ついに聖戦へ突入!『デューン 砂の惑星 PART2』
フランク・ハーバートによる全6巻からなるSF小説の金字塔をドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が完全映像化した第2弾!
パート1の興行的な大成功から直ぐにパート2製作に入り、第1部で世界観の下地が完全に作り上げられたおかげで本作では縦横無尽に登場人物たちが駆け巡り、後半ではケレン味たっぷりの壮大な戦闘シーンが用意されている。
本作シリーズの快調な成功を受け『デューン』は、3作目『デューン 砂の惑星 PART3 メサイヤ(救世主)』(仮題)で幕を閉じるが、TVシリーズで前日譚にあたるプリクエル『デューン プロフェシー(啓示)』(仮題)もスタートし、この物語が形作られていった謎が紐解かれてゆく。
フランクの息子ブライアン・ハーバートとケヴィン・J・アンダースン共著による続編も 数多く出版されている『デューン 砂の惑星』ユニバースは拡張し続けていきそうな予感がある。
Story:
アトレイデス家の殲滅に協力したことを後悔している皇帝シャッダム4世(クリストファー・ウォーケン)であったが、皇帝の娘、皇女イルーラン・コリノ(フローレンス・ピュー)はポール・アトレイデス(ティモシー・シャラメ)がまだ生存している可能性を感じ取っていた。
実際に惑星アラキスでは、ポールとレディ・ジェシカ(レベッカ・ファーガソン)を筆頭に部族長スティルガー(ハビエル・バルデム)率いる原住民フレーメンの兵士たちががハルコネン家の巡回部隊を掃討していた。
シエッチ・タブルに到着したジェシカとポールに対し、フレーメンの同志の一部からは彼らがスパイではないのか?という疑いがかけられるが、時を同じくしてスティルガーや他の者たちは「外の世界」から来た母子がアラキスに繁栄をもたらすという予知夢を見ていた。
スティルガーは、ジェシカに教母ガイウス・ヘレン・モヒアム(シャーロット・ランプリング)の死が近いことを伝え、男や未修練の者が飲めば猛毒となる命の水を飲む事で後継になることを迫る。
命の水を服用し、祖先との繋がりを確かなものとしたジェシカは教母モヒアムの後継者となり、その際、生まれることのなかった娘アリアの意識をも覚醒させ、母娘は対話ができるようになる。
チャニ(ゼンデイヤ)は友人のシシャクリ(スハイラ・ヤコブ)と予言はフレーメンの人々を操るためのでっち上げの嘘であると信じていたが、ポールが自らが権力を手にする目的ではなく、皆で力を合わせて戦い抜こうという純粋な気持ちでいる様に心打たれてゆく。
フレーメンの言語を学び、フレーメンの言葉で”砂ネズミ”の意味であるムアディブをミドルネームに選び、生粋のゲリラ戦士のように砂虫にまたがり敵に立ち向かうポール、その勇姿に恋に落ちるチャニ。
宿敵ハルコンネン男爵(ステラン・スカルスガルド)は、急襲によりスパイス採掘所が壊滅的なダメージを受けたことから甥のラバン(デイヴ・バウティスタ)を退任させ、より残忍なサイコパスである年下の甥っ子、フェイド・ラウサ(オースティン・バトラー)にすげ替え、アラキスの統治をより強固なものとしようとする。
ベネ・ゲセリットに所属するマーゴット・フェンリング(レア・セドゥ)は、フェイドの統治者としての適任性を監視するいわばスパイのような存在として送り込まれる。
ジェシカは南へと赴き、予言を信じるフレーメンたちと合流するが、ポール自らが南へと出向けば、救世主として向かえられ、”聖戦”が始まるキッカケとなってしまうと予感したポールは北に残るが、シエッチ・タブルを急襲したフェイド・ラウサの兵団により、ポールたちは南へと移動することを余儀なくされる。
そして、ポールもまた命の水を飲むことになるが、思わぬことが起きる・・・。
Behind The Inside:
オースティン・バトラーが見事に演じた冷酷非道なサイコパス、フェイド・ラウサ
監督のドゥニ・ヴィルヌーヴが抱いたフェイド・ラウサのイメージは、サイコパスの殺人鬼とオリンピック級の腕前を持つ剣術使いを足して2で割ったような印象で、動物に喩えるなら蛇だそうだ。そして、ローリング・ストーンズのミック・ジャガーの要素もあるそうだ。
因みにミック・ジャガーは、1970年に頓挫したアレハンドロ・ホドロフスキー監督版の『デューン』の出演予定者であった。未完に終わったホドロフスキー作品へのドゥニからのオマージュである。
オースティンにフェイド・ラウサ役が決まる前、ビル・スカルスガルド、バリー・コーガンといった異彩を放つ役者の名が上がっていた。
だがオーディションではなく、オースティンは監督のドゥニ・ヴィルヌーヴとのコーヒー・タイムにドゥニから直々にこの役をオファーされたというから驚きである。
そして役が決まるとオースティンの役柄への準備も徹底しており、まず眉毛を落とし、お歯黒にし、頭の毛を剃り坊主頭にした。
そして、元ネイビー・シールズの隊員による食事や健康、身体の鍛錬に関する厳格なルールに基づいて、4ヶ月間に渡りブダペストでトレーニングを受けた。
その間で約11キログラムの鎧のような筋肉を身につけたという。
オースティンがフェイド・ラウサを演じる上で参考にした俳優は、『レオン』、『トゥルー・ロマンス』、『フィフス・エレメント』でのゲイリー・オールドマンと『ジョーカー』などの代表作があるヒース・レジャーだったそうである。
ドゥニ・ヴィルヌーヴは、オースティンに撮影本番では、フェイドに完全に乗り移られてくれ、カメラが止まってもまぁ、せいぜい25%から30%くらいはフェイドのままでいてくれ、だからといってセットにいるスタッフを殺さないでくれよ、と冗談まじりにお願いしたという。
Under The Film:
『デューン』ユニバースの可能性
ドゥニ・ヴィルヌーヴは、ことあるごとに2巻目に当たる原作本『デューン砂漠の救世主』の映画化に興味を示し続けてきた。
パート2の成功を受け、パート3として『デューン砂漠の救世主』が映画化される予定である。
またデューンの前日譚となる物語をフランク・ハーバートの死後、息子のブライアン・ハーバートがケヴィン・J・アンダースンと共著で手がけ、『デューン プロフェシー(啓示)』(仮題)として、TVシリーズ化される。
1作目の成功を受け、2作目へのゴーサインが出て本作が製作され、新たなキャラクターとしてフローレンス・ピュー、レア・セドゥ、そして、ノン・クレジットではあるが、生まれることのなかったポールの妹、アリアを時空を超えた存在としてカメオで演じるアニャ・テイラー=ジョイの登場など、パート3への布石と考えられるストーリーラインを担う魅力的なキャスト陣も追加されている。
映画化にあたり大友克洋の『AKIRA』を参考にしたとされる青年ポールの成長譚。
謙虚な青年が成長し暗い部分を兼ね備えた強大な力を持つ救世主としてのキャラクター・アークを見事に描いた本作のその後の物語。
そして3作目まで製作完了したその後は一体、どうなるのか?
J・R・R・トールキン作『指輪物語』に真に匹敵する小説は、SF小説でありながら文学性に富んだ『デューン砂の惑星』とされてきた。
フランク・ハーバートが残した原作本は全6巻であり、父の死後、遺したとされる膨大なメモを元に息子のブライアン・ハーバートがケヴィン・J・アンダースンと共著で前日譚を含む新たな物語を執筆し続けており、デューン・ユニバースが拡張し続けていることは間違いない。
難解であるが、エコロジカルなテーマを感じさせるこの物語は、地球の生態系、そして、さまざまな問題を抱える現代社会でこそ映画化されるのが絶妙なタイミングなのではないのだろうか。
『デューン 砂の惑星 PART2 / Dune: Part Two』(2024年・アメリカ・カナダ・アラブ首長国連邦・ハンガリー・イタリア・ニュージーランド・ヨルダン・ガンビア・2時間46分)
監督:
ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演:
ティモシー・シャラメ、ゼンデイヤ、レベッカ・ファーガソン、ハビエル・バルデム、ジョシュ・ブローリン、オースティン・バトラー、フローレンス・ピュー、デイヴ・バウティスタ、クリストファー・ウォーケン、レア・セドゥ、ステラン・スカルスガルド、シャーロット・ランプリング、スハイラ・ヤコブ、アニャ・テイラー=ジョイ 他
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