
全ては自由のために!『ジョン・ウィック コンセクエンス』
粛清の包囲網から奇跡的に生還した殺し屋ジョン・ウィック。
ジョンは裏組織ハイ・テーブルへの報復を企てるが、新たに組織を牛耳ろうとする冷酷なグラモン侯爵の登場で再び潮目が変わる。
またしても追われる身となったジョンが真の自由を得るためには、古式銃による一対一の決闘しかない。
相手は、強敵グラモン侯爵。
だがジョンの首に天文学的数字の賞金がかけられ、数多の殺し屋が襲ってくるのだった・・・。

Story:
組織の掟を破った裏切り者として、粛清の全包囲一斉攻撃を受けつつも奇跡的に生還した伝説の殺し屋ジョン・ウィック(キアヌ・リーブス)。
その後数ヶ月の間、地下に隠れながら地下犯罪組織の王バワリーキング(ローレンス・フィッシュバーン)と共にハイ・テーブル(主賓連合)への報復の準備を進めていた。
裏社会で勢力拡大しつつある冷酷なヴィンセント・グラモン侯爵(ビル・スカルスガルド)は、これまで幾度となくジョンを守ってきた聖域、ニューヨークのコンティネンタル・ホテルを爆破し、心優しきコンセルジュのシャロン(ランス・レディック)の命を奪う。
パリへと渡ったグラモン侯爵は、ジョンの旧知の戦友である凄腕の暗殺者ケイン(ドニー・イェン)にケインの娘の命と引き換えにジョン・ウィック追討を迫るのだった。
大阪コンティネンタル・ホテルへと逃げ込んだジョンは、旧友であり支配人のコウジ・シマヅ(真田 広之)とホテルのコンセルジュである娘のアキラ・シマヅ(リナ・サワヤマ)に協力を仰ぐが、ケインと武装集団、バウンティ・ハンターのトラッカー(シャミール・アンダーソン)も絡んだ電撃的な奇襲に3人は巻き込まれてしまう。
その後、ジョンはニューヨークへと舞い戻り、コンティネンタル・ホテルを焼失し激しく復讐の念にかられるウィンストン(イアン・マクシェーン)と再会。
ウィンストンはジョンに、裏組織から逃れ晴れて自由の身となるためには、古来からハイ・テーブルに伝わる唯一の方法、古式銃による古典的な決闘しかないと告げるのだった。
だが、一騎打ちを相手に申し込むためには、一つだけ重要な手続きが必要だった。
その権利を得るためにベルリンへと飛び危険なヤマを踏むジョン。
ウィンストンのコンティネンタル・ホテル再建の夢と自由の身になることを賭けて、グラモン侯爵との決闘に望むため、パリに降り立つジョン。
バワリーキングもジョンの戦闘服ブラック・スーツを手にパリに駆けつけるが、姑息なグラモン侯爵は一騎打ちの前にジョンを始末しようとジョンの首に30億円以上もの賞金を賭ける。
そして決闘場所である聖なる心臓を意味するサクレ・クール寺院へ朝日が昇るまでに到着するべく突き進むジョンに数えきれないほど無数の殺し屋軍団が襲いかかる。
賞金を40億円に釣り上げたトラッカーことMr.ノーバディ、そしてケインも再び追撃し、まるで地獄絵図のような戦闘の中、222段の石段を一心不乱に戦いながら登り続けるジョンに刻一刻と運命のタイム・リミットは迫る。
Behind The Inside:
監督チャド・スタエルスキは、かなりのシネフィルである
本作もまたジョンが向かう先はニューヨークを起点に、モロッコ、ベルリン、パリとロケーションのスケールが世界大陸規模である。
モロッコの砂漠でのエルダー(ジョルジュ・ジョルジョー)とジョンの遭遇シーンは、名作『アラビアのロレンス』(1962年)で使われたロケーションと同じ岩山で撮影されている。
撮影カット構成もかなり『アラビアのロレンス』に寄せたシーン作りとなっており、チャドがかなりの映画ヲタであることを露呈している。
パリでジョンがバワリーキングとウィンストンに再会する地下鉄メトロ駅のシーンは、様々な映画に度々、登場するポルト・デ・リラ駅の一角にある現在は使われていない撮影専用のプラットフォームである。
チャドが重度のシネフィルであることの極め付けは、本作の後半を飾る大戦闘シーンの舞台であるサクレ・クール寺院周辺地域を選定した理由である。
まずはじめにチャドは、ジャン=ピエール・ジュネの映画『アメリ』(2001年)の大ファンで、パリでのロケーション・スカウトも是非もので『アメリ』で使われたモンマルトル界隈のロケ地巡りをしたいとのことでアメリが青年ニノとデートするパリが一望できる風光明媚なサクレ・クール寺院へ行き、そこで撮ることにしたのだそう。
ただジョンとケインが敵を薙ぎ倒しながら突き進む血みどろの花道とも言える石段を登りながらの殺戮シーンに見合った急峻で長い階段は寺院にはなく、寺院の周囲を散策したところ、気が遠くなるような段数の石の階段をチャドは見つけ、同行したスタントチームも皆、一瞥でここしかない!と阿吽の息で決定したのだという。
『アメリ』の監督ジャン=ピエール・ジュネがほくそ笑みそうなエピソードであるし、スタントマン目線でアクション・シーンの完成形の映像を想像しながらロケーション選定しているという点でチャド・スタエルスキの映画撮影チームは非常に興味深い。
他のアクション・エンタメ作品とは一線を画す方程式の秘密がそこにある。
Under The Film:
不死身のジョン・ウィックであるためのキアヌの心意気とリアリティ
キアヌ・リーブスは、ほぼ全てのアクション・シーンを自ら演じるため、撮影に入る12週間前からマーシャル・アーツとスタント・ドライビングの訓練をし続けたという。
火器も本作では、焼夷弾が装填されたドラゴン・ブレス・ショットガンを使って至近距離から火花を散らして敵を倒す戦い方をチャドがトップダウン・シューティング・ゲーム「Hong Kong Massacre」から見つけてきて、これを採用した。
派手な火花が飛び、相手を威圧する効果はあるが殺傷力が極めて低いため、接近戦で用いることで初期の『ジョン・ウィック』シリーズのようにガンファイトとカンフーをミックスしたガンフー・スタイルがリジェネレイトされることとなった。
ちなみにキアヌにとって、ドラゴン・ブレス・ショットガンを映画の中で使用するのは2度目となり、
『コンスタンティン』(2005年)でキアヌ演じるコンスタンティンが使用しているホーリー・ショットガンもまたドラゴン・ブレス弾の一種である。
222段の石段を前にしてガンフー・アクションをやることとなったキアヌの心中はどんな気持ちだったのであろうか?
「チャドの奴、またか⁉︎ 俺に何やらせんだ⁉︎」と思ったのかもしれない。
これら壮絶アクションの99%をキアヌ本人が満身創痍で演じ切ったという。
アクション・シーンの残りの1%は、階段落ちのシーンで、このシーンだけは、あまりにも危険なため、スタントダブルに任せたという。
『ジョン・ウィック コンセクエンス/John Wick: Chapter 4』(2023年・アメリカ・ドイツ・2時間49分)
監督:
チャド・スタエルスキ
出演:
キアヌ・リーブス、ローレンス・フィッシュバーン、ビル・スカルスガルド、ドニー・イェン、真田 広之、スコット・アドキンス、ランス・レディック、イアン・マクシェーン、リナ・サワヤマ、クランシー・ブラウン、ジョルジュ・ジョルジョー、マルコ・サロール、シャミール・アンダーソン 他
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