長年、親友同士だったはずの友人に突然の絶縁状を叩きつけられた男の悲喜劇。
『スリー・ビルボード』の名匠であり、劇作家でもあるマーティン・マクドナーが舞台用だった脚本を映画に翻案し、演技達者たちを集めエモーショナルな傑作に仕立て上げた
Story:
1923年、内戦に揺れるアイルランドの西端にある孤島、イニシェリン島。
島民全員が顔見知りの平和な島で、パードリック・シリーブヒン(コリン・ファレル)は長年友情を育んんできたはずの友人コルム・ドハティ(ブレンダン・グリーソン)にある日突然、絶縁を言い渡される。
理由も分からず戸惑うパードリックだったが、実妹シボーン・シリーブヒン(ケリー・コンドン)や問題児の隣人ドミニク・コーニー(バリー・コーガン)らの協力を得て、なんとかコルムとの関係を修復しようとする。
だが、コルムからは、「これ以上自分に近づくと自分の指を切り落とす!」と脅されてしまうのだった。
長閑な島での生活とは裏腹にエスカレートする状況の中、事態は衝撃的な結末に向かってゆく・・・。
Behind The Inside:
マーティン・マクドナー監督とは2度目のタッグとなるコリン・ファレル✖️ブレンダン・グリーソン
今回、セリフの応酬で演技合戦となったコリン・ファレルとブレンダン・グリーソンは、マーティン・マクドナー監督の過去作『ヒットマンズ・レクイエム』(2008年)で共演している。
コリン・ファレルとバリー・コーガンは3度目の因縁の共演となる
コリン・ファレルとバリー・コーガンの共演といえば、思い出されるのが、ヨルゴス・ランティモス監督の怪作『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』(2017年)である。
バリーがガツガツとスパゲティを平らげる様は映画史に残る異様な印象を放っていた。
続く、バットマンものの中でも近年の傑作と名高い『THE BATMAN-ザ・バットマン-』(2022年)での共演と続き、よき関係を築きあげてきた。
本作でのアイルランドでのロケ中も二人とも同じアパートに逗留し、バリーはコリンの朝食を勝手に食べたり、わざと部屋をメチャクチャに汚したりとコリンを動揺させるおふざけが過ぎたようだ。
Under The Film:
舞台と映画の両方で成功を収めているマーティン・マクドナー監督
イギリスとアイルランドで活動する劇作家であり、映画監督のマーティン・マクドナーは、劇作家としてはすでにローレンス・オリヴィエ賞を受賞し、映画の分野では『スリー・ビルボード』(2017年)でアカデミー賞6部門7ノミネートされ、俳優陣に主演女優賞(フランシス・マクドーマンド)と助演男優賞(サム・ロックウェル)をもたらした。
本作は、アラン諸島三部作の内の一つで監督曰く「うまく行かなかった」ために未上演となっている『イニシィア島のバンシー』を映画用にアレンジし、マクドナー作品お馴染みの演技達者な俳優たちをアイルランドの孤島に集め、『イニシェリン島の精霊』として完成させた。
Awards:
- 第95回アカデミー賞・ノミネート:作品賞、監督賞・マーティン・マクドナー、主演男優賞・コリン・ファレル、助演男優賞・ブレンダン・グリーソン、助演男優賞・バリー・コーガン、助演女優賞・ケリー・コンドン、脚本賞・マーティン・マクドナー、作曲賞・カーター・バーウェル、編集賞 ミッケル・E.G.ニールセン
- 第79回ヴェネチア国際映画祭:主演男優賞・コリン・ファレル、金のオゼッラ賞(脚本賞)・マーティン・マクドナー
『イニシェリン島の精霊/The Banshees of Inisherin』(2022年・アイルランド・イギリス・アメリカ・1時間49分)
監督:
マーティン・マクドナー
出演:
コリン・ファレル、ブレンダン・グリーソン、ケリー・コンドン、バリー・コーガン、パット・ショート、デイビット・ピアース 他
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