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原発の脅威についての考察ドキュメンタリー『行くあてもなく』チャオ・リャン監督とのリモートQ&A全文掲載

第22回東京フィルメックス・特別招待作品。

原子力エネルギーが人類の自己破壊に繋がるのではないのか?という考察の元、チェルノブイリ、ベラルーシ、福島、原発に関わる世界を8Kカメラで撮影した旅『行くあてもなく/I Am So Sorry / 无去来处(原題) 』

上映後、チャオ・リャン監督とのリモートQ&A全文掲載。


Story:

福島やチェルノブイリ、ベラルーシの現在の姿を捉え、原子力エネルギーという人類の自己破壊に繋がる存在について考察する。

様々な核施設で働く人々、未だに立ち入り禁止区域に住む孤立した人々。

過去の原発事故の被害者はどのように生活を続けているのか?

過去、現在、未来において、原子力がどのように人間の運命を左右するのか?

チャオ・リャン監督の想いを投影したエッセイ・フィルム調の詩的なドキュメンタリー作品。


映像作家 チャオ・リャン の『ベヒモス』(15)以来となる長編作品で、特別招待作品としてカンヌ映画祭で上映された。


『ホワイト・ビルディング/White Building(原題)』 より

『行くあてもなく』I Am So Sorry Q&A

神谷プログラム・ディレクター(以降、神谷PD)
本日は監督のチャオ・リャンさんにお越しいただいています。

チャオ・リャン監督(以降、リャン監督)
まずは私から感謝を申し上げたいと思います。
今日は午前中の早い時間から来ていただいた観客の方々に、また遠くからお越しいただいた方々もいると思います。またフィルメックスの全ての関係者の方々にも感謝いたします。

神谷PD:
それでは、いくつか質問が来ていますのでご紹介させていただきます。
基本的には映像そのものに多くを語らせている作品だと思います。その一方で、監督自信によるナレーションと、出演者によるナレーションも使われています。このような構成になった経緯を教えていただけないでしょうか?

リャン監督
その通りです。ナレーションの部分というのも2つありまして、私や登場人物が喋っている他に、あとは「チェルノブイリの祈り」というスベトラーナ・アレクシェービッチの本の中から引用している部分があります。そういったものを借りて色々紹介していくと。それから、能面を出していますけれどもそれは私自身の分身であって私の気持ちを代弁させている、そのような構成にしています。
時代も違えば場所も違うと、そういった人たちの作品であったり出演者であったり、そういったものを持ってきていますけれども時空を超えてそれぞれ同じように体験を通して共にそういったものをあらわせると思っています。

神谷PD:
会場の様子が監督にも見えましたでしょうか?

リャン監督
こんにちは。みなさん朝からありがとうございます。

神谷PD:
次の質問に参ります。核問題に対する関心の原点をお聞かせください。

リャン監督
これも非常に偶然と言えると思うんですけれども2017年か2018年ぐらいのことだったと思います。私が住んでいる生まれ故郷の丹東というところの近くで北朝鮮の核実験があったと。
それがまるで地震のように伝わってきて、それが自分の身近なところで核実験が行われているということにショックを受けまして、身近であると。そこから関心を持ちました。
そこから色々と調べるようになっていったんですが、様々な世の中で気候変動の問題であるとか、それから中国でも原子力発電が様々行われている、それから核廃棄物をどうするのか、そういった問題が新たに浮かび上がってきました。それで、よりこの問題を掘り下げなければと思いました。

神谷PD:
能面に関していくつか質問が来ているんですけれども。この質問で代表してお伺いします。
能面を着けた人物が象徴的に登場しますが、どのような想いを込められたんでしょうか?

リャン監督
やはり能面というのは私自身の象徴であって、私の代弁者です。幽霊のような存在なんですけれども、能というのは日本の伝統文化の中でも一種、生と死を超えたような、その間にいるような存在で、映画の中で時空を超えると。様々な場所。それから起きている時間。そして未来とか過去とかそういったものを自由に行き来するようなそういった存在ということで能面というものを出しました。

神谷PD:
ありがとうございます。こちらの作品は日本でも撮影が行われていたり、チェルノブイリやベラルーシで行われていたり、国際的に撮影されていますが、その辺りでご苦労されたことなど教えていただけますか?

チャオ・リャン監督
私にとってもこれは幅広くいろんなところに接触しなければならないというひとつの試みではありました。資金もかかれば時間もかかってしまう。
早く行うということはできない。どうしても時間がかかってしまう。特に核関連の施設などは多くの国で撮影を申請するというのが難しかったです。
制限がかかってしまって、例えばここの場所では1回しか撮影ができないとか、撮影時間が非常に短く制限されてしまう。そういった苦難がありました。
それから、交流に対しても言葉が違う。交流が難しい。そこの場所に行くのに交通が難しいとか。それからロシアの場合は前ソビエトに関するものでやるのかとか、国ごとに状況が違ってそれなりの苦労がありました。

神谷PD:
はい。ありがとうございます。

リャン監督
かいつまんで簡単に申し上げますと日本でも様々な方にご協力いただきまして、特に名前を出さないでほしいと言って協力してくださった方もたくさんいました。
危ないことも結構たくさんやってきまして、警察に捕まりそうになったこととかも様々あったわけですけれども。
それから廃墟の住居に住まわれている方に関しましても、撮影のカメラが入っていくわけですけれどもその方々には敬意と感謝を持ちつつ、撮影させていただきました。
それから、編集段階になって様々な国家の違いであるとか、それから出演者している方、それから声を当てるのにどういった方を選ぶのかとか。様々な問題と苦労がありました。それから字幕の問題もそうです。後から文字を入れなければならないとか。そういった苦労もありました。

神谷PD:
ありがとうございます。
ちなみに、撮影の期間はどれくらいかかられたんでしょうか?

リャン監督
調査から撮影終了までは3年ぐらいかかっています。

神谷PD:
撮影された素材は何時間分ぐらいありますか?

リャン監督
なるべく節約をしたいと思って8Kで撮影していまして、容量が大きいのであまり多くはないんですけれども150時間分ぐらいです。

神谷PD:
ありがとうございます。
編集に関する質問がいくつか来ていまして、『ベヒモス』の時と同じくファブリス・ロウさんと組んで進められたと思うんですが、今回は編集作業についてはどのように進められたんでしょうか?

リャン監督
今回は時間をかけまして、それは主に私が北京にいたからなんですけれども。

神谷PD:
オンラインで進められたんでしょうか?

リャン監督
私たちは大体WeChatというアプリを使ってやり取りをします。最初は大体自分が作ったものを送ります。
送って見てもらって、そしてそれをまた返してもらってという3つの段階を経て編集していきました。最後には北京で最終的なものを作りました。

神谷PD:
ありがとうございます。大変残念ですが、時間がかなり限られて来てしまいましたので最後の質問になるかもしれないです。
ちょっと難しい質問かもしれないんですが。
現実の事故が起きた場所に、ある種のフィクションを持ち込むことに抵抗はなかったんでしょうか?

リャン監督
これも一種の自分の想像、創りあげるということに対する挑戦というか新しい形を作っていくということが私はとても好きです。重複していくのは逆に嫌いで、創作の際には自由に自分の想像力を活かせる方法を模索していきます。そして最後に選んだのがこの形式だったということです。

神谷PD:
なるほど。ありがとうございます。

リャン監督
私の作品の上映に来てくださって、みなさん本当にありがとうございます。こちらから声をかけたいと思っています。富士山の近くからいらっしゃっている方々もいらっしゃると思いますが、よろしければ立ち上がってお姿を見せてください。ああ、ありがとうございます!みなさん本当に早い時間に来てくださってありがとうございます。

神谷PD:
残念ながらお時間が来てしまいましたので、これにてQ&Aを終了させていただきます。ありがとうございました。

リャン監督
ありがとうございました!


Trailer | BIFF2021 아임 쏘 쏘리 I′m So Sorry | 와이드 앵글 – 다큐멘터리 쇼케이스

Film l 아임 쏘 쏘리 I′m So Sorry Director l 자오량 ZHAO Liang – 26th Busan International Film Festival October 6 – 15, 2021 http://biff.kr – BIFF Official http://twitter.com/busanfilmfest http://www.facebook.com/busanfilmfest http://www.instagram.com/busanfilmfest http://www.youtube.com/busanfilmfestival

『行くあてもなく/I Am So Sorry / 无去来处(原題)オリジナル予告編

『行くあてもなく/I Am So Sorry / 无去来处(原題)』 (2021年・香港、フランス、オランダ・1時間40分)
監督:
チャオ・リャン

2021年10月30日-11月7日 第22回東京フィルメックス・特別招待作品


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