
全面戦争へと発展する市民暴動の行方は?クライム・サスペンス『アテナ/Athena(原題)』
一人の少年の死がきっかけとなり、住民と警察との全面戦争へ発展してゆく・・・ 要塞化した街で戦闘を指揮する殺された少年の兄弟と騒乱を鎮める立場の警察官の兄、憎悪をぶつける住民たち、復讐、不満、悪意、守ること、正義。様々な思いが錯綜し、決して引き返すことができない沸点までエスカレートしてゆく

Story:
原因も理由も分からず命を落とした少年の死から数時間後、不穏な空気に包まれるコミュニティ・タウン、アテナ。
殺された弟への復讐のため、憎悪に燃え上がる兄弟カリム(サミ・スリマン)とモクター(オウアッシーニ・エンバレック)。
街の騒乱ムードを沈静化させるため、最前線に出動する警察官アベル(ダリ・ベンサラ)は、実は殺された少年の兄であった。
歯止めが効かなくなってゆく暴徒を指揮するカリムたちとの間で兄アベルの心は引き裂かれてゆく。
双方の緊張が高まるにつれ、全面包囲されたアテナは孤立、要塞化し、引き返すことなどできない全面戦争へと突き進んでゆくのだった・・・。
Behind The Inside:
骨太な作風は、父親コスタ=ガヴラス監督譲り
ユダヤ人虐殺の戦争犯罪を描いた法廷ドラマ『ミュージックボックス』(1989年)やチリでの軍事クーデター中に起きた失踪事件を映画化した『ミッシング』(1982年)など、絶えず骨太なテーマで映画を撮り続けてきたアテネ出身の映画監督コスタ=ガヴラス監督を父に持つロマン・ガヴラス監督。
血は争えないと感じさせるその映画観は、まるで香港の雨傘運動やブラック・ライヴズ・マター 等、様々な市民運動、果ては国内内戦までも想起させる現代社会に問題提示を投げかける力作を完成させた。
Awards:
- 第79回ヴェネチア国際映画祭:ヤング・シネマ賞、ユニセフ賞・ロマン・ガヴラス
『アテナ/Athena』(2022年・フランス・1時間39分)
監督:
ロマン・ガヴラス
出演:
ダリ・ベンサラ、サミ・スリマン、アンソニー・バホン、オウアッシーニ・エンバレック、アレクシス・マネンティ、カリム・ラズミィ 他
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