高校で銃乱射事件を起こし自害した加害者の両親と、息子を殺された被害者の両親が閉ざされた密室で対話する。
それぞれの息⼦の成⻑から過ごしてきた⻘春の⽇々、家族との関係、さらには銃乱射事件の現場の状況まで、息子を失った両親たちが対話を通して行き着く先とは?
Story:
アメリカの高校で、生徒による銃乱射事件が勃発。
十数名の生徒が命を落とし、犯人の少年も校内で自ら命を絶った。
それから6年、息子を失った悲しみから立ち直れずにいるジェイ(ジェイソン・アイザックス)とゲイル(マーサ・プリンプトン)のペリー夫妻は、事件の背景にどういう真実があったのか、何か予兆があったのではないかという思いを募らせていた。
ペリー夫妻はセラピストの勧めで、加害者の両親リチャード(リード・バーニー)とリンダ(アン・ダウド)との話し合いに臨むことに。
場所は教会の奥の小さな個室、立会人は無し。
「お元気ですか?」と、古い知り合い同士のような挨拶をぎこちなく交わす4人。
そして、ゲイルの「息子さんについて何もかも話してください」という言葉を合図に、誰も結末が予測できない対話が幕を開ける。
「加害者は犯行の予兆を見せていたのではないか?もしそうであるのなら、両親であるリチャードとリンダがそれに気付いていれば、事件は未然に防げたのではないか?」というペリー夫妻が向き合い続けてきた問いがリチャードとリンダに投げかけられた時、心の中にあったわだかまりが一気に吹き出してゆく。
Behind The Inside:
本編中に「Sorry」という台詞が45回も登場する異例の作品
俳優であるフラン・クランツにとっての初監督作は、2018年に実際に起きた高校生による銃乱射事件に激しく心を打たれたことがきっかけで、事件の深層について独自に進めた調査が元となった。
数ある報告書を読み進めるうちに加害者と被害者家族同士の面談の報告書に行き当たり、そうした熱心なリサーチが反映され、下手なスリラー映画よりも緊迫感に満ちた緻密な脚本が完成した。
撮影は14日間。そのうちの4日間は外でのロケーション撮影であり、室内で両家族が対峙するシーンは、たった10日間で撮影された。
また劇中、登場人物たちは「Sorry」という台詞を計45回も口にする。
ソーリーという言葉は、”ごめんなさい”という意味だけではなく、”それは残念です、大変でしたね”といった気遣いとしての意味など、どんな相手に対してなのか? また使うタイミングや状況でニュアンスが変わるセンシティブな言葉。
そうして熟考して一つ一つの言葉を選んで脚本は構成されており、クランツ監督は新人監督としては、1作目にして驚くべき才能を発揮したと言える。
Under The Film:
原題の『Mass』には3つの意味が込められている
Mass=マスとは、教会のミサを意味する。映画も教会の一室を借りて対談が行われる。
もう一つの意味は、Mass Shooting=銃による無差別大量殺戮を意味する。
またMass=集まる、という意味もあり、4名が集まり、対話をするという本作のテーマにも通ずる。
Awards:
- アトランタ映画批評家協会:最優秀アンサンブルキャスト賞
- 釜山国際映画祭:観客賞・フラン・クランツ
- インディペンデント・スピリット賞:ロバート・アルトマン賞(アンサンブル映画の名匠アルトマンに因み、最優秀アンサンブル・キャストに与えられ、監督と配役担当者へも授与)
- ハリウッド批評家協会:最優秀オリジナル脚本賞・フラン・クランツ
- ヒューストン映画批評家協会:最優秀助演女優賞・アン・ダウド、最優秀アンサンブル・キャスト賞
- サン・セバスティアン国際映画祭:青年審査員賞・フラン・クランツ
- 他、全44賞に輝く。
『対峙/Mass』(2021年・アメリカ・1時間51分)
監督:
フラン・クランツ
出演:
リード・バーニー、アン・ダウド、ジェイソン・アイザックス、マーサ・プリンプトン、カゲン・オルブライト、ミッチェル・N・カーター 他
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