平和だったはずの村で起きていた女性たちへのレイプ事件は、実は村の男性たちによるものだった!
事実を知った女性たちは、男性たちが留守の間に今後の相談をするため屋根裏部屋に集まるのだが、話し合いは多岐に渡ってゆく・・・。
ボリビアで実際に起きたシリアル・レイプ事件を題材に、舞台を架空の場所に置き換え、性被害に遭った女性たちの真剣な話し合いを描いてゆく。
Story:
2010年、人里離れた土地で自給自足で暮らす架空のコミュニティ。
その村では非暴力を謳う平和主義のメノー派のキリスト教徒たちが生活している。
だが、村では度々、女性たちが何者かにレイプされる事件が起きていた。
それは悪魔の仕業、作り話などと男性たちに言われ続けてきたが、男たちが女性たちに薬を盛り、意識を失っている間にレイプしていたことが明るみにでる。
男性たちが街へ出かけている二日間の間、女性たちは話し合いのために屋根裏部屋に集合する。
今後の対応策を練るが、議論は信仰や赦しの問題にまで広がってゆくのだった。
この村の平和、そして、コミュニティの未来はどうなってゆくのか?
Behind The Inside:
絶望に埋没したかのような暗澹たる世界観
原作は南米のボリビアで実際に起きたシリアル・レイプ事件をベースに執筆されたミリアム・トーズの2018年発表の同名小説。
実際の事件はボリビアであったが、映画化された本作では場所は曖昧にされている。
登場人物たちは皆、イギリス訛りが入ったアメリカ英語であるカナダ英語を話すが、村の様子は昔のアメリカ南部の雰囲気そのものである。
2010年であるのに古色蒼然としたその設定は、ピーター・ウィアー監督、ハリソン・フォード主演のアーミッシュの人々を巻き込むサスペンス『刑事ジョン・ブック 目撃者』(1985年)やM・ナイト・シャマランのゲーテッド・コミュニティを描いた『ヴィレッジ』(2004年)といった作品世界を思い起こさせる。
本作ではシリアル・レイプ事件とそれに立ち向かう女性たちという衝撃的なプロットを動かすための大事な背景として機能させている。
また監督のサラ・ポーリーは、本作の絶望に埋没したかのような暗澹たる世界観を表現すべく、カラーグレーディングに依って、画面を限りなくモノクロに近い褪せた色合いの世界を作り上げたという。
Under The Film:
サラ・ポーリーにとって実に10年ぶりの監督最新作
4歳の時から子役として俳優生活を送ってきたカナダ出身の女優であり、映画監督のサラ・ポーリー。
アトム・エゴヤン監督の名作『スウィート ヒアアフター』でのバス転落事故で後遺症に悩む車椅子の少女役で注目された。
その後も女優として、主にインディーズ作品を活動の場としてきた。
余命2ヶ月の宣告を受けた女性のある行動を描く『死ぬまでにしたい10のこと』(2003年)は、日本でもよく知られたヒット作である。
2006年に『アウェイ・フロム・ハー君を想う』で監督デビューを果たしたが、2010年以降、女優活動が立ち消えたのは、サラ自身、16歳の時に性的暴行を受けた経験があり、ハリウッドでの女性の扱いには問題があるとしている。
本作は、サラ自身もまた『ウーマン・トーキング』の女性たちと同様、性被害に遭った者の一人なのだという強いメッセージを内包しているのだ。
Awards:
- 第95回アカデミー賞:脚色賞・サラ・ポーリー
- 全米映画俳優組合賞・ノミネート:全米映画俳優組合賞キャスト賞
- アメリカン・フィルム・インスティチュート賞:今年の映画
- ボストン映画批評家協会賞:最優秀アンサンブル・キャスト賞
- シカゴ映画批評家協会賞:脚色賞・サラ・ポーリー、ミリアム・トーズ
- クリティクス・チョイス・アワード:脚色賞・サラ・ポーリー
- ナショナル・ボード・オブ・レビュー:今年10本、最優秀アンサンブル・キャスト賞
- ニューヨーク映画批評家協会賞・オンライン:今年の10本
『ウーマン・トーキング 私たちの選択/Woman Talking』(2022年・アメリカ・1時間44分)
監督:
サラ・ポーリー
出演:
ルーニー・マーラ、クレア・フォイ、ジェシー・バックリー、ベン・ウィショー、フランシス・マクドーマンド 他
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