
陰謀と闘った孤高の歌姫『ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ』
人種差別を糾弾する曲「奇妙な果実」を歌い続けたことでアメリカ政府の陰謀に巻き込まれ、44歳の若さで死去した伝説的なジャズ・シンガー、ビリー・ホリデイの衝撃的な人生、そのすべて。

Story:
1940年代のアメリカ、人種差別の撤廃を求めて人々が立ち上がった公民権運動の黎明期。
アメリカ合衆国政府は反乱の芽を摘むため、FBIを使って国民への監視を強化していた。
黒人差別の悲惨さを歌詞に盛り込んだ「奇妙な果実」が大ヒットし、絶大な人気を誇った黒人ジャズシンガー、ビリー・ホリデイ(アンドラ・デイ)は、政府から公民権運動を扇動している危険人物としてマークされてしまう。
スターダムにのし上がったビリーであったが、その裏で恋人からの暴力に苦しみ、自ら酒や麻薬に溺れていった・・・。
麻薬の所持、使用を法律で禁じ、厳罰化するキャンペーンに力を注いでいた連邦麻薬局の長官ハリー・J・アスリンガー(ギャレット・ヘドランド)は、ビリーに目をつけ、黒人歌手の麻薬中毒を喧伝することで人々の差別意識を助長し、自らの権力欲を満たそうとしていた。
そこでおとり捜査官ジミー・フレッチャー(トレヴァンテ・ローズ)をビリーの元へ送り込み、諜報活動をさせた後、ビリーはヘロイン使用の罪で投獄されてしまう。
一年の刑期を終えたビリーは、再び歌手活動を再開し、ステージに立つこととなるのだが、アメリカ政府の更なる追い打ちが待ち構えていたのだった・・・。
Behind The Inside:
ビリー・ホリディという幸運の女神がもたらしたもの
かつて『ビリー・ホリデイ物語 奇妙な果実』(1972年)でビリー・ホリデイを演じたダイアナ・ロスは、 アカデミー賞主演女優賞ノミネート、ゴールデングローブ賞主演女優賞を受賞しており、今回、ビリーを演じたアンドラ・デイもまたアカデミー賞主演女優賞ノミネート、ゴールデングローブ賞主演女優賞を受賞するというビリー・ホリデイが結んだ幸運といえる。
しかも、ダイアナ・ロスもアンドラ・デイの二人ともにスクリーン・デビュー作品であった。
さらに第93回アカデミー賞主演女優賞には、『マ・レイニーのブラックボトム』(2020)でやはり希代の実力派女性シンガーとして熱演していた黒人女優ヴィオラ・デイヴィスもノミネートされていた。
主演女優賞の中で2人の黒人女優がライバルとなるというアカデミー賞の長い歴史の中で過去に一度だけ同じことが起こった非常に珍しい主演女優賞レース展開となった。
Awards:
- ゴールデン・グロ―ブ賞:主演女優賞・アンドラ・デイ
- 第93回アカデミー賞:主演女優賞(ノミネート)・アンドラ・デイ
- AARP ムービーズ・フォー・グロウンナップス・アワード:作品賞
- アフリカン・アメリカン映画批評家協会:主演女優賞・アンドラ・デイ
- ブラック・リール・アワード:新人女優賞・アンドラ・デイ
- パーム・スプリングス国際映画祭:新人女優賞・アンドラ・デイ
- リ・フレーム:作品賞(卓越した語り口の物語に与えられる賞)
- ザ・ウェビー・アワード:主演女優賞・アンドラ・デイ
- 女性映画批評家協会賞:カレン・モーリー賞
『ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ/The United States vs. Billie Holiday』(2021年・アメリカ・2時間6分)
監督:
リー・ダニエルズ
出演:
アンドラ・デイ、トレヴァンテ・ローズ、ギャレット・ヘドランド、ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ、ミス・ローレンス・ワシントン、ロブ・モーガン、ナターシャ・リオン、トーン・ベル、レスリー・ジョーダン 他
© 2021 BILLIE HOLIDAY FILMS, LLC.