#MeToo運動が爆発する発端となり、ハリウッドを震撼させた衝撃のスクープサスペンス『SHE SAID シー・セッド その名を暴け』
『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』『恋におちたシェイクスピア』『英国王のスピーチ』等、数々の名作を生み出したディズニー傘下のミラマックス・フィルムズを廃業し、ワインスタイン・カンパニーとして話題の商業映画をさらに量産。
名映画プロデューサーの名を欲しいままにしてきたハーヴェイ・ワインスタインとボブ・ワインスタインの兄弟。
だが、2017年「ニューヨーク・タイムズ」紙が報じた1つの痛烈な記事が世界中で社会現象を巻き起こした。その内容とは、誰も語りたがらなかったハーヴェイ・ワインスタインによる、彼が製作した映画の出演女優、女性スタッフ、女優志願者へのセクハラ・性的暴行事件。
これをきっかけに映画業界のみならず、国を超えて性犯罪被害に対する抗議の声を促し、#MeToo運動が爆発した。
後にピューリッツアー賞を受賞するこの調査報道を行った2人の女性記者の目を通して描かれる、ハリウッドの巨大権力に挑んだ特大スクープサスペンス。
Story:
「ニューヨーク・タイムズ」紙の調査報道記者、女性や子供の問題が得意分野のミーガン・トゥーイー(キャリー・マリガン)と職場問題が専門のジョディ・カンター(ゾーイ・カザン)。
二人はコンビを組み映画界の大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインの数十年に渡る女優へのセクハラ・性暴力事件を告発するため、過去、被害に遭った関係者への綿密な調査を始める。
取材を進めてゆくと、ワインスタインが過去に何度も記事をもみ消してきたことが明るみになってくる。
被害者の女性たちは脅迫を受け、被害届を出せずに示談に応じてきたのだった。
重大事件なのにも関わらず非協力的な映画関係者がいること、問題の本質は映画業界の隠蔽体質にあることに気づいたミーガンとジョディ。
ワインスタインによる調査妨害にも遭いながらもアシュレイ・ジャッド、グウイネス・パルトロウ、ジュディット・ゴドレーシュらハリウッド女優の勇気ある証言と共に告発へ向けて調査報道をまとめ上げてゆく。
Behind The Inside:
ジャーナリスト史上最高の名誉、ジョージ・ポルク賞、そしてピュリッツァー賞公益部門を受賞したノン・フィクションの映画化
女性や子供の問題が得意分野のミーガン・トゥーイーと職場問題が専門のジョディ・カンターの二人の「ニューヨーク・タイムズ」紙の調査報道記者による調査報告書は、ハリウッド映画界のみならず、世界中を#MeToo運動に目覚めさせた。
だが、「ニューヨーク・タイムズ」紙は、すでに2004年からハーヴェイ・ワインスタインの性暴力事件は掴んでいたとされている。
何故、記事化されなかったのか?、その理由の一つと考えられるのは、ある時、ハーヴェイ・ワインスタイン自身が個人的に「ニューヨーク・タイムズ」紙を訪問したことがあったとされ、以降、この事件に関しては、ジョディ・カンターコンビが現れるまでは世に出ることはなかった。
米国を代表する大新聞会社に単身乗り込み、揺さぶりをかけることができる人物とは、実に恐ろしい限りである。
本作では、被害者の一人グウイネス・パルトロウ、ジュディット・ゴドレーシュは、電話の声での出演となり、アシュレイ・ジャッドに関しては、本人自ら登場する。
被害者である当人が勇気をもって自身として登場する稀有な映画であると同時に劇映画の構造としては非常に興味深い作りである。
Under The Film:
主演のキャリー・マリガンとゾーイ・カザンは、実はプライベートでも大親友同士
主人公ミーガンとジョディを演じたキャリー・マリガンとゾーイ・カザンは、プライベートでも14年もの友情を育んできた。
クラシックな名作映画『欲望という名の電車』(1951年)、『エデンの東』(1955年)の名匠エリア・カザンを祖父、脚本家であり監督のニコラス・カザンを父に持つゾーイもまた脚本家としての顔を持ち、パートナーでもある俳優ポール・ダノの初監督作であり、親友キャリー・マリガン主演の映画『ワイルドライフ』の脚本家の一人に名を連ねている。
2012年にキャリーがミュージシャンのマーカス・マムフォードと結婚式を挙げた際も親友や親戚が務める花嫁介添人をゾーイが務めている。
ユニークな存在感を放ち続ける俳優ポール・ダノをパートナーに持ち、生粋の名門映画一家育ちのゾーイ。近年、メキメキと現代アメリカ社会を象徴する演技派女優として、唯一無二のキャリアを積み上げているキャリー・マリガン。
生き馬の目を抜くと言われるハリウッド映画界の中で、とても微笑ましい友情関係を築いている。
Awards:
- アメリカン・フィルム・インスティチュート賞:今年の映画
- ニューヨーク映画批評家協会賞:今年10本の映画
- サンセット映画協会賞:助演女優賞・キャリー・マリガン
- ネバダ映画批評家協会賞:最優秀脚本(翻案)賞
- 女性映画批評家協会賞:ホール・オブ・シェイム賞(女性よりも新聞社礼賛をしているといった捉え方をされたことと昨今のNYタイムズ紙のいくつかの世間を揺るがした出来事をまとめた記事内容への皮肉を込めた賞)、女性についてのベスト映画賞
『SHE SAID シー・セッド その名を暴け/She Said』(2022年・アメリカ・2時間9分)
監督:
マリア・シュラーダー
出演:
キャリー・マリガン、ゾーイ・カザン、パトリシア・クラークソン、アンドレ・ブラウアー、ジェニファー・イーリー、アンジェラ・ヨー、サマンサ・モートン 他
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