期待大 オスカーレース2021の予想馬たち10選
新型コロナ感染拡大のため2か月延期となり、2021年4月25日に変更となった第93回アカデミー賞授賞式。
それに合わせ、3月末からの映画館閉鎖に伴い、選考対象の期間も今回に限り2020年1月1日から2021年2月28日まで期間が延長された。劇場公開が前提の作品で先にオンラインでのプレミア上映、オンライン映画祭でのお披露目上映も選考基準に入る。
劇場公開もままならない状況だが、まだ日の目を見ない最新作映画は着々と完成に近づいてきている。アカデミー賞を狙っているであろう名匠たちの作品が目白押しの今後、公開予定の10作品をピックアップ‼
(拡大を続けるコロナ禍の影響で年内公開が決まっていてもまだ撮影が終了していない話題作についてはリストから外し、作品が完成済み、もしくは現在編集仕上げ中の作品のみを選定しています。)
No.1:
Dune(2020年12月・カナダ・ハンガリー・アメリカ・2時間35分)
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
アメリカの小説家フランク・ハーバートが遺したSF史上に残る伝説的小説シリーズ『デューン/砂の惑星』。砂の惑星デューンを舞台に革命と争いによる世界の混迷を描く難解な世界観故に幾度となく映画化が試みられたが、鬼才ホドロフスキーが挫折し、ようやく1984年にデビッド・リンチが映像化に成功している。
本作は、ティモシー・シャラメを主演に据え、SF映画に長けたドゥニ・ヴィルヌーヴ(『アライバル』(2016年)『ブレードランナー2049』(2017年))がメガホンをとった。
Must Point:
監督のドゥニ・ヴィルヌーヴは、「デビッド・リンチ版『デューン』は観ないで製作している。すべてゼロから考えて作り上げているので自分の夢を形にしているようなものだ」とインタビューで答えている。
Dune(2020年12月・カナダ・ハンガリー・アメリカ)
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演:レベッカ・ファーガソン、ゼンデイヤ、デイヴ・バウティスタ、ティモシー・シャラメ、ジェイソン・モモア、ジョシュ・ブローリン、オスカー・アイザック、ステラン・スカルスガルド、ハビエル・バルデム、シャーロット・ランプリング、他
© 2020 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.
No.2:
ザ・ファイブ・ブラッズ(2020年・アメリカ・2時間34分)
監督:スパイク・リー
ベトナム戦争から約50年が経ち、黒人退役軍人たちが再会し、上官の亡骸探しと隠された金塊を求め、いまだに戦争の深い傷跡を遺すベトナムへと再び赴く。
Must Point:
監督スパイク・リーは前作『ブラック・クランズマン』(2018)で第91回アカデミー賞主要6部門にノミネートされ、脚色賞を受賞した。スパイク・リーにとって前作での監督賞ノミネートも初めてのことで、国民的な大きなうねりとなってきているブラック・リヴズ・マター運動もあり、すでに評論家筋、映画ファンから非常に評価が高い本作でどこまで主要部門に食い込んでいくのか眼が離せない。
『ザ・ファイブ・ブラッズ』(2020年・アメリカ・2時間34分)
監督:スパイク・リー
出演:デルロイ・リンドー、ジョナサン・メジャース、クラーク・ピーターズ、
ノーム・ルイス、イザイア・ウィットロック・Jr、メラニー・ティエリー、ポール・ウォルター・ハウザー、ヤスペル・ペーコネン、他
© Netflix Studios, LLC
No.3:
The French Dispatch(2020年・ドイツ/アメリカ・1時間43分)
監督:ウェス・アンダーソン
雑誌The New Yorkerへのオマージュを捧げ、“ジャーナリストへのラブレター”とするウェス・アンダーソン監督の最新作は、20世紀のフランスのとある街を舞台に米・カンザス州を本部とする新聞社の在仏駐在支局が取材する3つの記事を巡るエピソード。
Must Point:
アンダーソン常連俳優ら豪華キャストでいつものケレン味たっぷりのアンダーソン節が画面目いっぱいに炸裂する。
The French Dispatch (2020年10月・アメリカ・1時間43分)
監督:ウェス・アンダーソン
出演:シアーシャ・ローナン、ティモシー・シャラメ、エリザベス・モス、アンジェリカ・ヒューストン、レア・セドゥ、エドワード・ノートン、ティルダ・スウィントン、クリストフ・ヴァルツ、ビル・マーレイ、エイドリアン・ブロディ、オーウェン・ウィルソン、ウィレム・デフォー、ベニチオ・デル・トロ、リーヴ・シュレイバー、ジェフリー・ライト、フランシス・マクドーマンド、グリフィン・ダン、ジェイソン・シュワルツマン、ヘンリー・ウィンクラー、マチュー・アマルリック、他
© TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION.
ALL RIGHTS RESERVED. PROPERTY OF SEARCHLIGHT PICTURES.
No.4:
ヒルビリー・エレジー ―郷愁の哀歌―(2020年・アメリカ・1時間56分)
監督:ロン・ハワード
ラストベルト(錆びついた工業地帯)と呼ばれるオハイオ州の貧しい白人家庭に育った筆者₌J・D・ヴァンス(ガブリエル・バッソ)が貧しい白人家庭独特の文化、そして悲惨な日常を書き綴った回想録。
ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち
Must Point:
米国大統領トランプ支持者の実態、アメリカ分断の真相を描き、タイム誌が選ぶ“トランプの勝利を理解するための6冊の内の一冊”にも選ばれているJ.D. ヴァンスの全米ベストセラー『ヒルビリー・エレジー~アメリカの繁栄から取り残された白人たち~』をNETFLIXが48億円の資金を投じ、名匠ロン・ハワード(『アポロ13』『ビューティフル・マインド』『フロストxニクソン』)が完全映像化!
ヒルビリー・エレジー ―郷愁の哀歌― (2020年・アメリカ・1時間56分)
監督:ロン・ハワード
出演:エイミー・アダムス、ヘイリー・ベネット、フリーダ・ピント―、グレン・クロース、サニー・メイブリー、ボー・ホプキンス、ガブリエル・バッソ、他
© Imagine Entertainment / Netflix Studios, LLC
No.5:
Mank(2020年10月公開予定・アメリカ・上映時間未定)
監督:デヴィッド・フィンチャー
鬼才オーソン・ウェルズの代表作にして、その画期的な物語構成や映像表現によって、映画史上のベストワン・ムービーとして、現代に語り継がれる不朽の名作『市民ケーン』の脚本家であり、アカデミー賞脚本賞を受賞した脚本家ハーマン・J・マンキーウィッツ(ゲイリー・オールドマン)を描いた作品。
Must Point:
『市民ケーン』はモノクロ映画だったことから本作もモノクロ作品となっている。
第14回アカデミー賞において作品賞など9部門でノミネートされたが、主人公の新聞王ケーンのモデルが実在の新聞王ウイリアム・ハーストだったことからハーストによる上映反対騒動が起き、脚本賞のみの受賞に留まったといういわくつきの経緯がある。
監督のデヴィッド・フィンチャーにとって、『ゴーン・ガール』(2014年)以来、実に6年ぶりの最新作映画となる。
Mank(2020年10月・アメリカ・2時間11分)
監督:デヴィッド・フィンチャー
出演:アマンダ・サイフリッド、リリー・コリンズ、ゲイリー・オールドマン、トム・バーク、他
© Netflix Studios, LLC
No.6:
ノマドランド(2020年・アメリカ・上映時間未定)
監督:クロエ・ジャオ
高齢化社会日本の先を行くリアルなアメリカの今を描く社会派ドラマ。2000年代になってからリーマンショックによる破綻などで現れた新しい貧窮層は一見、優雅で気楽にキャンピングカーで旅をしているように見えるが、Amazonの倉庫や大農園など過酷な現場で身を粉にして働き、その場限りの身銭を稼いでは漂流生活を続けていた。
Must Point:
気鋭のジャーナリスト、ジェシカ・ブルーダーが自ら体験して記した『ノマド: 漂流する高齢労働者たち』を原作に『ファーゴ』(1996年)、『スリービルボード』(2017年)でアカデミー賞主演女優賞に2度輝いたフランシス・マクドーマンドが現代アメリカ人のリタイヤなきノマド生活の過酷な現実を突きつける。
ノマドランド(2020年・アメリカ)
監督:クロエ・ジャオ
出演:フランシス・マクドーマンド、デヴィッド・ストラザーン、他
© TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION.
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No.7:
オン・ザ・ロック(2020年・アメリカ・上映時間未定)
監督:ソフィア・コッポラ
自由気ままに生きる金持ちの父親(ビル・マーレイ)のことが好きになれない娘(ラシダ・ジョーンズ)が自分の夫をスパイするために父を引っ張り出してNYの街を徘徊する父娘の愛情再生物語。
Must Point:
監督のソフィア・コッポラとビル・マーレイの3度目のタッグ(『ロスト・イン・トランスレーション』(2003年)、『A Very Murray Christmas』(2015年))は、オスカーに再び輝くことになるのか?
A24とApple TV+の栄えあるパートナーシップ第1号作品、このコロナ禍の中、劇場公開は直ぐにはされずにストレイトにオンライン上映となる公算が高い。
オン・ザ・ロック(2020年・アメリカ)
監督:ソフィア・コッポラ
出演:ビル・マーレイ、ラシダ・ジョーンズ、ジェニー・スレイト、ジェシカ・ヘンウィック、マーロン・ウェイアンズ、他
© A24 Films LLC / Apple TV+
No.8:
Tenetテネット(2020年・アメリカ・2時間30分)
監督:クリストファー・ノーラン
世界中の映画ファン待望のクリストファー・ノーラン最新作は、007フリークを自負するノーラン監督が初めて手掛ける世界を駆け巡るスパイ・アクション・スリラー。第三次世界大戦を未然に防ぐためジョン・デヴィッド・ワシントン演じるエージェントが世界を守るため、命をかけて奔走する。
Must Point:
ハリウッドには映画制作進行時にどんな映画なのか?まだ世間に知らせたくないのとまだ正式タイトルが決まっていないなどの理由でワーキングタイトルという仮題を付ける習慣があり、本作のワーキングタイトルは煙に巻くようなMerry Go Round₌”メリーゴーランド”で内容とどうリンクするのかは謎
本作の製作費は、総額約218億円で、オリジナル脚本では最も高額の製作費であるのと主役はジョン・デヴィッド・ワシントンであることから白人以外の主人公でこの額の製作費は史上初となる。ダブルで史上初という映画史的に見ても
歴史に残る作品といえる。
Tenet(2020年・アメリカ・2時間30分)
監督:クリストファー・ノーラン
出演:ジョン・デヴィッド・ワシントン、ロバート・パティンソン、エリザベス・デビッキ、アーロン・テイラー‐ジョンソン、マイケル・ケイン、ケネス・ブラナー、クレマンス・ポエジー、フィオナ・ドゥーリフ、ヒメーシュ・パテル、マーティン・ドノヴァン、ディンプル・カパディア
© 2020 Warner Bros. Pictures
No.9:
The Trial of the Chicago 7(2020年11月・カナダ/イギリス/アメリカ・上映時間未定)
監督:アーロン・ソーキン
1968年8月28日、イリノイ州シカゴで行われていた民主党の全国党大会へ近くの公園で行われていたベトナム戦争反対の15,000人規模のデモ隊がなだれ込み、警官隊との激しい応戦が始まった。数百名の負傷者を出したこの事変で首謀者とされたデモ参加者7名はシカゴ7と呼ばれ、その犯罪責任を問う裁判が始まった。
Must Point:
脚本家アーロン・ソーキンはフェイスブック創業時のマーク・ザッカーバーグの身辺を描いた『ソーシャル・ネットワーク』(2010年)で第83回アカデミー賞脚色賞を受賞、『スティーブ・ジョブズ』(2015年)では、第73回ゴールデングローブ賞脚本賞受賞、初めてメガホンをとった『モリーズ・ゲーム』(2017年)では、第90回アカデミー賞脚本賞にノミネートされた。その虚実を縫うように描く作風は映画批評家から絶大に支持され、現代の実録物ノン・フィクション系の話を書かせたら右に出る者がいない脚本家であり演出家。
本作の企画スタートは13年前に遡り、当初、反戦ものをやりたかったスティーブン・スピルバーグ監督作品として、アーロン・ソーキンが既に書き上げた脚本で企画は進んでいた。
スピルバーグはウィル・スミスやヒース・レジャーといった一流どころを配役したがったが、面談予定の前日にヒースが亡くなったため実現しなかった。その後の俳優組合のストで無名俳優で行く方向で落ち着くが、今度はスピルバーグが降板し、代わりの監督にポール・グリーングラスやベン・スティラーの名が挙がったが実現には至らなかった。
結局、脚本を書いていたアーロン・ソーキン自身がメガホンをとることに。一旦は製作費の関係で製作はストップ。紆余曲折あったが、ソーキンによる脚本演出、そしてしびれるような才気あふれる若手俳優を揃えたキャストで撮影は終了し現在は編集仕上げ中、そしてNETFLIX作品となった。
完成が非常に楽しみな今回のアカデミー賞のダークホース的存在。
The Trial of the Chicago 7の出演陣、
左下:ジェレミー・ストロング、中央下:サシャ・バロン・コーエン、右下:エディ・レッドメイン
The Trial of the Chicago 7 (2020年11月・カナダ/イギリス/アメリカ・完成尺不明)
監督:アーロン・ソーキン
出演:エディ・レッドメイン、アレックス・シャープ、サシャ・バロン・コーエン、ジェレミー・ストロング、ジョン・キャロル・リンチ、ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世、マーク・ライアンス、ジョセフ・ゴードン₌レヴィット、他
© DreamWorks LLC. / Netflix Studios, LLC
No.10:
West Side Story(2020年12月・アメリカ・上映時間未定)
監督:スティーブン・スピルバーグ
1957年にブロードウェイ・ミュージカルとして初演され、1961年には映画『ウエストサイド物語』として、ミュージカル映画として世界で大ヒットした誰もが知る古典的名作をスティーブン・スピルバーグ監督がリメイク。
シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』から着想を得て、ポーランド系とプエルトリコ系アメリカ人少年の不良グループの抗争とその中で出会ってしまった若き男女の許されない恋と非業の死をたった二日間の間の出来事として描いている。
Must Point:
日本軍の真珠湾攻撃の翌日に起きる騒動を描いたコメディ『1941』(1979年)は、当初、ミュージカル映画になる予定だったが変更され、巨匠スティーブン・スピルバーグにとっては、本作が初のミュージカル作品。そして、スピルバーグ作品にはなくてはならなかった作曲家ジョン・ウィリアムス抜きの4本目の作品となる。
1996年にウォルト・ディズニーは、1990年代に物語の舞台を置き換え、何と⁈ベルナルド・ベルトルッチを監督に迎え2度目のリメイクを計画していたが、実現することはなかった。
West Side Story(2020年12月・アメリカ・完成尺不明)
監督:スティーブン・スピルバーグ
出演: アンセル・エルゴート、レイチェル・ツェグラー、アリアナ・デボーズ、デビッドアルバレス、リタ・モレノ、マイク・ファイスト、カーティス・クック、ブライアン・ダーシー・ジェームズ、コリー・ストール、エズラ・メナス、ベン・クック、シーン・ハリソン・ジョーンズ、パトリック・ヒギンズ、パロマ・ガーシア・リー、マディー・ジーグラー
© 2020 Twentieth Century Studios, Disney All Rights Reserved.
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【更新】2021年9月21日