大胆不敵!強靭なフュリオサの秘密が紐解かれる『マッドマックス フュリオサ』
『マッドマックス』シリーズ創始者ジョージ・ミラー監督によるマッドマックス史上最長の2時間28分の大作となった最新作『マッドマックス フュリオサ』
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015年)に繋がる前日譚となる本作は、前作でシャーリーズ・セロンが演じたフュリオサ大隊長の怒りの根源となった過去を辿ってゆく。
本作では、口数少ない若きフュリオサを現代のファッション・アイコン的演技派スター、アニャ・テイラー=ジョイが自ら積極的に危険なスタント・シーンもこなし、インパクトのある目力を活かして後に大隊長となる人物を形成した過去を大胆に演じきっている。
Story:
人類の最終戦争による地球規模で見舞われた災害により、文明が終焉した後の世界、オーストラリアは放射能汚染にまみれた掃き溜めのような荒地と化していた。
それでも世界にはまだ”グリーン・プレイス”と呼ばれる新鮮な飲み水があり農業を営める数少ない緑の土地がまだ点在していた。
ドクター・ディメンタス将軍(クリス・ヘムズワース)率いるバイカー軍団はグリーン・プレイスを探している際、フュリオサ(アリーラ・ブラウン)と幼いヴァルキリー(ディラン・アドニス)を捕える。
囚われた愛娘フュリオサを救い出そうとした母メアリー・ジョ・バッサ(チャーリー・フレイザー)であったが、娘の目の前で無惨にも磔にされてしまう。
フュリオサがきっとグリーン・プレイスへと導いてくれると直感したディメンタスは彼女を養女として迎いれることにする。
だがフュリオサは左腕にグリーン・プレイスの座標を示すタトゥーを彫り、故郷へと逃げ帰る機会を密かに待ち望んでいたのだった・・・。
ディメンタス将軍とバイカー軍団は、飲み水が手に入り、農業を営める砦、シタデルへと到着するが、そこはディメンタスのことを嫌うイモータン・ジョー(ラッキー・ヒューム)が統治していた。
一計を案じたディメンタスはトロイの木馬戦術でまずはシタデルに燃料を供給する製油所ガスタウンを手中に納める。
そして、シタデルと平和裏に燃料と水と食糧の相互供給の話し合いをつける。
イモータン・ジョーへの貢物としてフュリオサが供され、ジョーの多くの妻たちと共に投獄されることとなる。
約10年後、成長したフュリオサ(アニャ・テイラー=ジョイ)は重装甲攻撃車ウォー・リグのカスタム車両制作に大いに貢献し、イモータン・ジョーにとって信頼のおける兵士の一人となっていた。
シタデルが幾たびかの襲撃に遭い、兵士たちがほぼ殲滅させられそうになった隙にウォー・リグを盗み、グリーン・プレイスへの逃亡を企てたフュリオサであったが、警護隊長ジャック(トム・バーク)にそれを咎められ、以降、協力し合う関係となり、互いに恋に落ちる。
ディメンタスによる統治に嫌気がさしてきたイモータン・ジョーはガスタウン急襲を決め、ジャックとフュリオサにも攻撃命令が下る。
だが、奇襲を察知したディメンタスによりウォー・リグは迎撃され、フュリオサは左腕に大怪我を負い、生き延びるためにやむなく腕を切断する。ジャックもまた窮地に立たされるのだった。
そして、その一部始終を一台の黒のインターセプターの傍で佇む男が遠くから眺めていた・・・。
Behind The Inside:
アニャ・テイラー=ジョイにとってフュリオサの全てが刺激的なエクスペリエンス
当初、ジョージ・ミラー監督は前作でフュリオサを演じたシャーリーズ・セロンにデジタル技術を施し、若返らすことも考えていた。
だが、『ラストナイト・イン・ソーホー』(2021年)の仮編集映像を観たミラーは、アニャ・テイラー=ジョイにフュリオサ役を打診したという。
本作でフュリオサのセリフは約30行程しかなく、ほぼ口を固く閉ざし、無表情で通し、目で演技することだけを強く求められたという。
アニャは撮影セットにいる数ヶ月間もの間、一言のセリフもなく過ごすことも多く、セリフを話さなくてよいのは一見、俳優としては楽ではあるが、時には叫ぶシーンのために数日間、叫ぶだけといった日々も続き、これほど辛い撮影現場もなかったという。
ミラーがこうした演技をアニャに求めた理由は至極簡単で、「この映画はスピードが命であり、セリフが挟まるとテンポが落ちる」ことを嫌ったからという。
フュリオサ大隊長という強靭なキャラクターを作り上げたのは間違いなくシャーリーズ・セロンという容姿と演技力を併せ持ったスターあってのことであるが、アニャは本作の撮影中はシャーリーズにあえて連絡を取ることをしなかったという。
アニャは会わなかったことはフュリオサを作り上げたシャーリーズに対してのレスペクトを欠いたことだったかもしれないが、でも今の気持ちは彼女と夕飯を共に長話をする気満々であるそうだ。
キャリア史上最も難役に挑戦したアニャにとって、スタント・ダブルの役者もいたが、危険なアクション・シーンも自ら進んで演じることが可能なシーンは頑張ったという。
シャーリーズにも相談もせず、なるべく誰にも頼らず、ミラー監督が求めていることだけにブレずに集中するという映画の主役を張る心積もりが尋常ではなかったということであろうか。
またフュリオサ大隊長といえば特徴的な坊主頭である。
アニャも坊主頭で撮影にのぞむつもりであったが、モデル関係の仕事の契約のため髪を切ることは許されず、映画後半で髪を落とすことになったという。
こうしてジョージ・ミラーが時間をかけて築いてきた壮絶な伝説にアニャ・テイラー=ジョイがまた新たなチャプターを切り拓いた。
『マッドマックス フュリオサ / Furiosa: A Mad Max Saga』(2024年・オーストラリア・アメリカ・2時間28分)
監督:
ジョージ・ミラー
出演:
アニャ・テイラー=ジョイ、クリス・ヘムズワース、トム・バーク、アリーラ・ブラウン、ラッキー・ヒューム、チャーリー・フレイザー、ジョン・ハワード、ネイサン・ジョーンズ、ジョシュ・ヘルマン、アンガス・サンプソン、エルサ・パタキー 他
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