田舎の小貴族からヨーロッパ随一の征服者となった最強の皇帝『ナポレオン』
リドリー・スコット監督✖️ホアキン・フェニックス再び!23年ぶりのコラボレーションは、またも歴史物。
フランス領コルシカ島出身のイタリア系の田舎の貴族であったナポレオンが軍将として才覚を現し、ヨーロッパのほぼ全土を征服していく様を300名の兵士、100頭の馬、11台ものカメラを駆使し、壮大なヨーロッパ・ロケが敢行され撮影された。
ホアキンは当初、ナポレオンをどう演じたらよいのか分からず、リドリーに泣きついたという。それほどの難役であった。
そして、本作は物語の核を成す夫婦の愛憎劇が見ものであり、ナポレオンの最初の妻となった恋多き女ジョセフィーヌ役には、女優として進境著しいヴァネッサ・カービーが、その奔放な女性像を艶やかに演じている。
数学に強く砲術に長け、無敵の策士として、時に怪物、時には悪魔に喩えられ畏れられた男ナポレオン。
瞬く間にスウェーデン、イギリス以外のヨーロッパほぼ全域を征服し、後に皇帝となった成り上がりヒーローの驚くべき人生が明らかになる。
Story:
1789年、自由、平等を求めた市民によって始まったフランス革命。
マリー・アントワネット(キャサリン・ウォーカー)は斬首刑に処され、国内の混乱が続く中、天才的な軍事戦略で国を守り 皇帝にまで上り詰めた英雄ナポレオン(ホアキン・フェニックス)。
最愛の妻ジョゼフィーヌ(ヴァネッサ・カービー)との奇妙な愛憎関係の中で、フランスの最高権力を手に何十万人の命を奪う幾多の戦争を次々と仕掛けていく。
ナポレオンは冷酷非道かつ怪物的カリスマ性をもって侵略戦争を続け、イギリスとスウェーデンを除くヨーロッパ大陸全土を勢力下に収めていく。
Behind The Inside:
難役に挑む前に途方に暮れたホアキン
ホアキン・フェニックスは、頭脳明晰な軍将ナポレオン役をどう演じたらよいのか分からず混乱し、2週間ほどリドリー・スコットに「自分はどうしたらよいのでしょうか?」と尋ねたという。
「困ったもんだな、分からないのであれば、こちらに来て話し合おう」とリドリーはホアキンを呼び寄せ、10日間に渡って台本に書いてある全てのシーンについて、場面ごとに逐一リハーサルのようにして詳細に話し合ったという。
ホアキンはナポレオンに成りきるために悩んだ挙句、直前に出演したシュールなサイコロジカル・コメディ『ボーはおそれている』(2023年)のボー役の要素をナポレオン像に流し込み、硬軟バランスの取れたキャラクラー作りをすることにしたという。
そのそも当時のナポレオンは35歳でフランス皇帝となっており、対して演じるホアキンは撮影開始時ですでに49歳となっていたため、年齢の壁からもホアキンが難しいと感じる点は多々あったのかもしれない。
ちなみにナポレオンの6歳年上であったジョセフィーヌを演じたヴァネッサ・カービーは、演じた時点でホアキンよりも14歳年下であり、史実と照らし合わせるとナポレオンを演じるホアキンとしては、更に混乱したことであろう。
Under The Film:
Apple TVの配信は、4時間バージョンとなる見込み
リドリー・スコットは、映画の観客にとって、2時間半という時間が劇場ではフィジカル的にも映画に集中できる気力という点でも我慢の限界であろうという考えを持っており、劇場公開版を2時間半の総尺に収めるべく努力をしたという。
だがリドリーにとって初めての経験となる配信版は、Apple TV配信で非常に長く4時間版となる模様。
劇場公開版ではナポレオンが帝国を築く過程で外すことのできない有名な戦いのいくつかが描かれておらず、リドリーが劇場公開版の2時間半に固執するあまりカットされた合戦シーンがあるのか? 撮影済みだがカットされた登場人物が絡むエピソードがあるのかもしれず、本編尺で80分強ものシーン追加となる4時間版が一体、どのような内容になるのか気になるところである。
本作の製作費は予告の合戦シーンを見ても一目瞭然で非常に高額であり、リドリー卿は「我々は決して安くはなかった」と述べており、資金面でAppleが多大なバックアップをしており、リドリーの創作物に対してAppleが全幅の信頼を寄せてくれたことにとても感謝しているようだ。
今回の壮大な映画製作は、今後、リドリー所有の製作プロダクション、スコット・フリーとAppleが共作してゆくキッカケになったのかもしれない。
劇場版で魅了された観客、または描き方に物足りなさを感じた歴史好きの方は、Apple TVの配信が本作にとっての本丸と言えそうな4時間バージョンが必見となるのは間違いない。
『ナポレオン/Napoleon』(2023年・アメリカ・イギリス・2時間38分)
監督:
リドリー・スコット
出演:
ホアキン・フェニックス、ヴァネッサ・カービー、タハール・ラヒム、ルパート・エヴェレット、マーク・ボナー、リュディヴィーヌ・サニエ、ベン・マイルズ、シニード・キューザック、リアナ・デュース、ポール・リス 他
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