シェイクスピアの4大悲劇一つを大胆にモノクロ映像化!『マクベス』
主演のマクベスをデンゼル・ワシントンが熱演し、名匠ジョエル・コーエン監督による脚色・監督×フランシス・マクドーマンド(マクベス夫人役)の夫婦共作というオスカー受賞者3名による才能溢れるアンサンブルによりシェイクスピアの4大悲劇の一つを息を呑むほどスタイリッシュなモノクロ作品として昇華。
Story:
スコットランドの将軍マクベス(デンゼル・ワシントン)は、勇猛果敢だが、小心者の一面もある男。
マクベスは森の中で3人の魔女に出会い、彼が王になるという予言を告げられる。
野心にかられたマクベスはそのことをマクベス夫人(フランシス・マクドーマンド)に伝えると彼女は王位を奪いましょうと夫をそそのかし、主君ダンカン王(ブレンダン・グリーソン)を夫に暗殺させてしまう。
野望を叶えて王になったマクベスであったが、地位を維持することに終始するあまり、錯乱し、暴政を重ね、次々と犯罪に手を染めてゆく・・・。
そして、マクベスを恨みに思う貴族や王子から命を狙われることとなり・・・。
Behind The Inside:
たった36日間で全てのシーンをL.A.のスタジオで撮影したモノクロ作品
本作は、コロナ禍との兼ね合いもあったのかもしれないが、コーエン兄弟の映画としては、例外的に早撮りした作品で撮影期間はたったの36日間であった。
シェイクスピアの4大悲劇の一遍をジョエル・コーエンが脚色し映画化したものとなるが、リアリティから完全に逸脱した演出をするという意図の元。ロサンゼルスの撮影スタジオのサウンド・ステージにセットを組み、カメラがスタジオの外に出ることは一度もなく、非常に詩的でシュールリアリスティックな物語としてストーリーを完結させている。
ジャン=ピエール・ジュネの『アメリ』や多くのティム・バートン作品、近年では、ゲイリー・オールドマンにオスカー主演男優賞をもたらした『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』、またコーエン兄弟とも『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』といった名作を担当している撮影のブリュノ・デルボネルによる往年の名作モノクロ映画に匹敵するかのようなカミソリのような冴えわたる映像美が堪能できる。
実はデンゼル・ワシントンは、シェイクスピア劇の常連俳優
映画俳優という印象の強いデンゼル・ワシントンであるが、実はシェイクスピア劇とは縁が深い。古くは、戯曲「空騒ぎ」を映画化したケネス・ブラナー監督・主演作『から騒ぎ』(1993年)に出演し、近年では、「コリオレイナス」、「リチャード三世」、「ジュリアス・シーザー」といった舞台劇に熱心に出演している舞台俳優でもある。
Must Point:
ジョエル・コーエンがソロで監督する記念すべき初めての映画
今まではコーエン兄弟名義の二人三脚の映画作りをしてきた。
兄のイーサンが表向きの監督役で弟のジョエルが監督としてクレジットされるようになったのは2004年からであった。
本作で初めて、弟のジョエルが脚色して、ソロで監督をするという初めての映画作りとなった。
しかもプライベートでは妻である名女優フランシス・マクドーマンドとは、これで9度目の共作となる。
Awards:
- AFI アワード:今年の映画賞
- ナショナル・ボード・オブ・レビュー:脚色賞・イーサン・コーエン、最優秀撮影賞・ブリュノ・デルボネル、トップ・フィルムズ選出
- ニューヨーク映画批評家協会賞:最優秀助演女優賞・キャサリン・ハンター
- 女性映画批評家協会賞:ベスト・アンサンブル(女性部門)・キャサリン・ハンター
『マクベス/The Tragedy of Macbeth(原題)』(2021年・アメリカ・1時間45分)
監督:
ジョエル・コーエン
出演:
デンゼル・ワシントン、フランシス・マクドーマンド、コーリー・ホーキンズ、ブレンダン・グリーソン、ハリー・メリング、キャサリン・ハンター 他
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