ベルリン国際映画祭・銀熊賞を受賞した名匠ホン・サンス監督最新作『逃げた女』第21回東京フィルメックスにて特別招待作品として初上映!
夫の出張中に女友達を訪ね歩く主人公と友人達との何気ない会話の中に潜むものとは
ガミ(キム・ミニ)は3人の女友達らの元を訪ねあるき、久しぶりに会う彼女たちの近況などをおしゃべりしながら過ごす。
離婚後、女友達と郊外の家で穏やかに暮らす先輩や、引っ越した先での新しい出会いを楽しげに話す友人など、ゆっくりと丁寧な受け答えで話す彼女らの間には親密な時間が流れてゆく。
近況を話す友人たちに自分のことを聞かれると、ガミは夫が出張中で、5年の結婚生活の中で離れるのは初めてだと話す。
そして最後に、ガミは学生時代の友人とカフェで偶然会うのだが。。
どこかエリック・ロメールを思わせる、ホン・サンス監督ならではのゆったりとしたリズムで描かれる本作は、特にこれといった事件が起こる訳ではない。
時にクスリと笑えるような場面を挟みつつ、表面だけ見ればヒロインが女友達を訪ねてはおしゃべりしているだけだ。
だが、同じような会話を繰り返す様を見ているうちにふつふつと疑問が湧いてくるのだ。
独特のテンポの中に散りばめられた余白によって、観るものの中に疑問を呼び起こし、様々なドラマを想像させる手腕は見事だ。
表向きはシンプルだが、その中に見え隠れするものに何を感じ取り、どんなドラマを想像するのか。
それはその人によって違うだろうし、どのような解釈でもありなのではと思わせる、まさに観た後に誰かと語り合いたくなる一作である。
Must Point:
ホン・サンス監督のミューズと言われるキム・ミニとのタッグ7作目の本作で、監督賞にあたる第70回ベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞。
キム・ミニは同監督の『夜の浜辺でひとり』(2017年)でベルリン国際映画祭銀熊賞(最優秀女優賞)を受賞している。
Awards:
- 第70回ベルリン国際映画祭銀熊賞
『逃げた女』(2020年・韓国・1時間17分)
監督:ホン・サンス
出演:キム・ミニ、ソ・ヨンファ、ソン・ソンミ、クォン・ヘヒョ
©JEONWONSA Film Co. Production