誰もが一度は会いたいと願うが一度会うと二度と会いたくない男の本当の物語『トルーマン・カポーティ 真実のテープ』
アメリカが生んだ文豪の栄光と破滅を原作となった評伝の収録インタビュー、当時の映像、新たに収録した証言集による濃密な文芸ドキュメンタリー
アメリカ文学界に彗星のごとく登場し、早熟の天才は成功への階段を駆け上がるべく、見知ったこと総てを作品として吸収していった。
ここから世界が始まる: トルーマン・カポーティ初期短篇集
カポーティが主催した20世紀最高と謳われる伝説のパーティー「黒と白の舞踏会」や、彼が親交を深めた社交界の美しく知性にあふれた女性たち(通称「白鳥(スワン)」)など、カポーティは戦後アメリカのファッション、アート、カルチャーシーンとも深いつながりがあった。
ティファニーで朝食を (新潮文庫)
社交界で知り合った様々な女性たちをモデルにして作り上げたのが『ティファニーで朝食を』の主人公ホーリー・ゴライトリー(映画化では、オードリー・ヘプバーンが好演)
ニューヨークの流行作家となったトルーマン・カポーティは長編小説『冷血』の大成功により、戦後アメリカのセレブリティの一人となった。
カポーティ自らが死刑囚と面会し、徹底的な取材を繰り返すことによってあぶりだされた事実を元に事件を再構成する小説手法で、取材をした本人は作品には一切登場しない、いわゆる“ノン・フィクション”物というジャンルを作り上げた最初の歴史的作品であり、その作者がトルーマン・カポーティである。
冷血 (新潮文庫)
長い間、期待されていたハイ・ソサエティの内幕を描いた新作『叶えられた祈り』の一部が『エスクァイア』誌に掲載された途端、激しい論争の的となり、カポーティは社交界から追い出されてしまう。
叶えられた祈り (新潮文庫)
『叶えられた祈り』の作品完成をみないまま、薬物とアルコールに溺れていったカポーティは失意の内に60歳目前で他界する。
映画はカポーティの波乱に満ちた人生と未完の大作『叶えられた祈り』に残された謎を追ってゆく。
本作の原作は、ジャーナリストのジョージ・プリンプトンによる『トルーマン・カポーティ』(1997年)であり、カポーティへの取材テープと当時の映像、また関係者からの証言集により、構成されている。
トルーマン・カポーティ
『トルーマン・カポーティ 真実のテープ』(2019年・アメリカ・イギリス・1時間38分)
監督:
イーブス・バーノー
出演:
トルーマン・カポーティ、ケイト・ハリントン、ノーマン・メイラー、ジェイ・マキナニー、アンドレ・レオン・タリ―
©2019, Hatch House Media Ltd.
2020年11月6日 Bunkamura ル・シネマ 他 全国順次公開‼
カポーティを知るための映画3選
冷血 (字幕版)
アカデミー賞4部門にノミネートされたリチャード・ブルックスによる映画化作品。劇中、登場するリポーターは原作にはないキャラクター。
タイトルの『冷血』は、無慈悲な殺人事件へ向けたという意味と死刑囚とは友人のようにふるまいながら、作品を発表するために早く死刑執行して欲しいと願う相反するカポーティの複雑な思いを反映しているとも云われている。
ティファニーで朝食を (字幕版)
映画の冒頭、ホーリー(オードリー・ヘプバーン)がティファニーのショーウィンドウの前で朝食をとるシーンは原作には存在しない。宝飾店ティファニーにはレストランはないため、タイトルに寄せたシーンをオマケで撮影している。
主人公のホーリー・ゴライトリーは、カポーティが実際に知る人々を部分部分取って作り上げられたとされているが、実際のところカポーティ本人のことだったのかもしれないとも云われている。
カポーティ コレクターズ・エディション [DVD]
本作『カポーティ』でアカデミー賞主演男優賞を受賞したフィリップ・シーモア・ホフマンの名演が光る。死刑囚との最後の面会で感極まって涙を流すシーンやその他、いくつかのシーンはホフマンによるアドリブ演技のテイクが使用されている。