14歳の時に運命的に出会い、最愛の妻となったプリシラから見たロックン・ロールのキングであり、アメリカの伝説、エルヴィス・プレスリーの語られざる真の姿をソフィア・コッポラがスリリングに描き出す。
Story:
兵役中のロック界のスーパースター、エルヴィス・プレスリー(ジェイコブ・エロルディ)とまだ14歳の中学生だったプリシラ(ケイリー・スピーニー)は、西ドイツで運命的に出会った。
プリシラはエルヴィスと同棲、そして出産を経験し、嫉妬やドラッグにまみれた破天荒なグレースランドでの結婚生活の後、やがて二人は離婚することになる。
自らの人生をキング・オブ・ロックンロールに捧げた一人の女性プリシラから見たエルヴィス・プレスリーの実像とは?
Behind The Inside:
父親の『地獄の黙示録』ほどの悲惨な地獄を見たわけではないが、ソフィアにとって苦労の多かった本作の製作
本作は、プリシラ・プレスリーのエルヴィスとの出会いから結婚生活を語った回想録的な自伝本「私のエルヴィス」が原作となっている。
実はこの本は『エルビス&ミー』(1988年)として、過去にTV映画として製作・放送され、この年の最も視聴率を稼いだ作品として記憶されている。
気難しく繊細なプリシラからの信頼とお墨付きも得て、2度目の映画化となった本作は撮影スタート後、間もなくして製作予算に不都合が生じ、資金がショートしてしまった。
そもそも予算の関係からか撮影は、アメリカではなく全てカナダで行われ、その期間も30日間と極めてタイトなスケジュールだったという。
しかも撮影開始直後に製作費が足りなくなることが判明し、脚本からほぼ1週間分の撮影に値するシーンをソフィアは涙をのんで全てカットしなければならなかった。
降りかかる災難はそれにとどまらず、エルヴィス・プレスリーの楽曲権利を管理する団体から楽曲使用の許可が一切降りなかったため、頭を抱えたソフィアは音楽面で違うアプローチをせざるを得なくなる。
ソフィアの映画人生で実に三度目となるが、彼女の夫でありフレンチ・ポップバンド、フェニックスのフロントマンでもあるトーマス・マーズの音楽的才能を借りてなんとか難を逃れることになる。
過去にソフィアの監督作『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』(2017年)、『オン・ザ・ロック』(2020年)の劇伴も担当してきたトーマス・マーズとフェニックスにより、コンテンポラリーな楽曲、そして映画が描かれた同時代の音楽をカバーするといった手法で切り抜け、逆に創意工夫に富む着想豊かでいかにもソフィアの作品らしいオリジナル・サウンド・トラックが生まれた。
Awards:
- 第80回ヴェネチア国際映画祭:コンペティション部門正式出品・主演女優賞・ケイリー・スピーニー
『プリシラ/Priscilla』(2023年・イタリア・アメリカ・1時間53分)
監督:
ソフィア・コッポラ
出演:
ケイリー・スピーニー、ジェイコブ・エロルディ、アリ・コーエン、ダグマーラ・ドミンスク、ティム・ポスト 他
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