
イニャリトゥ監督 の映画愛が溢れ出す『バルド、偽りの記録と一握りの真実』
歴代の有名監督が手掛けてきたような、監督自身を投影した映画についての内省的な物語。ハリウッドで成功を収めてきたメキシコ出身のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督が、溢れかえる映画愛を披露する幻視的なメキシカン映像作家クロニクル

Story:
故郷メキシコへと里帰りしたロサンゼルス在住のメキシコ人ジャーナリストであり、ドキュメンタリー映像作家のシルヴェリオ・ガチョ(ダニエル・ヒメネス・カチョ)についての幻視的でノスタルジックな回想録。
シルヴェリオは、自分は一体何者であるのか? また家族との関係性、そして故郷メキシコが抱える現実的な問題に直面することにより彼の内面は揺さぶられ、翻弄されてゆく。
Behind The Inside:
20年ぶりに故郷メキシコでのオールロケ作品となった
東京国際映画祭にてグランプリ及び監督賞を受賞し、監督デビューを飾った名作『アモーレス・ペロス』(2000年)以降、ハリウッドでの映画製作で成功への階段を駆け上がっていったメキシコ出身のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督。
そのイニャリトゥ監督が、20年の時を経て故郷メキシコでオールロケで映画作りを行った。
トリュフォーの『アメリカの夜』、フェリーニの『8 1/2』、コーエン兄弟の『バートン・フィンク』、アルトマンの『ザ・プレイヤー』、ゴダールの『軽蔑』等、名監督らによる映画の中で映画製作の過程を描いてゆく名作が存在するが、本作もまたハリウッドで成功を収め、今や世界的なフィルムメーカーとなったイニャリトゥ監督の心の内面を紐解くかのような幻視的なストーリーとなっている。
Must Point:
22分間短くしたショートバージョンのリリースを発表
本年度トロント国際映画祭において、総尺2時間54分から22分間短くしたショート・バージョンの2時間32分版を発表した。
総尺が単に長すぎたということなのか、ヴェネチアで大賞を逃したという反省からか、もしくは撮影中、コロナ禍での撮影ルールを守らなかったという話が持ち上がっており、群衆が多く出演するモブシーンが多いこともあったからなのか、撮影・製作スタッフが病に倒れたという話が出てきており、余計な勘ぐりをさせるようなシーンを切らざるを得なかった状況も考えられる。
もしも叶うのなら本年度ヴェネチア国際映画祭上映時のほぼ3時間のロング・バージョンで是非、鑑賞してみたい。
Awards:
- 第95回アカデミー賞・ノミネート:撮影賞・ダリウス・コンジ
- 第79回ヴェネチア国際映画祭:コンペティション部門正式出品作、UNIMED(地中海大学学生連盟)賞・アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
『バルド、偽りの記録と一握りの真実/Bardo: False Chronicle of a Handful of Truth』(2022年・メキシコ・2時間54分)
監督:
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
出演:
ダニエル・ヒメネス・カチョ、グリゼルダ・シシリアニ、ジミーナ・ラマドリッド、ヒューゴ・アルボォレス、アンドレス・アルメイダ、マール・カラーラ、ロブ・カヴァゾス 他
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