運命の赤い糸の行方『パスト・ライブス / 再会』
韓国系カナダ人の劇作家セリーヌ・ソンの鮮烈な長編映画監督デビュー作。
サンダンスでプレミア上映され、ベルリンで批評家たちに大絶賛された今年一番のロマンス映画。
その軽妙なダイアローグのやり取りの中に、胸が締め付けられるエモーションがある劇作家ソンの磨き上げられたクラフトワークは世界中の批評家たちを唸らせた。
幼少時に心ときめいた互いの思いは、大切にしたいただの想い出なのだろうか、それとも運命の赤い糸で結ばれた宿命の愛なのか?
Story:
ノラ(グレタ・リー)とへ・ソン(ユ・テオ)は、強い絆で結びついた幼馴染の小学生。
しかし、ノラが家族と共に韓国を離れアメリカへと移住したことをきっかけにへ・ソンとは音信不通になっていた。
それから12年後、ニューヨークで演劇の作家コースを受講していたノラは、へ・ソンがSNSで彼女を探していることを知る。
やがて二人はオンラインで繋がり、頻繁に会話するようになる。
だが、その後また数年が経過すると二人の生活は変わっていた。
そして20年が経過したある日、ニューヨークで再会することになった二人。
強い運命を感じる二人だったが、それぞれの人生設計のために選んで進んできた道のりと現在、育んでいる愛があった。
再会したことの意味と今の生活を天秤にかけながら、考え続ける二人。
それは宿命の愛なのか?
彼らが選択した道は?
Behind The Inside:
リリース当初は批評家筋からの絶大な人気にも関わらず無冠の傑作
本作はA24による製作、映画監督の父を持ち、12歳の時に家族と共にカナダへ移住した原体験を持つ韓国系カナダ人の劇作家セリーヌ・ソンの鮮烈な長編映画監督デビュー作である。
その軽快な会話劇の中に胸を打つストーリーを生み出す演出手法は、ウディ・アレン、リチャード・リンクレーター、ノア・バームバックといった第一線の映画監督の手法を思い起こさせる。
思わず共感したくなるエレガントな再会のロマンスは、サンダンス、ベルリンで大絶賛され、多くの批評家からの熱い声援が集まったが、作品リリース後、初動の賞レースは、全くの無冠に終わった。
ライバル作品がひしめいていたということもあるであろうし、ベルリンではクリステン・スチュワートをはじめとする審査員のお眼鏡には適わなかったということであろうか。
映画祭で何らかの賞に引っ掛かるためには、その映画が訴えかけていること、作品内容の質はもちろんのこと、世界で起きたことがその地へも影響し、神風でも吹かない限り、絶対的な決定権は審査員なのだ。
審査員の人選とタイミングが凡てということである。
Awards:
- ボストン映画批評家協会賞:新人監督賞・セリーヌ・ソン
- シカゴ映画批評家協会賞:新人監督賞・セリーヌ・ソン
- ロサンゼルス映画批評家協会賞:新世代賞・セリーヌ・ソン
- ナショナル・ボード・オブ・レビュー:新人監督賞・セリーヌ・ソン、トップ・フィルムズ選出
- 全米映画批評家協会賞:作品賞
- ニューヨーク映画批評家協会賞:作品賞
- 第96回アカデミー賞ノミネート:作品賞、脚本賞・セリーヌ・ソン
- サンダンス映画祭・プレミア上映
- 第73回ベルリン国際映画祭コンペティション部門正式出品作
『パスト・ライブス / 再会 /Past Lives』(2023年・アメリカ・韓国・1時間46分)
監督:
セリーヌ・ソン
出演:
グレタ・リー、ユ・テオ、ジョン・マガロ、ムン・スンア 他
© 2023 A24 DISTRIBUTION LLC.ALL RIGHTS RESERVED.