私は誰なのか?私の居場所とは?他者との関係において、自分はどのような立ち位置にいるのか?
アイデンティティという普遍的なテーマを元に、カンボジア系フランス人監督ダビ・シューが挑んだのは、見た目は韓国人でも生粋のパリジェンヌである女性が自身のルーツを探るディープな旅。
Story:
韓国で生まれ、フランスで養子縁組されて育った25歳のフレディ(パク・ジミン)は、東京へ行くフライト・スケジュールがキャンセルとなり、やむなく韓国・ソウルへと降り立った。
ソウルでの宿となったホテルのコンセルジュのテナ(グカ・ハン)と何故か気が合い、街を遊び歩く二人。
フレディは、テナと彼女の友人たちに彼女を養子縁組したハモンド養子縁組センターを尋ねれば、生みの親に出会えるのでは?とアドバイスされる。
運よく養子縁組センターに父親の居所を見つけてもらい、会ってみることにするフレディ。
見知らぬ父親(オ・グァンロク)に会うためにフレディは韓国語の通訳としてテナに同行してもらい、ソウルから遠く離れたクンサン市までの二人旅に出かける。
それは心に孤独を抱えたフレディにとって、自己を再発見するための長い旅路の始まりだった。
Behind The Inside:
初めての映画出演でも監督への質問攻めでキャラクターを作り上げたパク・ジミン
パク・ジミンは、現代美術を手がける若手のプラスチック・アーティストであり、演技をするのは初体験だったという。
製作準備段階で、様々な質問と脚本内容に関して忌憚のない意見を監督にぶつけた。
特によくありがちなジェンダーロールや態度、服装に関して、監督のダヴィが無意識に作り込んできたフレディのイメージに対して意見を述べ、結果としてスクリーンの中で定着したフレディは、監督とパクの二人で話し合って作り上げたイメージとなった。
Awards:
- 第75回カンヌ国際映画祭:ある視点部門・正式出品作
- ハンプトン国際映画祭:観客賞(ベスト・ナラティブ・フィーチャー)
- アテネ国際映画祭:最優秀作品賞
- 東京フィルメックス:特別審査員賞
- アジア太平洋映画賞:新人賞・パク・ジミン、監督賞・ダヴィ・シュー
- ベルファスト映画祭:最優秀作品賞(インターナショナル部門)
- Qシネマ国際映画祭:NETPAC賞(アジアン・ネクスト・ウェーブ部門)
- ロサンゼルス映画批評家協会賞:ニュー・ジェネレーション賞・ダヴィ・シュー、パク・ジミン
『ソウルに帰る/Return to Seoul』(2022年・フランス・ドイツ・ベルギー・カンボジア・カタール・1時間59分)
監督:
ダヴィ・シュー
出演:
パク・ジミン、グカ・ハン、オ・グァンロク、キム・ソニョン 他
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