現代アートに情熱を注ぎたくても集中できない女性のユーモラスな日々『ショーイング・アップ』
アメリカン・インディーズ・シネマ・シーンの象徴的存在である映像作家、ケリー・ライカートによる最新作は、実在のカナダの現代アーティスト、エミリー・カーをモデルにした物語。
ミシェル・ウィリアムズが演じる現代アーティスト、リジーはもっと作家活動に時間を割きたいのに、たわいも無い出来事で流されてしまう日々を送っていた。
そんな彼女の生活を通して、アート、仕事、家族の問題、そして友情を心温まるタッチで描いた好編。
Story:
才能ある現代アーティストのリジー(ミシェル・ウィリアムズ)は彼女の母校であり、母が教職に就くオレゴン・カレッジ・オブ・アート・アンド・クラフトのアシスタント・アート・アドミニストレーターとして働いている。
リジーは借りている部屋の大家でライバル・アーティストでもあるジョー(ホン・チャウ)の予測不能な行動に日々、振り回され続けている。
たわいもない日々の出来事で小競り合いをしながら絶えず衝突を繰り返している彼女たちだったが、奇妙なことに次第に離れ難い存在となってゆく。
そんな中、作品展示会のための新作を粛々と制作中のリジー。
彼女の家族も様々な問題を抱えており、どう見ても詐欺師のようにしか見えない見ず知らずのヒッピーを気軽に家に泊めてしまう信じられない大らかさを持つ父親や、久しぶりに会った弟ショーン(ジョン・マガロ)が母に「この子は天才よ」と言われながら情緒不安定の人にしか見えないことなど心配で仕方がない。
そして、ある日突然、謎の事故で釜の中の作品が火事で焼失してしまう・・・。
待望であったはずのリジーの新作展示会の前には、暗雲しか立ち込めていなかった。
Behind The Inside:
役柄のために実際に彫刻を学んだミシェル・ウィリアムズ
監督のケリー・ライカートの当初の映画化企画は、カナダの画家、エミリー・カーが10年間の借家の大家生活をしていた間、大家としての生活が想像以上に多忙を極めたため、思ったように絵画を描く時間が取れなかったというエピソードが元ネタであった。
それを主人公の現代アーティストのリジーの軸足を変え、厄介な大家役を別に立て、家族の問題も織り混ぜ、本作のようなウィットに富んだユーモラスなストーリー仕立てとした。
リジーが創り出す作品は、すべてオレゴン州ポートランド在住の現代アーティスト、シンシア・ラーティの作品である。
元々、ケリーは、シンシア・ラーティの大ファンであった。
ケリーがシンシアに映画製作の相談をしたところ、実はシンシアはアートから引退寸前であった。
そして、シンシアがミシェル・ウィリアムズに彫刻を教え、シンシアも本作のために新作を創り続けたところ、工房は足の踏み場もないほどにシンシアの新作の彫刻作品で溢れかえったという。
Awards:
- 第75回カンヌ国際映画祭:コンペティション部門正式出品作
『ショーイング・アップ/Showing Up』(2022年・アメリカ・1時間47分)
監督:
ケリー・ライカート
出演:
ミシェル・ウィリアムズ、ホン・チャウ、ジャド・ハーシュ、アマンダ・プラマー、ジョン・マガロ、アンドレ・3000、テオ・タプリッツ、ローレン・ラキス、サム・カマーマン、テッド・ルーニー、ユードーラ・ピーターソン、マリアン・プランケット、ヘザー・ローレス、イザベル・マー 他
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