ホアキン・フェニックス プロデュース!全ての生きとし生けるものたちへ『グンダ GUNDA』
とある農場で生まれた子豚達とその母豚、そして農場で生きるものたちを静かに見つめたドキュメンタリー
Story:
この物語には、作られた脚本というものは存在しない。
ただあるがまま、とある農場で母豚が子豚たちを生み、育てる姿を静かに、虚飾なく映し出す。
“GUNDA”というタイトルは、ノルウェーのある農場に実際にいる雌豚の名前から付けられた。
彼女は愛情深い母親であると同時に、愛らしくもやんちゃな子どもたちを持て余しているようにも見える母親でもある。
カメラは、そんなGUNDAの愛情深い姿も、時に人間の感覚からすると残酷とも思える姿をも余すことなく映し出してゆく。
ただあるがままの姿を映し出していながら、GUNDAたちの個性は明確に伝わってくる。
モノクロームで映し出される世界には、人工の音楽や効果音は一切ない。
ただ、自然が紡ぎ出す音と、そこで暮らす生き物たちの生を示す音だけが世界を形作ってゆく。
GUNDA達とともに暮らす牛達、片足の鶏、草木が風とともに奏でる音楽。
世界はただ静かに、全てに平等に時は進んでゆく。
そして、時とともに成長した子豚たちを待ち受ける未来は、言わずとも誰もが知っている。
だが、この物語ではそれに対してあからさまな表現や主張はされない。
いわゆるプロパガンダ映画とは一線を画す作りとなっているが、それだけに観る側はより深く、能動的に考えずにはいられないのではないだろうか。
人間と彼らとは何が違うのだろうか。
コンパニオンアニマルと彼らとは何が違うのだろうか。
人類全てが菜食主義者になるべきだとか、そうゆうことを主張しているのではない。
ただ、思考停止したままではなく、本当はわかっているはずのこと、見て見ぬふりをしていることを考える機会になれば。
そういった想いを感じる、静かなる問いかけを感じるドキュメンタリーである。
Behind The Inside:
試作を見たホアキン・フェニックスが即座に出資を決めたドキュメンタリー
菜食主義で知られるホアキン・フェニックスが試作を観て「こんな映画を観たことがない!」と惚れ込み、監督に出資する旨を伝え、映画祭での公開も決まった本作。
ホアキンは厳格なヴィーガンとして知られており、妻のルーニー・マーラも同じくヴィーガンであり、ハリウッドきってのグリーン世代を代表するカップルとしても知られている。
映画は何かの宣伝のためではなく、芸術のためにつくりたい
コサコフスキー監督自身もヴィーガンだが、「GUNDAたちをより良く見せようとしたり、擬人化したり、また彼らに感情移入したりすることなく、そしてヴィーガンのプロパガンダ的なメッセージを込めることなく映画をつくりたかった」と述べている。
もちろん、プロパガンダのために場面を盛り上げるような音楽や効果音を使って映画を作ることは簡単だ。
だが、自分は政治家ではなく、アーティストであり、周りにいる同意見の人達だけではなく、様々な人々とコミュニケーションをとる必要がある、との理由からだそうだ。
Awards:
- ベルリン国際映画祭:エンカウンターズ部門出品
- ダブリン国際映画祭:撮影賞
- ストックホルム国際映画祭:ベストドキュメンタリー賞
『グンダ/GUNDA(原題)』(2020年・ノルウェー・アメリカ・1時間33分)
監督:
ヴィクトル・コサコフスキー
出演:
グンダ 他
© 2020 Sant & Usant Productions. All rights reserved.
映画『GUNDA/グンダ』オフィシャルサイト
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