ウォン・カーウァイの映画史を振り返る作品『1ミリの10分の一(原題)』
香港が生んだ世界的な巨匠ウォン・カーウァイ監督の活動30年を記念し、彼が生み出してきた映画群を再編集する作品が現在製作中!本編からカットされた秘蔵映像もふんだんに盛り込み、監督本人によるナレーションで自らの映画史を振り返る短編作品『1ミリの10分の一/ONE-TENTH OF A MILLIMETER APART(原題)』。
過去の代表作が逆再生されてゆく予告編を観ていると、ウォン・カーウァイは、無意識に時の移ろいを描いてきたのではないのだろうか?と思われる。
上海出身の彼が英国統治時代の香港で成長し、映画監督として抜きん出た存在となっていく中で香港返還があり、その後の雨傘運動からの現在の香港と中国があった。
彼自身は映画監督を始めた『いますぐ抱きしめたい』(1988年)以降、この30年で中国圏からさらにアジアをも遥かに越えて欧米での世界的な名声を得ており、過去30年の作品を振り返ると時代に纏わる断片が映画のそこかしこに転がっている。
おそらく、それについての明言は避けているのだろうが、本作を観るとどこかセンチメンタルな気持ちになるのだろうと予想している。
収録作品は、『楽園の瑕』(1994年)、『恋する惑星』(1994年)、『天使の涙』(1995年)、『ブエノスアイレス』(1997年)、『花様年華』(2000年)、『2046』(2004年)
これらウォン・カーウァイの代表作の中から微妙な理由で残念ながら本編から落とされたカットなどを、カーウァイ本人の解説で説明する内容となっている。
『ブエノスアイレス』のメイキング・ドキュメンタリー、『ブエノスアイレス 摂氏零度』(1999年)もファンのみならず衆目を集める驚くべき内容が詰まったコンテンツだっただけに、タイトルの付け方が村上春樹を想起させる、いかにもウォン・カーウァイらしい本作『1ミリの10分の一/ONE-TENTH OF A MILLIMETER APART(原題)』の公開を期待して待ちたいと思う。
ウォン・カーウァイのビジュアル・スタイルを形作る上でなくてはならない二人の存在があった。
一人は、美術、衣装、編集の3つを担当してきたウィリアム・チャン。
そして、このウォン・カーウァイと写っているオーストラリア出身の撮影クリストファー・ドイル(画像左)だ。/ Jet Tone オフィシャル・インスタグラムより
VOIDセレクト: ウォン・カーウァイを知る6本
楽園の瑕 終極版 (字幕版)
恋する惑星 (字幕版)
天使の涙 (字幕版)
ブエノスアイレス (字幕版)
ブエノスアイレス 摂氏零度(字幕版)
花様年華 (字幕版)
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