カルトな作風で知られるスペインが生んだ奇才アレックス・デ・ラ・イグレシア最新作。
深刻化する水の都ベネチアの環境汚染問題に端を発し、観光客ばかりを狙う道化の格好をした殺人鬼による連続殺人事件が頻発する。
標的にされるスペイン人観光客と、殺人鬼との死闘を描いた異色のサスペンス・ホラー。
Story:
結婚を間近に控えたスペイン人のイサ(イングリッド・ガルシア・ヨンソン)は、独身最後を楽しむために友人たちとカーニバルで賑わう季節にイタリア、ヴェネチアへとやってきた。
しかし、現地は観光客の増加による環境汚染が進み深刻な社会問題となっていた。
観光客は帰れ!とプラカードが掲げられる騒然とした中、ヴェネチア観光を満喫するイサたちだったが、カーニバルの衣装を身に纏った不気味な道化師が彼らを追ってくるのだった。
観光客への憎しみから殺人鬼と化したその謎の道化師は、イサと仲間たちを一人ずつ血祭りにあげていく。
Behind The Inside:
イグレシアによるジャッロ映画へのオマージュ
ベネチアで連続殺人事件というと、ニコラス・ローグ監督による美術修復士が連続殺人事件に巻き込まれてゆく、イギリス映画史で傑作中の傑作のミステリー作品『赤い影』(1973年)を思い出さないわけにはいかない。
本作『ベネシアフレニア』でアレックス・デ・ラ・イグレシア監督は、同じくベネチアを舞台に謎の殺人鬼に殺戮されてゆくツーリストたちを描き、イタリアのダリオ・アルジェントやマリオ・バーヴァといった名匠が作り上げたジャッロ映画へのオマージュともとれる異様な殺戮の世界を唯一無二の水の都ベネチアを舞台に作り上げている。
ジャッロとは1929年のミステリー小説に記述された言葉で、ジャッロを起源とするイタリアで定着した幻想的でエロティックな犯罪スリラーの内容を含むジャンル映画の一つ。
海外では、スリラーという言葉に置き換えられている。
血塗られたエクストリームな殺戮シーンの演出に重点的に時間をかけ、事件と事件を基点として、ストーリーが語られてゆく手法がとられる。
ジャッロ映画というジャンルは、1970年代にイタリアのエロティック・サスペンスの巨匠ダリオ・アルジェントやマリオ・バーヴァといった監督により最盛期を迎えている。
『ベネシアフレニア/Veneciafrenia』(2021年・スペイン・1時間40分)
監督:
アレックス・デ・ラ・イグレシア
出演:
イングリッド・ガルシア・ヨンソン、シルビア・アロンソ、ゴイセ・ブランコ、ニコラス・イロロ、アルバート・バング、コジモ・ファスコ、エンリコ・ロ・ヴェルソ、カテリーナ・ムリーノ、アルマンド・デ・ラッツァ、ニコ・ロメロ 他
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