インスタグラムで綴る2021年アカデミー賞結果発表!受賞の喜びの顔、顔、顔
第93回アカデミー賞が2021年4月26日に発表された。コロナ禍のため、メイン会場は空気の循環を確保できる天高があるという理由でロサンゼルス、ダウンタウンのユニオン駅舎内とロンドン、パリ、シドニーなど世界各国にサテライト会場を設け、中継で繋いだ初めての授賞式となった。
ロサンゼルスの名所、ユニオン駅舎前に敷かれたレッドカーペット
今年のアカデミー賞は、昨年に引き続き、単に世代交代といったこととは違う、未来の映画界への布石を投じるような結果となった。来年はより深化した映画界の姿が見えてくるだろう。
2017年に起きたセクシャル・ハラスメントや性的虐待を告発したMe Too問題に端を発し、台頭してきた女性監督たち、今なお、吹き荒れる人種差別に関してのBLM問題とそれを後方支援するかのような強いメッセージを放つ作品群、そして、猛威をふるい続け、収束する兆しの見えないコロナ禍での時間とコストのかかる映画作りと、映像エンターテインメントにも否応なしの変革の激しい風が吹き荒れた中でのアカデミー賞受賞式となった。
主演女優賞にノミネートのキャリー・マリガンはヴァレンティノをまとって。
それらの影響によって、世界の映画界、ハリウッドの映画作りのプレイヤーの交代、そして、映画の中で描かれる世界が変わってきている。
そうしたゲームチェンジャーな変革期の中での今年のアカデミー賞受賞式を、複雑な思いで見つめた人も多かったのではないだろうか?
ブルガリのアクセサリーと鮮やかなイエローのヴァレンティノが映えるゼンデイヤは、プレゼンターとして登場
誰もが予想した通りの受賞者もいれば、意外な受賞者もあり、想像通りにいかないのもアカデミー賞の魅力であり、楽しみ。
淡いピンクのグッチのドレスにアクセサリーはカルティエ。エレガントな装いのヴァネッサ・カービーは主演女優賞にノミネート
シネマガゼットVOIDでは、主だった受賞作品のオフィシャル・インスタグラムから受賞者の喜びの声を拾っていきたい。
『ノマドランド』
- 作品賞
- 監督賞・クロエ・ジャオ(女性監督の受賞は、史上二人目)
- 主演女優賞・フランシス・マクドーマンド(『ファーゴ』(1996年)、『スリー・ビルボード』(2017年)に続き、3度目の受賞)
作品賞は、下馬評通り、『ノマドランド』が受賞した。主演女優賞は、まさかのフランシス・マクドーマンドの3度目の受賞となった。63歳のフランシスは威風堂々としたハリウッドの重鎮女優らしい風格あるコメントで会場を沸かせた。
本作の原作本を読み感銘を受けたフランシスが原作者であるジェシカ・ブルーダーから映画化権を手に入れ、彼女自らが製作者として映画企画を進め、当時、まだあまり知られていなかったクロエ・ジャオに監督を依頼し、自ら主演をし、低予算映画ながら、歪な現代社会の写し絵とも言える映画を自然風景と対比させながら、作り上げた。
ドキュメンタリーのような自然体の映像表現と風景の美しさを映像に収め、アカデミー賞撮影賞にノミネートされたのは、クロエの公私ともにパートナーである撮影監督ジョシュア・ジェイムズ・リチャーズ。
クロエ・ジャオは、8年前の映画誌とのインタビューで中国批判ともとれるコメントをしたことが今になって蒸し返され、中国国内のSNSではシャットアウトされ、ノマドランドというタイトルもクロエの名も上がることはなくなっていたが、受賞スピ―チでの幼い頃の中国文化への憧憬を語ったところ、それにシンパシーを寄せた人々の書き込みがSNS等であったとのこと。
クロエがハリウッドで最も成功した中国出身の若手映画監督となったことに少しも揺るぎはなく、今後、中国政府の彼女に対する対応が軟化することが期待される。
『ファーザー』
- 主演男優賞・アンソニー・ホプキンス(『羊たちの沈黙』(1991年)以来29年ぶり、2度目の受賞)
- 脚色賞・クリストファー・ハンプトン、フローリアン・ゼレール
オリビア・コールマンのオフィシャル・インスタグラムより、左からアンソニー・ホプキンス、監督フローリアン・ゼレール、オリビア・コールマン
監督のフローリアン・ゼレールは元々、舞台作品をアンソニー・ホプキンスに当て書きして脚本を仕上げ、アンソニーからの出演の返事を待った。役名がアンソニーなのも、単なる偶然ではないのかもしれない。
ちなみにもしも出演を断られたら、フランス映画にするつもりだったそうだ。当て書きして、役者が名演をしてオスカー主演男優賞を獲ったのだから、監督としては感無量に違いない。
会場にいることは叶わなかった主演男優賞受賞のアンソニー・ホプキンスは、自分が受賞するとは全く思ってもいなかったようで、若くしてこの世を去ったチャドウィック・ボーズマンに本当は受賞して欲しかったかのような弔いともとれるコメントを自身のインスタグラムで発信した。
『プロミシング・ヤング・ウーマン』
- 脚本賞・エメラルド・フェネル
マーゴット・ロビーのプロダクション、ラッキーチャップ・エンターテイメントで製作された本作。
主演はあまりにも美貌の女優マーゴットではなく、コケティツシュな魅力の演技派女優キャリー・マリガンを主役に据えて奏功した。
作品賞、監督賞、主演女優賞、脚本賞、編集賞にノミネートされ有力視されていた本作『プロミシング・ヤング・ウーマン』だったが、残念ながらキャリー・マリガンに主演女優賞をもたらすことはなく、元々女優でMe Too騒動以降、頭角を現してきた女性監督群の中でも頭ひとつ抜きんでた急先鋒の演出家として注目されているエメラルド・フェネルが見事、脚本賞を受賞した。
女優としてのキャリアよりも映画監督として、自らの人生にリベンジした格好となった。
今後の活躍がとても気になる映画監督の登場である。
『ミナリ』
- 助演女優賞・ユン・ヨジョン
昨年のポン・ジュノ監督作『パラサイト』に次ぐ、韓国人女優の栄えある受賞となった。
『ミナリ』の主人公の家族で、韓国からやってくる祖母役。助演とはいえ、ミナリ(植物のセリ)というタイトルの源のような人物なので非常に重要な役どころであり、観客を沸かせる役回りとしても印象深い名演技であった。
『ジューダス・アンド・ザ・ブラック・メサイア/Judas and the Black Messiah(原題)』
- 助演男優賞・ダニエル・カルーヤ
- 歌曲賞・「Fight For You」by H.E.R.
『ジューダス・アンド・ザ・ブラック・メサイア/Judas and the Black Messiah(原題)』からは、ダニエル・カルーヤとラキース・スタンフィールドの2名がダブル・ノミネートされていたが、ダニエルに見事、栄冠が輝いた。
また歌曲賞にH.E.R.による主題歌「Fight For You」が選ばれ、花を添えた。
歌曲賞を受賞したH.E.R.のオフィシャル・インスタグラムより
コロナ禍にあってもアカデミー賞の壇上に上がる有力作品はどれも実力のある作品ばかりであった。映画館でほとんど上映できなくても最低限の上映日数を稼ぎ、ノミネートされてきた作品の中にはNETFLIXのような配信プラットフォームから生まれた作品も以前よりもさらに増加傾向にある。
ノミネート作品に配信映画が多いのは助かる部分もある。それはアカデミー賞発表までにある程度の作品を観ることが叶うからだ。
今まで日本国内の配給会社は、アカデミー賞の結果を反映させて宣伝戦略を練って、映画を当ててきたものだが、そんなビジネス・スキームもコロナ禍のために総崩れになってしまった。
はたして、来年は一体、どうなるのか?
最後に映画芸術科学アカデミーが映画館へ贈る熱い応援歌ともいえるPVをご覧ください。
冒頭は、マシュー・マコノヒーによるMCが入ります。映画館で映画を楽しむことの大切さ、そして、映画館の灯を決して絶やさぬという熱い思いが伝わってきます。
”The Big Screen is Back”