短命すぎたカナダ製元祖スマートフォン、その栄枯盛衰の舞台裏『ブラックベリー』
破竹の勢いで開発・誕生し、オバマ元大統領にも熱く支持されたカナダ製元祖スマートフォン「ブラックベリー」
一旦はトップシェアを誇るが、後にiPhoneの衝撃的なデビューにより古くさいガジェットへとその地位は凋落。急速に需要は冷え込んでゆく。
流星の如く現れ、いち早く時代を先行したデバイスの驚愕の歴史、その事実を元に描いたブラック・コメディ。
Story:
カナダ、オンタリオ州ウォータールーにあるヲタクの集まりのようなユルい会社リサーチ・イン・モーション社の創設者マイク・ラザリディス(ジェイ・バルチェル)は親友のダグラス・フレギン(マット・ジョンソン)と共に革命的な”ポケットリンク”通信デバイスの開発を続けていた。
マイクとダグラスは、胡散臭い企業家のジム・バルシリー(グレン・ハワートン)に製品化の話を持ち込んだが、強欲なジムは協力する条件としてリサーチ・イン・モーション社のCEOの座と、会社の三分の一の資産を譲ることを提示し、二人はその横暴な条件を承諾する。
一夜漬けで完成させた雑な作りの試作品”ポケットリンク”をニューヨークのベル・アトランティック社(現在のベライゾン・コミュニケーションズ社))に売り込み、プレゼン前にタクシーに置き忘れるなどの失態をしつつもなんとかセールス・ピッチを終わらせた。
後に”ポケットリンク”は”ブラックベリー”として世に出ることに。
その後2003年、躍進しつつあったリサーチ・イン・モーション社は携帯情報端末(PDA)の製造・販売会を手掛けるパーム社からの敵対的買収を受けるが、これをなんとかして退けることに成功する。
だが2007年、リサーチ・イン・モーション社に一大衝撃が走る運命の時が訪れる。
アップル社のスティーブ・ジョブズが発表したタッチ・パネル式新型デバイスiPhoneの登場によって、一瞬にして最新機種ブラックベリー・ボールドは古くさいデバイスへと立場が凋落。
一時はスマートフォン市場で全米トップ・シェアを誇ったブラックベリーであったが、時代の波に飲み込まれ、坂道を転げ落ちるように急激に衰退してゆく。
Behind The Inside:
その後のリサーチ・イン・モーション社
2013年には、ブラックベリーと社名を変更したが、2020年にはスマートフォン市場からは撤退を余儀なくされ、2022年にはモバイルデバイスの特許資産を総額6億ドルで売却した。
現在のブラックベリー社の姿は、通信機器メーカーとしてソフトウェア開発に注力しており、サイバーセキュリティや自動運転分野で飛躍的に発展を遂げる企業に変貌した。
Awards:
- 第73回ベルリン国際映画祭:コンペティション部門正式出品作
- サンフランシスコ国際映画祭:スローン・サイエンス・オブ・スクリーン・アウォード・マット・ジョンソン
- ハリウッド批評家協会賞:ミッドシーズン賞・最優秀助演男優賞・グレン・ハワートン
- カルガリー・アンダーグランド映画祭:ベスト・ナラティブ・フィーチャー作品・マット・ジョンソン
『ブラックベリー/BlackBerry』(2023年・カナダ・2時間)
監督:
マット・ジョンソン
出演:
ジェイ・バルチェル、グレン・ハワートン、マット・ジョンソン、ケリー・ファン・デル・バーグ、グレゴリー・アンブローズ・コルダロン、ローラ・シレヴィッツ、マーティン・ドノヴァン、ケイリー・エルウィス、マイケル・アイアンサイド 他
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