Happy Birthday to ブライアン・デ・パルマ
本日9月11日は、ブライアン・デ・パルマ監督の80歳の誕生です。
デ・パルマ監督といえば、サイコスリラーとアクション映画の大家と言われていますが、大手スタジオと意向が合わず監督を解雇されたり、かと思えば、失意の内に撮影した作品『ファントム・オブ・パラダイス』(1974年)がカルト的な人気を呼んだり、自分のカラーを極力抑え込んで撮った雇われ演出作品『アンタッチャブル』(1987年)、『ミッション・インポッシブル』(1996年)が大ヒットしたり、『アンタッチャブル』ではマローン役を演じたショーン・コネリーにアカデミー賞助演男優賞をもたらすほどの高い評価を得るなど、一筋縄では行かない浮き沈みの激しいキャリアを歩んできました。
“デ・パルマ・カット”と呼ばれる、主にアルフレッド・ヒッチコックを思わせる往年の名画へオマージュを捧げたかのようなスタイルを持つ映像表現を作品のそこかしこへ散りばめるのがお好みでそんなシーンで出くわすとシネフィルは大興奮します。
監督自身こんなことを述べています。
映像的手法でストーリーを語りつくす映画が好き
ブライアン・デ・パルマ
筆者おすすめのデ・パルマ・カットは、『虚栄のかがり火』(1990年)の冒頭6分間に及ぶノーカット長回しによるオープニング・シークエンスです。
虚栄のかがり火(字幕版)
このオープニングは、明らかにオーソン・ウェルズの『黒い罠』(1958年)オープニングの3分間にも及ぶワンシーン・ワンショット(長回し撮影)へのオマージュというか長さへの記録更新への挑戦ともいえるショットでデ・パルマ監督自らこの移動撮影を見守るために映画の中で警備員の一人として写り込んでいます。長回しの途中、ブルース・ウィリスと美女、ビュッフェを運ぶ客室係が乗る狭いエレベーター内での撮影中もカメラマンの横にデ・パルマ監督は張り付いて演技を監視していたそうです。撮影も何度も失敗したとのことで見ごたえは十二分にあります。
トム・ウルフ原作の小説『虚栄のかがり火』は、1980年代のアメリカ文学を代表する重要な作品と位置づけられており、映画化に際しても豪華キャストで鳴り物入りで製作されましたが、蓋を開けてみたら、大コケで批評家からも総スカンの作品となり、デ・パルマにとっても監督生命すら危ぶまれる致命的な演出経験となりました。
しかし、ブルース・ウィリス、トム・ハンクス、メラニー・グリフィス、モーガン・フリーマンといった役者の演技、撮影面では素晴らしい部分もあり、アンサンブルキャストの妙、そして微細な光を操る魔術師、撮影のヴィルモス・スィグモンドの才能の凄さを感じられるシーンにも是非、触れて欲しい映画です。
ブライアン・デ・パルマ監督も80歳になりましたが、次回作は、クライム・スリラー『Sweet Vengeance/ 甘い復讐(仮題)』が待機中です。
これからもデ・パルマ節ともいえる作品作りに大いに期待しています。