史上最悪の処方箋オピオイド中毒に対する抗議活動を追った薬害ドキュメンタリー『オール・ザ・ビューティ・アンド・ザ・ブラッドシェッド/All the Beauty and the Bloodshed』
全米で蔓延している麻薬性鎮痛剤オピオイド薬害。被害者の一人である、アメリカを代表するポートレイト・フォトグラファー、ナン・ゴールディンが抗議のために立ち上がる。本作は、死に至らしめる中毒症状を引き起こすオピオイドを販売する製薬会社に対する彼女らの激しい抗議活動を追った渾身のドキュメンタリー!
Story:
アメリカでは、1日に100人が亡くなると言われる処方箋による麻薬性鎮痛剤オピオイド。
ドラッグサブカルチャー・シーンを撮影し続けてきた現代アメリカを代表するポートレイト写真家であるナン・ゴールディンもまた皮肉なことにこの薬害の被害者となっていた。
ナンはアクティビストとなることを決意し、抗議団体P.A.I.N.を設立、活動を開始した。
標的はこの恐ろしい未曾有の薬害の元凶、オピオイドを生産・販売する製薬会社パーデューファーマ。
ナンと仲間たちは経営一族であるサックラー家に対して激しい抗議活動を始める。
Behind The Inside:
全米で累計50万人もの死者を出しているオピオイド蔓延を断つという切実な思いからアクティビストとなった写真家ナン・ゴールディン
処方箋の薬が実は麻薬性であったため、全米ですでに50万人もの死者を出している史上最悪の鎮痛剤オピオイド。自身も被害に遭ったナン・ゴールディンは、この被害の連鎖を何としてもくい止めたいと心に誓い、製薬会社とのいわば麻薬戦争に勝つため、2017年にアーティスト仲間と共に抗議活動を行う団体P.A.I.N.を設立した。
今までアメリカ写真史の中でも極めてパーソナルな視線でポートレイト写真を撮ることに長年情熱を傾け、若き頃からドラッグ・サブカルチャー・シーンを見つめてきた彼女ならではの思いも込められた人生の舵取りと言ってもよいだろう。
筆者は、90年代初頭、友人と青山のバーで飲んでいて、店の外に出ると直ぐにある246号線のガードレールに腰掛け、夕涼みをしているところをフラリと現れたナンに友人と共に撮影されたことがあった。
名を尋ねると「ナン… ナン・ゴールディン」と名乗った。
東京で写真展をするために都内を撮影していたことを後で知った。
片言を会話して、シャッターを押しているあの時、感じた優しさと知的さと奥ゆかしさを持った写真家が現代のアメリカを震撼させ続けている悪魔のような所業に真っ向から立ち上がったのだ。
P.A.I.N.
Founded by Nan Goldin to address the overdose crisis in America, P.A.I.N is made up of artists, activists, and people who’ve experienced addiction. We target the Sackler family (whose company, Purdue Pharma, manufactured and fraudulently marketed Oxycontin), using direct action to confront the museums and universities that carry the Sackler name.
Awards:
- 第79回ヴェネチア国際映画祭:コンペティション部門・金獅子賞
『オール・ザ・ビューティ・アンド・ザ・ブラッドシェッド/All the Beauty and the Bloodshed』(2022年・アメリカ・1時間53分)
監督:
ローラ・ポイトラス
出演:
ナン・ゴールディン
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